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ザルツブルクの今
異彩を放つ食と芸術の空間
Red Bull Hangar-7
オーストリアで唯一、ハプスブルグ家ではなく、大司教が統治する教会国家として繁栄してきたザルツブルク。旧市街をすっぽりと覆うホーエンザルツブルク城塞が印象的ですが、目を新市街へ移すと、そこには建築家たちの情熱がみなぎる前衛的な建築物が点在しています。それらのアート建築を牽引しているのが、レッドブル社の代表、ディートリッヒ・マテシッツ氏のコレクションのホームベース、ハンガー7(ハンガージーベン)。
スポーツや芸術、食などさまざまなことに挑戦し続け、ザルツブルクの情報発信基地として注目される空間をレポートします。
マニア垂涎、エクストリームスポーツとモダンアートの融合
設計から完成まで4年を費やしたモダンなデザインのハンガー7。 Photo:Red Bull Hangar-7
ザルツブルクの中心街より車で約15分。住宅街を抜けると国際空港に到着します。エナジードリンクの世界シェア1位を誇り、F1をはじめ、数々のエクストリームスポーツのスポンサーとして知られるレッドブル社が展開する「ハンガー7」は、空港の敷地内の飛行機格納庫(=ハンガー)が並ぶエリアにあります。「7」と名づけられたのは、1~6まで、空港管轄の格納庫があるため。「ハンガー7」もマテシッツ氏の飛行機コレクションの格納をきっかけに作られました。格納庫とは言っても、巨大なシューズボックスのような無機質なものとは別格。曲線を描く透明感あふれるドーム型の建築は、それだけで芸術作品の風格があります。
飛行機の片翼を表現したドームを成しているのは、1200トンの鉄鋼と、美しい曲線を表現するために作られたすべて形が異なる1754枚の特殊ガラス。設計から完成まで4年を費やした大作です。長さ100m以上ある広大な空間には、ダグラスDC-6B、B-25、アルファジェット、チャンス・ヴォートF4U-4など世界的に貴重な機体がずらり。そのすべてが定期的にメンテナンスされ、いつでも飛行可能。しかも、展示される飛行機は毎日変わるので、同じ展示風景に出会えることはないのだとか。そんな話を聞いている時も、1946年製の「ベル47G-3B-1」をクルーが外へ運び出し、さっそくスタンバイしていました。
ここにはフライングブルのチーム、30名の技術者と15名のパイロットが所属し、毎日のようにあらゆる飛行機が離着陸する様子を見ることができます。しかもその先には世界各国のジャンボ機の姿も。これはマニアでなくても心が浮き立ちます。
エポックメーキングと称される食スタイル
数々の音楽や芸術が生まれた華やかな歴史を持ち、感性が研ぎ澄まされているこの国の人々にとって、ジャンルを超えたさまざまな挑戦を続けるレッドブル社は次世代へと文化をつなぐ象徴のような存在。世界でも稀有な飛行機コレクション、若い芸術家への多大なるサポート、芸術と音楽を融合したイベント、栄養科学を導入した美しい料理の提案など、そのすべてが「ハンガー7」に集約しています。ここはさまざまな融合に触れることができる芸術の宝庫なのです。
1階にカフェ、2階はイカロス、そして3階に広がるのがメイデイ・バー Photo:Takayo Hirose
なかでも興味をそそられたのが食へのこだわり。「ハンガー7」には、4つの食空間があります。月替わりで世界中からシェフを招聘し、独創的なメニューを楽しめるレストラン「Ikarus(イカロス)」、飛行機を眺めながらのんびりとくつろげる「Carpe Diem lounge Cafe(カルペ・ディエム・ラウンジ・カフェ)」。陽が暮れると照明がともり、天空に浮かび上がるバー「Three sixty Bar(スリーシックスティ・バー)」。そして、イカロスのエグゼクティブシェフ、ローランド・トレットル氏とスイスの栄養科学者マリアンヌ・ボッタ女史とのコラボレーションで誕生した食スタイル、“スマートフード”を提案する「Mayday Bar(メイデイ・バー)」。
