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“ゲストのワイン観を豊かなものに”
英国随一の伝統が培ったホスピタリティ
「今日は、どんな素晴らしいワインを飲めるのだろうか。BBRのハウスリザーブは外れたことがない。本当に楽しみだ」
ワインとの出会いに期待を膨らませながら、1人のFaustがとある会場へと向かっていた。
BBRとは、以前にも紹介(08年12月11日の「Sense」) した、1698年創業、英国最古のワイン・スピリッツ商「ベリー・ブラザーズ&ラッド」社。そのBBRが2008年秋に設立したばかりの東京支社のお披露 目と愛顧への感謝を込めて、顧客であるFaustの一人をプライベートなワインテイスティング会に招待したのだ。「ぜひ、ご友人といっしょにいらしてくだ さい」という言葉を添えて。
BBR東京支社設立にあわせて来日した、マスター・オブ・ワイン、アラン・グリフィス氏。
このテイスティング会の神髄は「ハウスリザーブ」にある。それは、オーナーのベリー家とラッド家がシャトーやワイナリーから直に買い求め、以後、自らのセ ラーで貯蔵されてきた非買ワイン。ワインが移動したのは一度きり、その後は完璧な環境で保管されているため、これほどまでにダメージがなく、品質に信頼の おけるワインは他にそうそうないと考えられる。たとえ、ショップやレストランで、ワイン商のハウスリザーブと同じ銘柄があったとしても、ワインがそのセ ラーにたどり着くまでに、どれだけの距離の移動を、何度経てきたのかという素性はほとんどわからない。ワインの味は抜栓してみないと誰にもわからないのだ から、期待していたのに飲んでみたらガッカリ、ということがまま起こりうる。
「厳しいことを言うと、掛け値なしに保存状態が良く、“これは美味い!”と感動するワインには、10店に1店、もしくは1年に数本ほどしか出会えません ね。その点、BBR社のようなワイン商のハウスリザーブは百発百中。間違いがないので本当に信頼できます。テイスティング会ではそれを出していただけるの で、とても楽しみなんですよ」
シャンパンレセプションではBBRの歴史の深さに感嘆する。
さて、会場には、このメインゲストとなるFaustが声をかけた他のFaustメンバーたちも集まりつつあった。まずは、シャンパンがふるまわれてのレセプションだ。
「Berrys’United Kingdom Cuveem Rose, Brut, Theophile Roederer」、同社の名前を冠したロゼシャンパンである。
普段はロゼをあまり好まないという、メインゲストのFaustの頭には「なぜロゼを?」と疑問がよぎったが、飲んでみてその気持ちは吹き飛んだ。
「おいしい、とても芳しい!」
知っていてわざとひっかけたのか、あえて出したのか。ましてもやられた、という心地よい降伏感を味わった。
BBRのホスト役として、英国本社から来日した、マスター・オブ・ワイン※のアラン・グリフィス氏が歓待してくれている。東京支社の代表を務める松岡聖子 さんとともに、BBRの300有余年を誇る歴史と、年輪が刻み込まれた本社屋の逸話を披露し、ゲストたちはシャンパンでのどを潤しながら耳を傾けた。
ここ、BBRの東京支社はビルの一室に社を構えてはいるものの、歴史ある英国本社の趣をそこかしこに取り入れた造りである。レセプションへの扉は本社と同じモチーフのアールデコ調、床には無垢のウオールナッツを張り、シックにまとめられている。
遊び心溢れるラインナップ
ハウスリザーブの真価
ゲスト全員が揃うと、頃合いを計って隣のテイスティングルームへ。
丸の内仲通りに面する部屋は穏やかな照明に照らされ、壁一面にとられた窓からは並木を飾るイルミネーションの温かな光が覗いている。ウィリアム・モリスの 花柄の壁には、東京支社設立のために画家ジュリアン・バローが描いた本社の風景画が浮かび上がり、その昔、揺れる船上で飲むために底が広くどっしりとした ボトルや、本社セラーに眠っていたアンティークボトルがインテリアとして配置されている。
極めつけは、テーブルとキャビネットだろう。無垢のオークの一枚板をトップに用いたそれらは、BBRの松岡さんが木材店にまで出向かい吟味したという。
「もしかしたら、東京支社を開くときにいちばん緊張したことかもしれません(笑)。この出来が悪かったら、本国の社長から怒られるものなのです。というの は、本社にもこうした特別なお客さまだけをおもてなしするお部屋があり、同じようにテーブルもあって・・・・・・滅多なことでは入室もままならない特別な 部屋なのです。支社もそうした世界観を崩すわけにはまいりません」
ゲストをもてなすしつらえへの並々ならぬこだわりに、英国の老舗の誇りを感じずにはいられない。
淡いベージュの花柄の壁紙はウィリアム・モリス。どっしりした存在感を誇るテーブル、瀟洒な油絵…英国らしい気品が薫る。
