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Enthusiasm for Classic Cars
Vol.3
愛車とトコトン付き合う英国の流儀

自動車史を築き上げた歴史的遺産であると同時に、時代を超えて男たちを魅了してやまない嗜好品でもある「クラシックカー」。そんなクラシックカーの魅力を、愛好家たちに肉薄するシリーズ第3回目にご登場いただくのは、BLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)株式会社代表取締役の田窪寿保さん。専門誌でもお馴染みのクラシックレーシングカー好きであり、イギリスでの草レース出場経験もある彼に、英国車への熱い思いを語ってもらった。

「スーパーカー世代のど真ん中でした(笑)」

「クルマにハマったきっかけですか? みなさんは“対決スーパーカークイズ”というテレビ番組を覚えてますかね。1970年代後半に放送されたクイズ番組なんですけど、確か小学校4、5年の頃だったかなぁ、スーパーカー好きが高じて番組に出場しちゃったんですよ。当時はそのくらいスーパーカーにハマってましたね。なので、よくショップに写真を撮りにいったりしてました。“シーサイドモータース”とか“オートロマン”とかの有名店に……。憧れのクルマは、フェラーリ・ディーノ246GTやランチャ・ストラトス※。カー消し(スーパーカー消しゴム)とかも集めたりしてましたよ(笑)」



写真上は1992年、英国のポール・マーティ・スポーツカーズでの1年半のリストア後、ロータス エランS2 (1965年型)を日本へ持ち帰る日。最終点検後、サザンプトン港まで500マイルを自走した。ちなみに、田窪さんの所有車は、65年型ロータス・エランS2の他に、59年型ロータス・エリート、レーシングマシンのロータス22/FJ、97年型ロータス・エスプリGT3、90年型ホンダNSX、2007年型トヨタ・プリウス、それと通勤用93年型クラシックレンジローバー、97年型デイムラー・ダブルシックスがある。下は英国クラシックレーシングカーの魅力を熱く語る田窪さん。

落ち着いた佇まいとは裏腹に、少々テンション高くスーパーカーのことを語り出したのは、英国ブランドの専門商社・BLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)株式会社代表取締役を務める田窪寿保さん。自動車雑誌にも度々登場するほど、業界内では名うてのカーガイである。
そんな田窪さんは1966年生まれということもあり、スーパーカー世代ど真ん中の子供時代を過ごした。また、当時は富士スピードウェイでF1が開催されていたこともあり、サーキットまで足を運んだことも。当時の田窪さんの視線の先にはマリオ・アンドレッティ※がいたとか……。ところが、実際に自動車免許を取得する年頃になると、クルマの嗜好性はスーパーカーとは異なるジャンルへとシフトした。

「免許を取った当時買ったクルマは、いまの僕からは想像できないかもしれませんね。自動車雑誌のジャンルでいえば、“オプション”とか“カーボーイ”といった感じです。要するに“ハチロク”にハマってたんです(笑)。TE71をダートラ用、AE86※を峠用、それからスープラの3リッターターボを高速用に使い分けていました。いかに、カウンターをあてるかしか考えてなかったですね。英国車好きのいまとはクルマの嗜好性が全然違ったんですよ。しかも、あの頃はバックパッカーでアメリカを旅していたりしたんです。なので、頭の中はいつも“アメリカバンザイ!”。バンドもやっていたし、とにかくアメリカが大好きでした」

英国企業への就職が
英国車の門を開いた

「就職まではアメリカ大好きだったんですが、英国企業であるヴァージン アトランティック航空に入社したことでその考えはガラリと変わりました。英国に何度か足を踏み入れているうちに、なんとなくアメリカが薄く見えてしまったんです。そんなとき、91年型のケーターハム・スーパーセブンBDRスペシャル※を手に入れました。500万円くらいしたかな。でも買ってすぐに後悔ですよ。デートもできない、荷物も積めない、音はうるさいって(笑)。乗っている時もいつも特攻服着ているみたいで疲れるんです。でも、エラン※は違いました。例えるなら“着古した紺ブレ”みたいに気持ちがいいんです。時速100km/hで走るようなコーナーを、60km/hで走っても楽しいんですから……」

ロータス・エランとの出会いのきっかけは、友人のクルマだった。ある事情から友人の69年型フィクスドヘッド(クーペ)に一ヶ月乗ることになり、エランを走らせる楽しみを知ったという。