もともと有機栽培農業が盛んで、食事は時間をかけて過ごすライフスタイルが定着しているオーストリアでスローフードはごく普通のこと。だからこそ、ひとつのテーマに特化した栄養を手軽に、芸術性も加味して楽しくいただくスマートフードが今、人々の熱い視線を集めているのです。
ブレイン(脳)、ビューティ(美)、ムード(雰囲気)の3つのテーマからなるスマートフードは、前菜からデザートまですべてグラスでサーブされるのが特徴。季節の食材を中心に蕎麦や豆腐などの和の食材を積極的に取り入れ、色合いや盛り付けはアートのように。グラスに盛り付けられているので、フォークやスプーンだけで手軽に食べられるのも面白いところでしょう。
次の予定を考えながらメニューテーマを選び、目で料理を楽しみ、ひと口食べて感動したり驚いたり、どんな食材かで話が弾み、自分の体に興味が湧く――そんなゲームのように学びながら楽しむ食事こそ、五感に刺激を与えてくれるのかもしれません。
脳を活性化するブレインフード
毎日摂る食事の約4分の1が脳の働きを活性化する栄養素が含まれているものだとか。 その中でもクレソンなどのハーブに含まれるビタミンBや葉酸、マグロなどの魚に含まれるオメガ3脂肪酸は脳に大切な栄養素。ブレインフードには、集中力を高めて、脳の疲れを緩和し、エネルギーを充電できる食材が盛りだくさん。蕎麦とシチューの組み合わせなど、独創的ながらどこかほっとする味わいで満足度も高い。(3品+ドリンク $27。アラカルトあり)
アンチエイジング、肌や髪をつややかにするビューティフード
女性に限らず男性だって気になるのが肌の乾燥や髪のつや、しわなど。そんな悩みのために考え出された料理は、ポリフェノールやカルシウム、ビタミンAとEなどを含む野菜やベリー系のフルーツ、魚などを中心としたさっぱり味のメニュー。鮮やかな色の取り合わせは美的感覚も磨いてくれるよう。ブレインフードに比べて軽めなので、食欲のない時にもおすすめ。(3品+ドリンク $27。アラカルトあり)
心の元気の素、ドーパミンを生産するムードフード
日々の忙しさから感じるストレスや、落ち込んでしまうようなことがあった時にセレクトしたいのがムードフード。意欲がなくなったり、行動を起こすのさえ面倒に思えたりするのは、ドーパミンが減少しているからだといわれています。ドーパミンを生産する手助けとなるのが、アミノ酸。ハーブやスパイスなどを使い、アジアの香りに包まれたメニューの数々は気持ちまで穏やかになりそう。(3品+ドリンク $27。アラカルトあり)
アクセス
ザルツブルクへは、毎日運航しているオーストリア航空(www.austrian.com)でウイーン経由便を利用するのが最短で便利な方法。
成田からウイーンまではノンストップで約12時間。さらにザルツブルクまで約50分。
ビジネスクラスでは、プロのシェフの資格を持つ「フライングシェフ」が各便に乗務。シェフ自らサーブをしてくれることも! また、世界初、ウイーン風カフェサービスが登場。10種類もの本場のカフェの味を楽しめます。
Red Bull Hangar-7
Salzburg Airport,Wilhem-Spazier-Straβe
7A,A-5020 Salzbueg Austria
TEL:0043-0-662-2197
Hangar-7 Aircraft museum:9:00-22:00
Restaurant Ikarus:12:00-14:00,19:00-22:00
Carpe Diem
lounge Café:9:00-18:00
※ブレックファーストは9:00-11:30(土・日・祝日~14:00)
Mayday
Bar:日-木12:00-24:00、金・土12:00-01:00
※スマートフードは12:00-22:00
Threesixty
Bar:日-木19:00-24:00、金・土19:00-01:00
http://www.hangar-7.com/en
Text Takayo Hirose
Photo Masako Matsuoka
special thanks:Austrian National Tourist Office、Austrian Airlines
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