ここでは軽いオードブルが運ばれ、テイスティングが行われていった。
驚きは、1本目の「1996 Meursault, Les Perrieres, 1er Cru Domaine des Comtes Lafon」で訪れた。飲んで間もなく、ゲスト全員が一様に感動の声を上げる。
「おいしい。いつも飲んでいるComtes Lafonの味とまったく違う!」とメインゲストのFaust。サーブするときの温度や状態なのか、まったく理由が思いつかないほどのおいしさなのだという。
2本目の「La Tache, Domaine de la Romanee Conti」と、3本目の「Ch. Leoville-Las-Cases, St Julien」では、同じ1982年を水平でテイスティング。年代の良さとともに名醸を堪能する。続く、「1961 Vieux Chateau Certan, Pomerol」」はメインゲストのFaustの、思い出の1本だったという。
「10年ほど前、BBRさんと“お付き合い”を始めた際に初めて買った銘柄なんです。きちんと記録されているんだなといつも感心しますね。毎回テイスティ ングするラインナップには、そうした細やかな心遣いが、そこかしこに散りばめられているんです。もちろん、BBRさん側からは押しつけがましくそんな説明 はされないから、もしも私がそのことに気づかなければ、何の演出にもならない可能性もある。そんな何気のないホスピタリティがすばらしいと思うんです。私 の事業にも参考になるところがありますね。
キャビネットの上では、赤ワインがふさわしくデキャンタージュされ、出番を待つ。
グリフィス氏の、ワインに限らない豊富な話題と、巧みな話術も楽しみの一つだ。
ところで、ポムロールの61年。もう危ないんじゃないかと思う年代だけれど、まったく問題がなかった。コーヒーとジンジャーのブーケ、甘くソフトで……これがハウスリザーブのパワーですね」
テイスティングを進めながら、ホストのグリフィス氏はさまざまな話をする。しかし、意外にも大半はワインに関係のないプライベートな話のようだ。
「彼とは友人なんです。マスター・オブ・ワインだからといって、別に知識ばかりを話したりはしない。ゴルフのこと、クラシックカーレースのこと。やんちゃな趣味の話をしますね。もちろん、ワインについて質問すれば、すばらしい答えを返してくれますしね」
こうしてBBRから提供される、気が置けないゲストともに過ごす数時間は、無類のワイン好きであるこのFaustにとって、とても貴重な時間だ。
「BBRさんとのお付き合いも長くなりました。それは私のワインの世界観を育ててくれるからだと思います。ワイン商だからといって、ただ単においしいワイ ンを売るだけではない。それ以上に、私の好みや購入した履歴を記録し、理解してくれた上で、さらにワインに関する見識を深め、世界観を広げるための、“教 育”をしてくれる。それも今回のように知らず知らずのうちに、ね。ワインを誰かにプレゼントしたいと思ったら、そのシチュエーションまで提案してくれたり も。今後も長くなりそうですね。
そうそう、最後のヴィンテージポートのCroftsもおいしかった。まるで英国の本店で、時間を忘れて飲み語らっているようで……」
※マスター・オブ・ワイン…1953年、英国で開始されたワイン業界における最高レベルの資格、権威の称号。全世界に280名ほどのみで、日本人はいない。
テイスティングしたワイン
※サービスされた順番に左から並べた。
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1st
Berrys’United Kingdom Cuveem Rose, Brut, Theophile Roederer
ベリーズ・ユナイテッドキングダム・キュヴェ・ロゼ・ブリュット・テオフィル・ロデレール/テオフィル・ロデレールは1864年創業の老舗メゾンであるが、日本ではあまり見かけない。現在はルイ・ロデレールの傘下でシャンパーニュの生産を続け、1989年から高品質なロゼシャンパンを作り出している。BBRとのダブルネームとなっている。
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2nd
1996 Meursault, Les Perrieres, 1er Cru Domaine des Comtes Lafon
ムルソー・レ・ぺリエール・プルミエクリュ・ドメーヌ・デ・コント・ラフォン/コント・ラフォンは、最高の白ワインの造り手として知られ、ピュリニー・モンラッシェのルフレーヴ、シャサーニュ・モンラッシェのラモネ、ムルソーのコシュ・デュリと並んで賞賛される。ブルゴーニュで最も深く寒冷なセラーを保有。
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