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Vol.12
夜の虹
Catarata de Iguazu ,Brazil / イグアスの滝・ブラジル

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

満月の明かりを頼りに、アルゼンチンとブラジルの国境にまたがって広がるジャングルの中を歩いた。

目指すはイグアスの滝。その日の昼、白日の下に詳細にその姿をさらけ出すその瀑布を見た時、すぐに月明かりに浮かぶ滝の姿がまぶたの裏に浮かんだ。そのイメージはどんどんとふくれあがり、この滝は夜、一体どうなっているのかがどうしても見たくなり、日が暮れたあと、機材を背負って歩き始めた。

密度が高く鬱蒼と茂るジャングルの木々の合間から滝の轟音は聞こえては遠ざかる。森の中には無数の夜の生き物たちがうごめいている気配はするものの、莫大な水量の滝の音にかき消され何も聞こえない。自分自身の歩く音も聞こえず、まるで自分の肉体が消え、ジャングルの闇と同化してしまったような錯覚に陥る。

突如、視界が開け、眼前に満月に照らし出されたイグアスが現れた。と同時に莫大な水量が生み出す爆音の振動が体を包む。昼間は荒々しく感じる滝も、いまは月明かりでしっとりとした青白い絹のカーテンのように揺れて見える。

一通りの撮影を終えて機材を片付け帰路に着く前に、最後にもう一目だけ月夜に輝くイグアスを見ようと振り返ると、そこに夜の虹があった。

夜の虹の存在はそれまで知っていたが、実際目にするのはこれが初めてだった。昼間多くの人で賑わうイグアスの滝も、この時は僕だけ。

やがて南の空から雲がわき出し、満月を隠して夜の虹は消えた。誰も知らないところで、夜の虹は静かにこの地球上のどこかにその姿を見せている。そのことを知った時、またこの旅に新たな世界が広がったような気がした。

 

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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