Journey to Eastern Cape 3
至福の天空ピクニックでサファリを窮める
SAMARA PRIVATE GAME RESERVE
協力:南アフリカ観光局
夕陽の沈むサバンナで味わうワイン。煌く天の川の下で楽しむディナー。そして1200メートルの崖に立ったあとのエレガントなピクニック。イースタンケープの冒険の最後は、究極ともいえるラグジュアリーなサファリを紹介する。待っていたのは息を呑むような非日常の体験だった。
カルーの美しい夕焼けに乾杯!
ゴトゴトゴト。車は私有地に入ってから30分は走っていたが、あたりに人の気配はなかった。我々はポートエリザベスの街から250km北上した、サマラ・プライベート・ゲームリザーブ(SAMARA PRIVATE GAME RESERVE)という70000エーカーを誇る私営動物保護区にいた。その広さは東京ドーム6059個分、茨城県つくば市と同じ大きさといえば想像がつくだろうか。雄大な山々に囲まれたグレート・カルー(Great Karoo)の台地に位置し、ケープヤマシマウマなど南ア固有の動物が生息する場所だ。この旅ではじめて見る、シバザクラのようなワイルドフラワーのピンクの絨毯に見とれていると、やっとロッジが見えてきた。
サマラは今回もっともラグジュアリーなサファリだった。メインとなる「カルー・ロッジ」には5つのスイートしかなく、ここと7km離れた「マナーハウス」を我々は貸し切った。敷地にはもう一つコテージがあるだけだから、本日のゲストは総勢でも10数名。スタッフの数の方が多く、そしてその何十倍、何百倍もの動物に囲まれて滞在したのだった。さて、チェックインしてプールサイドでランチを楽しんだ後、さっそくサファリに出掛けた。すぐにベルベットモンキーの群れやヒョウモンガメのカップルに遭遇。そしてビッグファイブのひとつ、ケープバッファローの脇を車はかすめた。「やった!」。やはりビッグファイブに出会うとテンションが上がる。
その後、ガイドのマーカスは発信機を頼りにチーターを探してくれたが、アンテロープやハーテビーストとすれ違うばかりで3時間が過ぎていった。しかし、大物を見つけられなくても大自然の中で車に揺られるのはとても気持ちがいいものだ。やがて日は傾き1200メートルの高地の厳しい冷え込みがはじまった。積んであったポンチョや毛布をありったけかぶっても寒さが身に応えてきたころ、マーカスが車を止めた。「今日はチーターが見られなくて残念だった。ここで一杯飲もう」。
サバンナのど真ん中で止まったランドクルーザーからはバスケットが取り出され、チェックのテーブルクロス、ステンレス製のワイングラス、そして皿が並べられた。映画にでてくるようなイギリス式のピクニックだ。「何でもあるから飲みたいものをいってくれ!」。マーカスがワイン、ビール、ブランデー、アップルタイザーなど、さまざまに勧める。仕舞いにバッグを広げて数々のリキュールの小瓶を披露すると、ボツワナ人のパコが喜んだ。「いいね! アフリカ特産のスピリッツまであるぜ!」。我々は、カルーの夕陽と刻々と変わる空のグラデーションを肴に、1時間ほど酒を楽しんだ。自然に抱かれるとはまさにこのことである。なんと贅沢な時間だろう。誰もが笑顔になったトワイライトタイムだった。
パリ顔負けのスタイリッシュなアフリカンナイト
ところで、このイースタンケープの旅では食事も堪能した。南アフリカの伝統的な料理には肉や豆を煮込んだものが多いが、3ツ星や4ツ星の宿泊施設では手の込んだフレンチも供される。繊細な味付けは、ケープタウンで作られるクオリティの高いワインと相性が良く、デザートまで楽しむことができるだろう。朝食はどこも見事なイングリッシュ・ブレックファストだ。ホームメイドのパンやマフィン、生ハム、サーモン、チーズ、フルーツ、野菜、シリアル、ビスケットなどがずらりと並び、席にはソーセージを添えた温かい卵料理が運ばれてくる。絞りたてのジュースはいつも数種類あり、コーヒーや紅茶、ココアなども美味い。
サマラでは、天の川の下で初日のディナーを食べた。大きな焚き火を囲むようにセッティングされたテーブルで料理とワインをたっぷり楽しみ、最後はマーカスから星空の講義を受けた。氷点下近くまで下がった外から戻ると部屋はエアコンで温められ、バスタブにはバブルが充満。なんと気の利いていることか。枕には詩のメッセージカードまである。「地球は、あなたがここで感じてくれたことを感謝しています。髪をなでる風も祈っています。ゆっくりお休みなさい」と。
