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Vol.44
熱狂と混沌のインディア
Vrindavan, India/インド・ヴリンダヴァン

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

インドという国は不思議な国である。これまで何度もこの国を訪れたことがあるけれど、そのたびに毎回違った表情を見せてくれる。そのひとつひとつが驚きと意外性に満ちていて、少々刺激が強すぎることもあるのだけれども、それでも旅人の心を強引にしっかりと掴んで離さない。時々、あまりに刺激がなく平和な旅の日々が過ごしているときなどは、ふとインドが恋しくなったりもする。

甘ったるいチャイ。ゴミにまみれたスラム。神々と密接に交わる人びと。ガンガーの悠久なる流れ。霞んだ空気の先から顔を覗かせる赤い太陽。あの精神世界の深さ。そして、混沌。

インドを一言で表現するならば、やはり混沌という言葉がしっくり来るように思える。数えきれないほど存在するインドの祭りのうちのひとつ、ホーリーに参加したとき、それが最も顕著に現れているような気がした。ホーリーは、ヒンズーの神のうちのひとりのクリシュナ神信仰のお祭りで、その聖地とも言えるブリンダヴァンを訪れた。

祭りの間、粉をかぶらず無事でいることのできる人はいない。

多くの人が集まることで有名な寺院に向かうのだけれども、街中の路地には狂ったようにピンクや緑の粉を掛け合う人びとがいて、そこを無事に通り抜けることは不可能に近い。外国人は絶好の標的となり、カメラを持っていようがなんだろうが、そんなことは関係無しに容赦なく粉が飛び交って来る。始めはなんとかうまく避けながらと思っていたけれども、途中から諦め、寺院に辿り着くころにはすでに全身がピンクに染まっていた。中に入るとその熱気に驚いた。みな狂ったように押し合い、祭壇に祀られているクリシュナ像に手を伸ばし色の粉を投げている。何やら歌のようなものを唱っているけれども、それが何の歌かはわからない。とにかくその熱気がすごい。寺院内に巨大なエネルギーがひしめく。

この異様な群衆には本当に驚いた。無数の人びとが頭の先から足の先までピンクや赤に染まり、恍惚の表情をしてできるだけ神に近づこうとしている。それは物理的な距離の近さであり、また精神的にも近づこうとしているようにも見える。そして宙に舞う粉は、まるで彼らの信仰心そのもののように漂っている。

想像を超えたテンションのまま祭りはクライマックスを迎え、最後の瞬間、ひときわ人びとの熱気が爆発し、そのあとはそれまでの熱狂が嘘のように消え去りホーリーは終わった。

時々、ふとした瞬間にあの強烈な熱気を思い出すことがある。そのたびにインドが恋しくなるのである。何回行こうが、どこまで深い世界まで辿り着こうが行き尽くすということがない、インドという国。またいつか訪れることになるだろうと思う。

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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