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Vol.13
白砂漠の足跡
Lençóis Maranhenses,Brazil / レンソイス・マラニャンセス・ブラジル

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

ブラジル北部の小さな街、バヘリーニャスからピックアップトラックの荷台に乗って、北へ向かう。途中、小さいけれど流れの速い川を越え、さらに奥へ。あたりは低木が生い茂り、その中に白砂の小さな細い道が通っている。砂の起伏で車体は大きく揺れ、その度に荷台の淵に掴まり、落ちないように踏ん張る。約一時間ほどすると、レンソイス・マラニャンセスの白い砂丘が突然目の前に現れた。

ブラジル北部の強烈な日差しが、真っ白な砂漠に反射して、無防備な肌が上からも下からも容赦なく光線にさらされる。暑い。汗が止めどなく吹き出す。裸足になり、砂丘を登る。足の裏に感じる細かな砂は、踏み出すたびにさらさらと流れ落ち、歩いても歩いても前に進む気がしない。それでもなんとか丘を越え、眼前に広がる景色を眺める。そして落胆する。いま苦労して超えて来た砂丘が、無数に何処までも続いているのだ。景色は変わらず疲労だけがたまって行く。それを何度か繰り返していると、なぜいま自分がここにいるのか、どこに向かっているのか、本当に歩いて前に進んでいるのか、わからなくなる。そんな時、立ち止まって振り返ってみる。白砂漠の中に自分の足跡が確かにひとつの筋となって残っているのが見える。風に吹かれて遠くのものは淡い輪郭を残すのみとなっているものの、それは確かにそこに存在している。

日本を出てから8ヶ月以上が経ち、北米大陸から始まった僕の旅は中米、南米を経て、レンソイス・マラニャンセスの白砂漠に辿り着いた。半年を過ぎたあたりから、自分がこの旅で何処に向かっているのかがわからなくなる時が多くなった。自分がいまいる場所は正しい場所なのか、一体ここで何をしているのか、いつか何処かに辿り着くのか。不安に駆られる時、それまでこの旅で撮った写真を眺め、どうにか自分自身の精神を保つことができた。

旅はこのレンソイス・マラニャンセスの真っ白な砂漠のようだと思う。目的地はどこにあるのかわからず、取るべき道は無限に存在する。いくつもの丘があり、いくつもの苦難がある。それを自分の足で確かに踏みしめ、歩かなくてはならない。

砂漠にしっかりと刻み込まれた自分の足跡を眺めて、またひとつ、新しい足跡をそこに残すため、次の一歩を踏み出したのであった。

 

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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