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氷上の100キロオーバー・ドライブ!
世界一のスノーモビル・ワールドへ

カナダ・オンタリオ州マスコーカ地方
Muskoka, Ontario, Canada

カナダ南東部、大都市トロントを擁するオンタリオ州の北部は冬、スノーモビル・ライダーたちのパラダイスとなる。州内全土に張り巡らされた長大な専用トレイルは、なんと全長7万キロに及ぶ。それもそのはず、スノーモビルはカナダ発祥のマシンという。雪と氷で覆われた大自然を堪能し、ダイナミックにツーリングする、1泊2日のスノーモビルの旅に挑戦した。

Day 1.

雪と氷の世界、真冬のマスコーカへ

森の中に大小の湖が点在するマスコーカ地方。冬は湖も固く凍りつく。

 東京からトロントまで約12時間のフライト、そして空港から車で2時間北上。はるばるやってきたのは、オンタリオ州マスコーカ地方。樫やメープル、ホワイトパインなどがうっそうと茂る美しい森、点在する大小の湖。そして静かな水辺にたたずむ優雅なホテル。ハリウッド・セレブリティなど多くの著名人が別荘を持つことでも知られる、北米有数のリゾート地帯だ。

オンタリオ州マスコーカ近郊のスノーモービル専用トレイルMAP

しかし、訪れたのは2月。湖は固く凍りつき、どこまでも続く森は雪に覆われ、あたり一面、白一色の世界が広がるばかり。このリゾートにあえて真冬にやってきたのには、わけがある。スノーモビルで旅をするためだ。
ここオンタリオ州は、世界最長のスノーモビル・トレイルのネットワークを持つことで知られる。日本の3倍ほどの面積をもつこの州の、大自然の中に張り巡らされた専用トレイルの総距離は、グルーミングされている公式ルートだけでも4万2000キロ以上(凍った湖の上など地図に載っていない非公式ルートも合わせればなんと7万キロ以上とも言われる)。地球を1周してしまうほどのトレイルが、スノーモビルだけのために、冬季限定で出現するのだ。
乗って楽しむことはもちろん、旅の足としてマシンを乗りこなす。そんなツーリングをし、この地のスノーモビル文化に触れる旅である。
夜、マスコーカでもひときわエレガントなホテル「JWマリオット・ザ・ルソー」にチェックイン。窓の外、暗闇の中に雪がしんしんと降り続いているのがわかる。明日は新雪のトレイルを疾走するのだ。今までに体験したことのない期待と不安で、ドキドキしてくる。

Day 2.

専用ウエアをフル装備し世界一のスノーモビル・トレイルへ

今回のツアーのガイドを務めたダン・アルカンド(左)とロビン・タプレー。
十分な装備、そして1泊分の荷物を積み込む。今回はフランスのアウトドアブランド「ミレー」が強い味方に。

朝、ホテルに隣接したスポーツセンターへ。待っていたのは、スノーモビル・ツアーを提供しているマスコーカ・スポーツ&リクリエーションのオーナーのダン・アルカンドと、ナチュラリストのロビン・タプレー。トレイルを知り尽くした彼らが、今日と明日、1泊2日のスノーモビル旅行のガイドだ。
地図でざっと予定ルートを確認。聞けば、今日だけで120キロを走行するという。そして身支度。時にマイナス20~30℃にもなる雪原を疾走しようというのだから、スキーウエアなどでは不十分。完全に風をシャットアウトし、さらに万が一の時には体をプロテクトする機能も備わった専用のオーバーパンツとジャケットを借りる。フルフェイスのヘルメットやブーツ、グローブまで、全身の装備をレンタル。
次に、マシンに乗って簡単なブリーフィングを受ける。鍵を回してエンジンスタート。アクセルは右のハンドル、ブレーキは左。バックは白いボタン。走行は基本的にトレイルの右側。右左折や停止の際は腕で合図を。トレイル上の制限速度は時速50km・・・等々。そして実際に雪上での練習走行を数度。これで準備は終了だ。
短く端的な説明、あとは“At your own risk”(自己責任で)、というのがカナダのアウトドアツアーの基本姿勢。参加者をちゃんと大人扱いしてくれるのが小気味よい。
「OK。じゃあ、出発しようか!」とロビンとダン。雪上ながら水を得た魚といったところか、むしろ彼らの方が楽しんでいるような雰囲気さえある。雪が降る中、エンジンをスタートさせ、ゆっくりと走りだす。車道沿いに数百メートルほど移動したところから、森の中のトレイルへと突入。あまりにもあっさりと、旅は始まってしまった。

