Vol.7
探検昆虫学者の旅
San José, Costa Rica (サンノゼ・コスタリカ)
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
旅をしていると、いろんな人に出会う。世界は広いけれど、人もまた多様だと感じることが多い。メキシコから陸路、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグアを経由して中米コスタリカに辿り着き、そこで探検昆虫学者という面白い生き方をしている西田賢司さんに出会った。
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コスタリカでの12年に及ぶ研究で、500種以上の新種を見つけてきたという西田さん。初対面ながらも、親しみやすい雰囲気でいろんな話を聞かせてくれた。はじめは、他愛もないお互いがしてきた旅の話などをしていたが、しかし、昆虫の話になると彼の目は輝きを増し、その口から放たれる言葉に強さが増した。
「この地球上に存在する生物の、まだ80パーセント以上が名前も付けられていないんです。これからは宇宙の時代だと言われているけれど、僕はそのまえにもっと地球を見てみよう、って思ってます。まだ自分たちが住むこの星のことだって僕らはまだ全然わかっていない。だってまだまだ名前をつけられるのを待っている生き物たちがこの星にいるから。名前をつけてあげないと、という使命感のようなものが僕にはあります」
彼の新種発見のアプローチは独特で、多くの学者が大きく目立って 美しい昆虫を探すのに対して、地味で小さく目立たないものを探す のだという。そして誰も探さないところ、例えば街中の公園の木な どから新種を発見したりする。彼がそのようなアプローチをするよ うになったのも、やはり名もない生き物に名前をつけないとないと いう使命感から来ている。新種を多く見つけて名を与えることが彼 の使命であり、きれいな目立つ昆虫を探すことが彼の使命ではない のである。
いま僕がしている旅は「ここではない、何処かを求めて移動をし続ける」という、横の軸に広がる旅である。一方、西田氏がしている旅はコスタリカというひとつの場所に留まり、そこで縦に深い穴を掘り続ける旅である。しかしその二つの旅は、「この星をもっと知りたい」もしくは「知らなくてはならない」という思いで共通している。この二つの旅が、また何処かで交わることがあるのだろうか? 今回のコスタリカ滞在において、共に旅をすることは残念ながら叶わなかったが、お互いこの星を知るための旅を続けられれば、またいつか、どこかで、出会うことになるのかも知れない。旅は出会いだ。改めてそう感じた。
写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。
「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま
竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com
著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)
2010/09/09
いま、世界一周の途中。
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