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Vol.14
天使の滝
Salto Angel , Venezuela / エンゼルフォール・ベネズエラ

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

 ベネズエラ中部の街、シウダー・ボリーバルから5人乗りの小型飛行機に乗り込んで南へ飛んだ。無数の支流を持つオノリコ川が作り出すデルタ地帯が眼下に広がっている。1時間半ほど飛ぶと風景は濃いジャングルの緑へと変わり、その先にいくつものテーブルマウンテンが現れ始めた。切り立った岩壁に囲まれたその山々はベネズエラではテプイと呼ばれている。長い年月によって風雨で浸食された不思議な形状をした山々。飛行機は数あるテプイのうちのひとつの麓にある滑走路の上を数回旋回してからカナイマに着陸した。地上から見上げるテプイは思ったより高い。そして迫力がある。

カナイマから今度は船に乗り込む。8人乗り程度の簡素な木製ボート。それでテプイの合間を縫うように流れる川を遡る。川はジャングルのタンニンが溶け出しきれいな飴色をしている。複雑に蛇行する川は所々早瀬があり、その度に冷たい水しぶきを浴び、全身がびしょ濡れになる。強烈な日差しが瞬時に濡れた服を乾かしてくれるのだが、すぐまた今度はスコールが降り出す。このあたりの天気は本当に変わりやすい。数時間の間にスコールと晴天が何度も入れ替わるのだが、その入れ替えの瞬間に虹が空に広がる。天気を見ているだけでも飽きない。そうして4時間ほどで目的地、エンゼルフォールの麓に到着。
その日はエンゼルフォールの近くのジャングルの中でハンモックを吊って夜を過ごす。ハンモックに揺られながら、夜の闇の向こうから聞こえて来る滝が流れ落ちる音とともに就寝。翌朝早朝、日の出とともに歩き始め45分ほどでエンゼルフォールに到着。テプイの頂上から地上めがけて大量の水が流れ落ちる。その落差は世界最大の979m。頂上付近は雲がかかり、まるで雲から滝が流れ落ちているように見える。長い時間をかけて落下する水は途中で霧となり、風に吹かれてどこかへと飛んで行く。そのためこの滝には滝壺がない。
テプイの成り立ちはおよそ数十万年前と言われている。エンゼルフォールが発見されたのは1937年。それまでのあいだ、この滝は人目に触れることなく、ずっとひっそりと流れ続けてきたのである。人間から見れば無限にも近いその長い年月のことを考えながら、変わらず流れ落ちる滝を見るのが、なんとも心地よい時間であった。

 

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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