サマラは自然の恩恵を感じさせる一方で、スタイリッシュな一面も見せた。翌日のマナーハウスでのディナーは、パリやニューヨークならば間違いなく話題になりそうなエレガントなアフリカンナイトだったのだ。ラウンジミュージックが流れる中、コンテンポラリーなアフリカンアートに囲まれ、前菜からデザートまで5皿のコース料理を堪能。本来はオーナーの別荘というマナーハウスは、4つのスイートルーム、ラウンジ、バーカウンター、そして屋外プールが備わった目を見張るような美しい屋敷。ここに滞在した仲間たちは、こぞって自分たちの部屋を案内してくれたのだった。
忘れ難い標高2400メートルのピクニック
翌日は朝からサファリに出掛けたものの、やはりチーターは見つからない。「彼らはすぐに移動してしまうからね」とマーカス。でもやがて白サイの群れに出会えた。距離をおいて車のエンジンを止めると、辺りからすべての音が消える。「ああやって安全を確認しているんだよ」。放射状に広がった4頭のサイを指してマーカスがささやいた。息を殺し、ジーというカメラのモーター音を聞きながらシャッターチャンスを待っていると、地響きを立ててサイが移動をはじめた。我々も堰を切ったようにいっせいにシャッターを押す。マシンガンのように音が連なる瞬間もサファリの醍醐味である。
ランドクルーザーは山を登り、広大なサマラは昨日とは違う風景を見せはじめた。2000メートル級の山だが、カルーは高地なので標高差は1200メートルぐらいだろうか。エンジンを唸らせて急な坂を進むほど道は狭くなり、崖下に落ちるのではないかとヒヤヒヤしたが、山頂に到着するとなだらかな草原が広がっていた。まるでモンゴルのようだ。遠くゴマ粒ほどの大きさで動物の群れが見える。さらに車は走り、やがてブッシュのそばで止まるとマーカスは「ここから歩くけど気をつけて」という。彼について藪を抜けると全員が息を呑んだ。そこは台地を見晴らす崖の縁だったのだ。「すごい!なんだこれは!」。200km先まで見渡す光景に誰もが興奮した。「素晴らしい景色だけど、まだ自分の子供たちは連れてきていないんだ。あまりにも危険だからね」。マーカスのいうとおり、これは私営動物保護区サマラならではの究極のスリルである。
「そろそろお腹が空いただろう。ピクニックにしよう」。車に戻りながらマーカスがいったものだから、昨夕のようにバスケットを広げるのかと思った。ところが、彼はエンジンをかけて山頂の草原に戻っていく。すると、先ほどまで何もなかった場所にテーブルやパラソルがセットされ、スタッフがドリンクを持って待っているではないか。なんてことだ。カルーの絶景をバックにランチを楽しもうというのか。「まったくすごいな…」。誰かのため息に皆がうなずいていた。
サファリとはスワヒリ語で「旅行」を意味する。動物を探して観察するだけでなく、厳しい自然の中で文化や仲間と触れ合い、忘れられない時間を作ることができるのがサファリの素晴らしさだ。それは人生の旅であり冒険なのである。実に多くの驚きと感動を体験したイースタンケープの旅だった。気持ちのいい仲間と知り合い、助け合い、そして天空ピクニックにサファリの真骨頂を感じることができた。
SAMARA PRIVATE GAME RESERVE
http://www.samara.co.za/
TEL. +27 (0)49 891 0558
FAX. +27 (0)49 892 3751
reservations@samara.co.za
lodge@samara.co.za
価格
カルー・ロッジ 1人ZAR1,950~4800(ハイシーズン)
マナーハウス 貸し切りZAR12,000~
※価格にはすべての食事、1日2回のガイド付きサファリ、サファリ中のドリンク、税金が含まれます
※マナーハウスは4名で貸し切った場合の価格です。詳しくはホームページをご確認ください
※ ZARは南アフリカランド。1ZAR=約9.5円(2012年1月現在)
Journey to Eastern Cape シリーズ1・2・3
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Text&Photos: Chie Odashima
Cooperation: South African Tourism
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