HOME > LIFESTYLE > 紳士ならではの文化ある時間 ファウストの茶会

画像

紳士ならではの文化ある時間
ファウストの茶会

ミラノ・コレクションで活躍するデザイナー、ジュリアーノ・フジワラ。
このブランドの根底に流れる哲学は、「侘び寂び」にあるという。
400年以上の時を経て、脈々と受け継がれてきた茶道と、
現代に生きるファッションの、美意識の邂逅。
9月某日青山。その奥行きある世界の一端を垣間見る
モダンな茶会が、ファウストのために催された。

 

シャンパンとピンチョスで
WABISABIを愉しむ

 

古くは戦国時代から、武家の嗜みとして愛され、広まった茶道。現代の猛者?ファウストたちも、始終やんちゃな冒険をしているばかりではない。時には日本の伝統や文化に学び親しみ、その前衛的な感性を再確認するのも大いなる挑戦と探究のひとつとばかり、とある茶会に集っていた。

秋風漂う9月の宵。千利休の心を今に伝える裏千家の教授が亭主、モダンなアプローチで知られるジュリアーノ・フジワラが主催の、立礼式のカジュアルな茶会である。そのしつらいはどのようなものか、と、期待が高まる。

 今回の会場となったジュリアーノ・フジワラは、1986年にミラノ・コレクションにおいて、世界に日本のファッションを知らしめた先駆的存在。このブランドの根底に流れている哲学は、「侘び」「寂び」=WABISABIであるという。それは、まさに、茶道によって生まれた日本独自の美意識の結晶だ。

上段左:夜の青山に光るジュリアーノ・フジワラ青山店外観。当日は、先行試乗車として最新のジャガーXFRで登場するファウストの姿も。上段右:1階レセプションの会場には、スーツやジャケットをはじめ、こだわりのファッションアイテムがずらりと並ぶ。下段左:地鶏のあぶりや、鴨ネギ、和牛のローストビーフ、ズワイガニとパプリカのテリーヌ、車海老と平目のお寿司、トマトとクリームチーズなど、色鮮やかなピンチョス。下段右:数多くの冒険家たちをバックアップしてきた物語を持つ、MUM社のシャンパン。

 「WABISABI」を表現するファッションアイテムが並ぶ店舗の一階で、まずはレセプションが始まった。
開けられたシャンパンは、フランスのランスにあるMUM社のもの。このMUM社は、世界的に有名な画家藤田嗣治の支援を行ったほか、南極探検をはじめとした、数多くの冒険家たちの支援者としても知られている。まさにファウストにぴったりのシャンパンである。それとともに楽しむピンチョスは、平目と海老のお寿司や、和牛のローストビーフなど、色とりどり。12人はフロアの中で思い思いに、ビジネスの話やこれまでにファウストのアクティビティを通じて挑戦してきた冒険の話、そして、茶道の話に花を咲かせる。

「これまでにもやりたいと思いながら、茶道に挑戦するのは今回が初めてなんです」
と、笑う会員がいる一方で、

「実は、以前、京都に住んでいたときに習っていたんですよ」
と言う者も。

 また、ズラリと並ぶジュリアーノ・フジワラのファッションアイテムを目の前にして、ジャケットを羽織ってみたり、バッグを手にしたり、秋冬のファッションを楽しんだ

静かに時間が過ぎ、いよいよ茶会の準備が整い、ゆっくりと2階にしつらえられた茶室へと向かっていく。

 

茶会の静寂の中で
一期一会の縁の妙

 

上段:今回、ご教示いただいた今藤宗美先生(左)と、お弟子さん。中段左:お菓子は骨董通りにある、昭和十年創業の老舗「青山菊家」。栗をあしらったお菓子の銘は「菊のしずく」。重陽の節句にちなんで名づけられた。中段中央:干菓子も菊家のもの。左が栗を、右は枝豆を模して造られている。菓子器は漆作家、夏目陽介氏の手による根来。中段右:木村氏が気に入った、三世今藤長十郎氏の手による茶碗。魚の絵が印象的。下段左:一服目をふるまわれる松橋氏。器は人間国宝の手によるもの。下段右:最後は、参加者全員でお道具などについてお話をうかがった。

今回の茶会は、裏千家の教授・今藤宗美先生が亭主を務める立礼(※りゅうれい)式というカジュアルなもの。このスタイルは、ジュリアーノ・フジワラのモダンな内装にもしっくり馴染んでいる。

「お楽になさってください」

という、今藤先生の言葉とは裏腹に、「茶会」ならではの静けさの中で、やや緊張した面持ちだ。

 最初に運ばれてきたのは、お菓子。青山菊家のお菓子は、重陽の節句にちなんで、栗と菊を模した「菊のしずく」。それを静かにいただきながら、茶筅がお茶をたてる音を聞いている。