「エランが欲しくなったので、英国のポール・マティ・スポーツカーズというロータス専門ショップにお願いしました。程度のいいのを探して欲しいと。その後、連絡を受けて購入したのが65年型エランS2です。一年間かけてレストアして、乗れる状態にしてもらいました。見た目がビカビカの新車というのではなく、それなりに年数を重ねた感じに見えるレストアってのがいいんですよね。そのエランはいまもちゃんと動いています。今年も春に長野で行われたクラシックカーラリーに参加しました。でも、じつは日本でこういうイベントに参加したのは初めてなんです。英国ではジムカーナ※やヒルクライム、タイムラリーなんかに出場したことはありますが……」

英国で草レースの楽しさを体験した田窪さん。その醍醐味は現地の方とのふれあいだという。クルマ文化の浸透した英国の人々との交流がレースをより盛り上げてくれた。

「英国で学んだこと。それはレースを通しての人と人のふれあいや、新車を乗り続け、とことんクルマと付き合うといった姿勢です。もちろん、クラシックカーを新車で買うのは無理ですが、買うなら長く付き合うべきだと思うようになりました。まぁ、そうするとボクみたいにクルマばっかり増えてしまうのですが(笑)。そうした面からも英国的なクルマとの付き合い方をもっと多くの人に知ってもらいたいですね。だから、いつか英国大使館と組んでクルマイベントなどを企画したいなと思っています。流行りのイタリア文化に対抗して(笑)。みなさんはコスプレにならないホンモノの英国車イベント、ご興味ありません?」 

2002年ツインリンクもてぎにて。ロータス エリートS1 (1959年型)の5年間のレストアを終えて、シェイクダウンした日。「きちんと走れました~!」と喜んでいるショット。
度々、登場している自動車専門誌の一例。1999年7月号の“カーマガジン”の取材を受けて。保有しているロータス エリートS1を前で撮影。

 

フェラーリ・ディーノ246GT/ランチャ・ストラトス……フェラーリ・ディーノ246GTは、フェラーリが1968年~1974年に生産したミッドシップ・スポーツカー。スポーツカー・ブームの頃に多数輸入され、ブームを牽引した名車のひとつ。ランチャ・ストラトスは、世界ラリー選手権(WRC)で勝利することを目的にランチア社が製造したスポーツカーで、1974年、1975年、1976年のWRCで製造者部門のタイトルを獲得した。“ディーノ”と同じエンジンを搭載している。

マリオ・アンドレッティ……1978年のF1ワールドチャンピオンに輝いた他、インディ500、デイトナ500、チャンプ・カ―・シリーズといった主要レースのタイトルを獲得したアメリカの伝説的レーシングカードライバー。

TE71/AE86……TE71/AE86とは、トヨタ・カローラレビンの型式番号で、年式を区別するため呼び名としても使われる。前者が3代目、後者が4代目。後者はその数字から通称“ハチロク”と呼ばれた。軽量ボディのFRパッケージはドリフトしやすいということが人気の理由。

ケーターハム・スーパーセブン……英国のロータスディーラーだったケ―タ―ハム・カーズが、1973年にロータス社から生産権を引き継いだ軽量スポーツカー。FRPボディ製のシリーズ4と、ボディの在庫終了後に開発されたアルミボディのシリーズ3が有名。

ロータス・エラン……1962年にロータス社が開発し、軽快な走りによって人気を博したスポーツカー。当初はオープンカーを前提として開発されたが、1965年にクローズドボディ仕様が追加された。

ジムカーナ……舗装路面のスラロームコースを競技車両が一台ずつ走行し、タイムを競う、モータースポーツにおける馬術のような競技。イギリスでは「スプリント」と呼ばれる。

 

Profile

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たくぼ・としやす
1966年東京生まれ。ヴァージンアトランティック航空日本支社を経て、1999年グローブ・トロッタージャパン株式会社代表取締役に就任。2004年英国グローブ・トロッター社取締役副社長として英国に赴任 (ジャパン社社長兼任)。2006年帰国後、英国ブランドの専門商社、BLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)株式会社代表取締役となり、現在に至る。昨秋、ブランドビジネスとして日本では初の業態となる、ブランド・アーケードショップ「ヴァルカナイズ・ロンドン」を、東京・南青山の骨董通りにオープン。“良いものを一生使い続けることが本当のラグジュアリ―”という英国伝統的な価値観を提案している。

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