雪に覆われた
真っ白な森を駆け抜ける

トレイルは、雪に覆われた森を抜け、何度も車道を横切り、再び森の中に入り、延々と続いている。道幅は2~4mほど、アップダウンがあり、急な登り下りをクリアするのは、不慣れなうちはなかなかのスリル。まっすぐなルートはさほどなく、くねくねとカーブが連続する。
専用圧雪車によるグルーミング直後の雪面はスムースだが、雪が降りたまっているところは、バンピーで操縦にもやや力がいる。けれど慣れてくると、そのバンピーさが楽しい。急カーブではバイク同様重心を内側にシフトするなど、全身で操縦する。調子に乗ってスピードを出すと、次のカーブで横滑りしてヒヤリ。とにかく雪上走行は、思った以上に体を使うもので、実にエキサイティングだ。
制限速度は50キロと言えど、体感速度は相当なもの。マシンの操縦やスピードが好きなファウスト諸氏には満足いただけるだろう。

さて、トレイルは州内全土を結ぶ幹線を中心に、細かなトレイルが網目状に巡り、それぞれにルートナンバーがふられている。これを網羅した専用地図は、ライダーたちの必携品だ。加えて、停止、徐行、スピード制限などの標識ももちろん要所にたてられ、一般道を運転するのと同様の感覚で走行することができる。こうした標識の設置や専用圧雪車でのグルーミングなど、トレイルの整備や安全管理は、各町、各エリアのスノーモビル・クラブがボランティア・ベースで行っている。そうしたクラブが協力し、州内全土をカバーするトレイル・ネットワークを完成させているのである。

トレイルはこの専用車でグルーミングされる。これも全て地元のクラブが手配。
トレイルは右側通行。他のマシンとすれ違うことも。

1泊2日、約160キロを走行したスノーモービルツーリングをムービーで!

 

Lunch at ブレイクス・メモリーズ・オブ・マスコーカ
ライダー御用達のダイナーでカナディアンバーガーをがぶり

スノーモビルが並ぶ「ブレイクス・メモリーズ・オフ・マスコーカ」の駐車場。

午後1時。出発から3時間ほどで70キロは走っただろうか。ランチのため、パリーサウンドという街の郊外にあるダイナー「ブレイクス・メモリーズ・オブ・マスコーカ」に立ち寄った。駐車場にはスノーモビルがずらり並ぶライダーご用達の店だ。トレイル上には、このようにレストランやガソリンスタンドが点在しており、ツーリングの休憩地点でありライダーたちの交流の場となっている。
店内へ入ると、あちこちにヘルメットが転がり、一目でそれとわかるライダーたちが談笑し寛いでいる。初対面の彼らに、当たり前のように声をかけられた。日本からスノーモビルの旅をしに来たと言うと、「世界一のトレイルを楽しんでくれ」と、みんな誇らしげに笑う。
「雪の上を走るだけが目的じゃないんだ。森の中を巡り、こうしてレストランに寄って人気の料理を食べ、他のライダーと情報交換をし、そして夜は小さな宿に泊まって翌日また旅をする。それらすべてをひっくるめたものが、オンタリオのスノーモビル文化なんだ」とガイドのロビン。
ここは週末ともなると外の駐車場には100台以上のマシンが止められ、店内は大変なにぎわいをみせるという。
ライダーたちに薦められたメニューは、トマトサラダのブロシェッタと、カナディアン・ハンバーガー。わしづかみでガブリと頬張ると、ダイナミックなうまさだ。

店内ではライダーたちが寛いでいた。
前菜には名物メニューのブロシェッタを。
ボリューム満点のハンバーガーは、ライダーたちのソウルフード。

Lunch

Blake's Memories of Muskoka

住所:1200 hwy 69,Parry Sound, Ontario
Tel (705) 378-0200
ランチ予算:$15前後

Stay at ルソー・リトリート
名物女主人がお出迎え。アンティークハウスのB&B

午後は、さらに50キロほどの走行。元来た方向へと別ルートで引き返し、ルソーという小さな村へ。午前中は比較的スピードも控えめに先導していたロビンとダンだが、こちらが操縦に慣れたと思ったのか、午後はスピードをあげてくる。気がつくと制限速度の50キロギリギリで飛ばしていることもしばしば。