まずはマツハシ・エンタープライズの松橋正人氏から、ゆっくりとお茶をいただく。その器は、人間国宝・石黒宗麿によるもの。それから、5つの器が順番にファウストたちのもとへ運ばれ、一服目をいただいていく。
会がゆっくりと進行する中、参加者の一人でアクアリストの木村英智氏のところへお茶が運ばれた。

「あ、この茶碗、いいなあ」
と、木村氏が思わず喜びの声を上げる。

 それは、今藤先生の亡きご主人であり、昭和を代表する長唄三味線の演奏家、そして人間国宝として知られる三世今藤長十郎氏の手による茶碗で、魚の絵が描かれていた。この日の3日後に、六本木ヒルズで開催された海にまつわるイベント『東京アクアリオ2009』を控えていた木村氏は、この器との出会いに、アクアリオの成功を確信したようだ。

 木村氏とは初対面だった今藤先生も、その偶然に驚きながら
「こうしたご縁もまた、一期一会。お茶の楽しさの一つですね」
と、ほほ笑んだ。

 再び菓子器が運ばれ、栗と枝豆を模した干菓子をいただいた後は、二服目をいただく。

「もう一度、お魚の茶碗でいただきたい」
と、木村氏。いただいた後も、しばらく器に見入っていた。

 それぞれにお気に入りの器を見つけて、二服目をいただいた後は、みな一様に掛け軸やお花、お道具の数々を拝見に向かう。好奇心旺盛なファウスト会員たちは

「これはどういった品なんですか」

「この掛け軸の意味は」

と、絶えず質問を投げかけ、先生もまた、一つひとつの道具の意味や物語を丁寧に話される。贅沢な時間が、ゆっくりと流れている。

立礼式……椅子に腰かけて行う茶道の点前形式。裏千家11代当主・玄々斎千宗室が、1872年に椅子の時代到来を予見して創設したスタイル。

 

四百年の時間を超える
総合芸術を堪能する

 

ファウストの茶会を演出した数々の名品たち

上段左:茶碗はいずれも人間国宝の手によるもの。左から河井寛次郎氏、石黒宗麿氏、藤原啓氏の作。上段右:軸は書家・閑万希子氏の「波」。花は、桔梗、女郎花、尾花など、秋の草花が、手まりかごにあしらわれている。下段左:裏千家の立礼で使われる御薗棚。上に乗っている水指は、人間国宝の陶芸家、藤本能道氏による「緑釉金彩兎文(りょくゆうきんさいうさぎもん)」。下段右:薄器は、漆芸家・夏目有彦氏の作。蒔絵で鈴虫が描かれている。茶杓は、文学者である西山松之助氏による。銘は「玉水」。茶碗は前出の、石黒宗麿氏のもの。

「茶道は、総合芸術なのです」
と、今藤先生。

 ジュリアーノ・フジワラの2階は、普段はショールーム兼打ち合わせなどで使われる空間。シックな色遣いであるとはいえ、もちろん茶室として造られた部屋ではない。

 しかし、この茶会の日は、その様相を一転していた。突き当りのガラスに黒い紙を貼り、その手前には秋の草花の清楚なたたずまいが映えている。裏千家ならではの御薗棚(※みそのだな)の上には、虫蒔絵の薄器が置かれ、秋の風情を感じさせる。また、軸は書家・閑万希子氏による「波」。さながら、秋の海といったところか。

 今藤先生は、茶会の前にこの空間を見て、今日のしつらえを考えられたのだという。細部に至るまで、もてなしの心を込めてしつらえられた芸術の中に身を預けて、お茶をいただく間は、まるで外とは時間の流れが変わってしまったようにすら感じられる。
「茶道は、フリーダイビングにも似ているような気がします」
と、Faust A.G.のスーパーバイザーであり、フリーダイバー篠宮龍三氏は言う。

「海に潜る時は、記録を伸ばそうとか、上手く潜ろうと思っても意味はない。ただ命と向き合って無にならなければいけない。茶道にも、そういう心があると思う」
と、篠宮氏。それは、茶禅一致の心に通じている。

侘茶の創始者・千利休が、茶の湯の真髄として掲げた「和敬清寂」という言葉は、禅の言葉でもある。客と亭主がともに和やかに、敬愛しあうこと。そして、心身ともに空間も清めた場所で茶会をして、静かな心を得るというもの。

 その心はこの日、確かにファウストたちに受け継がれていた。

御園棚……立礼式の茶会において、亭主が点前をする専用の机。

お茶をたてる美しい所作や立礼(りゅうれい)のお茶会の雰囲気をイメージ動画にて少しばかりお楽しみください。
※画像クリックで動画を再生します

Data

ジュリアーノ フジワラ 青山店

東京都港区南青山6-8-18放映ビル 1F
Tel.03-5469-5558
http://www.giulianofujiwara.com/

Back Number

Page Top


  • Mail News
  • 画像クリックでイメージムービーがSTART

  • 冒険のクロニクル  Presented by BREITLING
  • Award Archive
  • ファウスト魂