湖を眺め渡すビューポイントなどで休憩。気持ちがいい。

高台のビューポイントに立ち寄って、凍った湖と真っ白な雪世界を眺めたり、ホットチョコレート・ブレイクをしたり、気ままにツーリングしながら、4時過ぎには目的地に到着。今日のステイは、小さなB&B「ルソー・リトリート」だ。
瀟洒な建物の中に入り、温かな室内でウエアを脱ぐと、全身が解放され溶けるような心地よさに包まれる。
「さあ、寒かったでしょう。すべて私に任せて、自分の家のようにくつろいでいいのよ!」
名物?オーナーのヘザーさんが陽気に出迎えて、4室ある部屋のひとつへと案内してくれる。ビクトリア調のインテリアでまとめられた部屋はすべてセパレート・シャワーと猫足バスタブのあるバスルーム付き。聞けば、建物自体は1800年代後半に建てられたアンティークハウスで、当時の優雅な雰囲気を残しつつ、インフラは見事に改装されている。



左:手作りジャムを盛り付ける、B&Bのオーナー、ヘザーさん。中央上:B&B「ルソー・リトリート」。もちろん目の前までスノーモビルで乗り付けられる。中央下:オフホワイトを基調にした「ディッチバーン・ルーム」はバルコニーつき。右:客室はビクトリアン・スタイルの階段を上がって2~3階に。
フレンチ・カントリー・スタイルの「ヘルムスレー・ルーム」。

Stay

Rosseau Retreat

住所:7 Cardwell Road, Rosseau, Ontario
Tel(705)732-2200
一泊料金(1室):$119~189
URL: www.rosseauretreat.com

Dinner at クロスロード

ランチ、ディナーともに人気の「クロスロード」。

ヘザーさんのもてなしで、暖炉のある温かなリビングにて食前酒を楽しみながら、まるで親友宅を訪れたような和やかな雰囲気に包まれて談笑。
ディナーは、道路を挟んですぐのレストラン「クロスロード」へ。「ここもライダーたちに大人気の店なんだ。もちろん車でも来られる店だが、冬はあえてスノーモビルで食事に来るのがオンタリオ流だね」とロビン。
スノーウェアで入店OKというスタイルがご当地ならでは。ウッディーな店内はランプの温かな灯が揺れ、シックな雰囲気。モントリオール出身のシェフが作る料理は、オリジナリティもあって上品な味わいだ。チキンのオーブン焼き、地元のマスのグリルなど人気料理に加え、フリットや春巻きを盛り合わせたアジア風プラッターや、野菜とフルーツのサラダなど、オンタリオ産ワインとの相性も楽しめるラインナップ。一見地元向けの何気ないレストランだが、クォリティの高さはさすが舌の肥えた人も多いリゾートエリアの人気店といえよう。

シェフおすすめのマスのグリル。近くの湖で獲れたものだ。
駐車場はスノーモビルも利用できるガスステーションも兼ねる。

Dinner

Crossorads Pub & Grill

住所:Hwy 141 & 632, Rosseau, Ontario
Tel(705)732-4343
ディナー予算:前菜、メイン、デザートのコース$30前後

Day 3.

凍結湖上を時速100キロ超で爆走する爽快感

凍った湖の上では躊躇してはいけない。とにかくアクセルを握り続ける。

B&Bで迎えた朝、キッチンから漂うコーヒーとトーストの香りに目覚める。ホームメイドのグラノーラやジャム、熱々の卵料理など朝食を堪能して、ふたたびツーリングへ。

森から湖上へ飛び出す。一気に視界が開けてまっ平らな雪原となる。
寒風と雪煙りを受けての時速100キロ走行は、想像以上のスピード感。

2日目ともなると、我ながら身支度もマシンの扱いも手際よく、最初からかなりのスピードで飛ばすロビンたちに負けじと、ハイスピードでトレイルへ。今日は眺めを楽しみながら、出発地点のホテルに帰るだけ。走行距離も40~50km程度だ。
昨日降り続いていた雪も今日は止み、空も徐々に晴れてきた。森は光を受けて輝き、まさに白銀の世界。仰ぎ見るように伸びた樫の木の裸の枝にも新鮮な雪が降り積もっている。針葉樹の枝が、雪の重さでアーチ状にしなり、ところどころに白いトンネルを作っている。そんな中を走り抜ける、気分は最高だ。
この陽気でロビンとダンも絶好調なのか、昨日は迂回した凍った湖上の横断を提案してきた。湖上は正式なトレイルではないが、真冬はトラックも走れるほど厚く凍っており、スノーモビルに最適なのだ。
「フラットだから、トレイルよりもスピードを出すこともできるしね」とニヤリ。相当飛ばすつもりなのだろう。
「ただし、ところどころ雪の重みで氷面から水が浸み出してシャーベット状になっているところがある。そこにはまると抜け出すのに大変だから、途中で止まるな。とにかくスピードを維持してまっすぐに突っ切れ」
なんとファウスト向き(?)のアドバイスか!
森の中から広大な凍った湖の氷上に飛びだし、スピードをぐんぐんあげていく。ところどころ出くわすシャーベット状の雪面にハンドルを取られそうになるが、アドバイス通りアクセルを握り続ける。逆に怖がってアクセルを緩めるとスタックするため、スピードを上げざるを得ない。
まきあがる雪煙り。
耳を打つ風切り音。
気がついたらメーターは100キロ超を指していた。
この上ない解放感!
一度も止まることなく湖を渡りきると、マシンも自分自身も真っ白。巻きあがった雪を全身で被っていた。
そんな凍結湖の疾走横断を何度も繰り返し、休憩もせず一気に走り続け、2時間足らずでホテルに到着。もはや爆走ライダーになった気分だ。

2日間でトータルの走行距離はおよそ160km。雪の上ばかりよく走ったものだと、心地よい疲労感と充足感に包まれる。
「どうだい、オンタリオの冬の醍醐味を堪能できたかい? 次は1週間、雪上キャンプを張って美しい星空を見上げながら、さらに北へのロングツーリングをしてみないか」とロビン。
まったく、ようやくツアーが終わった直後になんてことを言うのだろう。また来年の冬、ここに来たくなってしまったではないか。

2日目、ホテルに戻るころには熟練ライダーの気分に。

マイナス20度の冒険をサポートしてくれた装備
MILLET

 

ファウスト・オブ・ザ・イヤー、新世代の登山家・栗城史多氏も愛用するフランスのアウトドアブランド「ミレー」。耐寒・防風・防水性に優れたスキーウェア、ザック、シューズで、厳冬のカナダでのアクティビティも快適にクリア。
紹介記事はコチラ

問/ラフマミレー TEL.03−5765−7150
http://www.millet.jp/

Data

JWマリオットからのスノーモビル・ツアー

マスコーカ・スポーツ&リクリエーション Muskoka Recreation Snowmobile Tour
TEL 1-705-604-2628
http://muskokarecreation.com

ホテルに隣接したスポーツセンターから、スノーモビルのガイド付きツアーを行っている。運転するには日本の運転免許証の提示が必要。料金は1泊3食付きで1人$600~。スノーモビルのほか、ヘルメット、専用ウエアなど必要なものは全て含まれる。2人乗りも可能。今回のようにナチュラリストのロビン・タプレー氏がガイドを行うスペシャル・ツアーも事前予約により可能。他に1時間半$125~で、半日、日帰り、あるいは数日にわたるツアーのアレンジも可能。スノーモビルのレンタルは1日299$。スノーモビル以外にも、ウィンタースポーツ全般の用具レンタル、ガイドツアーも実施。

 

スノーモービル・ツーリングの拠点
マスコーカの魅力に彩られたラグジュアリーリゾート

マリオット系列最上ランクのJWマリオット・ザ・ルソー。客室221室はすべてキッチン、リビングつきのスイートタイプ。

JWマリオット・ザ・ルソー JW Marriott the Rosseau

ザ・ルソーは、カナダで初めてのJWマリオットとして2008年にオープン(JWはマリオット系列で最上ランク)。美しいルソー湖に面して建ち、森と湖を舞台に四季折々のアクティビティが堪能できる。冬もスノーモビルをはじめ、アイスフィッシングやクロスカントリー・スキー、スノーシューなどが敷地内で楽しめる。ふんだんに飾られたアートをはじめ、ランプシェードなどの内装品は、ほとんど地元作家の手による特注品。チェーンホテルながら紋切り型でなく、ローカルに密着した個性をもつ。スタッフのサービスもアットホームな雰囲気で、マスコーカの穏やかさそのもの。客室はすべてキッチンつきのスイートタイプで、長期滞在やグループでのシェアにも最適。

湖畔のコテージを思わせるロビーラウンジ。
カフェレストランからバー、ラウンジまで、境目を感じさせずつながっており、朝食はどこでも食べられる。
室内のアートからランプシェードなどの調度品まで、ローカルアーティストの手によるもの。

Data

冬季料金:スタンダード・スタジオ$159~、1ベッドルーム・スイート$299~
http://www.therosseau.com

■1ベッドルーム・スイート

フルキッチンつき、ゆったりとしたリビングのソファはベッドとしても利用可能。レイク・ビュー・ルームは冬$299、夏$499。

■2ベッドルーム・スイート

ブレックファスト・カウンターのついたキッチン&リビングの両脇にフルサイズのバスルーム付きベッドルームが2つ。冬$499、夏$899。

■ホテル内の施設

■JWマリオット・ザ・ルソーで体験できるマスコーカのウィンター・アクティビティ

 

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