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Journey to Eastern Cape 1
憧れのビッグファイブに会いたい! 
南アフリカ、感動のサファリを旅する
INKWENKWEZI PRIVATE GAME RESERVE
PRANA LODGE PRIVATE BEACH ESTATE & SPA

残暑の厳しい9月下旬、東京を抜け出して、南アフリカの東ケープ州(イースタンケープ)に旅に出る──目的はもちろん、サファリをメインとした数々の冒険だ。春を迎え始めたイースタンケープは、少しひんやりした空気の中に、どこまでも青空が広がるサファリ日和だった。美しい山々に囲まれたこの地での冒険の日々を、3回に渡ってご紹介する。

空港到着から2時間でチーターと戯れる

チーターとヒョウの違いは目の周りの線。チーターには目元からあごに沿って黒いラインが入っている。
チンツァ谷(Cintsa Valley)にあるインクウェンクウェイズィ(コサ語で“星”の意味)へのアクセスは、イーストロンドン空港から車で40分。テントに泊まってサファリやハイキングなどが楽しめるほか、ウェディングや会議にも対応する。手ごろな価格も南アのサファリの魅力だ。

「ピーッ」。サファリガイドのヨハンが口笛を吹くと、茂みの奥から3匹のチーターが静かに現れた。すらりと伸びた長い四肢に、鞭のようにしなる尾。小さな頭をもたげて優雅に歩く様には、どんなスーパーモデルも勝てない自然の美が宿っている。本当に美しい。
「触っても大丈夫ですよ」。ヨハンが、あたかもゴールデンレトリバーでもいるかのようにチーターを撫でる。突如として野生に目覚めることはないのか? チーターをこれほど間近で見たことのない人間としては、恐る恐る手を伸ばしてみるのだが、そっと触るとビロードのような毛並みが艶々として気持ちがいい。思い切って首や鼻筋を撫でてみると目を細め、腹を見せながら前脚を折り曲げるではないか。目の縁(ふち)から口元には、涙のように流れる黒い線。まぎれもなくチーターだ。イーストロンドンの空港に降り立ち2時間で美しい動物と戯れる。東京から南アフリカまでの旅の疲れが飛ぶ瞬間だった。
イースタンケープは、南アフリカにある9つの州のひとつだ。西のケープタウン(西ケープ州)や東のダーバン(クワズール・ナタール州)ほど、日本で知られる街はないが、インド洋に面し山や森も多く、多様な生態系に恵まれたイーストロンドンは、冒険好きにはうってつけの地だ。成田から香港で乗り継いで、ヨハネスブルグまで約20時間。さらに国内線で1時間30分と、トランジットを含めれば丸一日以上かかるが、夜に成田を出発して朝にヨハネに到着するせいか、時差や体への負担は思ったよりも感じない。
さて、イースタンケープ第2の都市、イーストロンドンに到着して向かったのが、このチーターに会わせてくれた「インクウェンクウェイズィ(Inkwenkwezi)」という私営サファリだ。南アフリカのサファリには、広大な面積を誇るナショナルパーク(国立公園)と、ラグジュアリーなテントやロッジにステイして丁寧に案内してもらうプライベートゲームリザーブ(私営動物保護区)がある。私営でも国立公園並みに広いものもあるが、インクウェンクウェイズィは小規模クラス。それでも、4,000ヘクタール(東京ドーム855個分!)の敷地には、ナショナルパークに負けない40種類以上の哺乳類が放されている。何よりも、小ぢんまりしているおかげで動物に出会う確立が高い。

今回の旅はイーストロンドンに入ってポートエリザベスから帰った。イースタンケープの面積は約17万k㎡と、日本国土の半分に近い。夏だけでなく冬にも雨が降るため緑の多い州である。イーストロンドンはダイムラー社をはじめとする自動車関係の工場が多いことでも知られる。

ジェットコースター気分が味わえるゲームドライブ

オープンカーの12人乗りランドローバーでサファリに出掛ける。国立公園はバスで移動し、窓を開けたり外に出たりすることは禁止されているが、私営はかなり自由。ただし、自己責任が求められる。

トップ写真:砂埃をあげてブッシュの中を運転するヨハン。大型動物だけでなく、ヘビや植物など、さまざまに説明してくれた。

しばしチーターと遊んだあとは、いよいよ四輪駆動のオフロード車でゲームドライブに出発だ。「ゲーム」とは狩猟の対象となる動物のことで、車に乗って動物を探すことをゲームドライブという。目指すのは「ビッグファイブ」。ライオン、ヒョウ、ゾウ、サイ、バッファローはビッグファイブと呼ばれるサファリの目玉動物だ。これらを見つけることはなかなかできないだけに、すべてに出会えれば自慢できるというもの。今回の旅は3ヶ所でのサファリを予定しているので、「ひょっとしたら全部見られるかも」と秘かに期待していた。
今回取材に訪れたフリージャーナリストの私と、同乗したのはガイドのヨハ ンとアシスタント、そして日本から一緒にやってきたケン。最初、ケンと私は楽しく話しながら、横切るオーストリッチにシャッターを切っていたが、やがて車がブッシュの中に入ると無口になった。舌をかみそうなほど揺れるのだ。ビュンビュンと木の枝が幌に当たり、冷たい風と木の葉が顔をかすめていく。「カメラも自分も放り出されそうだ!すごいな!」。身体を10cmほど浮かせながら、嬉しそうにケンが口を開いた。深さ20cmの轍(わだち)を物ともせず、左右上下に大きく揺れるランドローバーは、さながらジェットコースター。谷を下るときの体感は「直滑降」なのである。
キキーッ――。
15分ほどして草原に出るとヨハンが急に車を止めた。遠くを指さすが、ブレーキによる砂煙で辺りは真っ白だ。やがてシマウマが見えてきた。「おっ」。すかさずカメラを向ける。シマウマの群れはジッとこちらを見ていたが距離があると分かると、しばらく草を食んで去っていった。十分に写真を撮ったのを見て、ヨハンはニコッと笑って再びエンジンをかける。この後も、猛々しいオグロヌー、すらりとしたブレスボック、国の動物にもなっているスプリングボックを見つける。動物が活動的になるのは早朝か夕方だから、午後3時のサファリではそんなに見られないと思っていた。でも今日はついているのかもしれない。

左:オーストリッチ(ダチョウ)は人間を乗せられるほどの大きさ。集団になるとなかなかの迫力だ。 中左:シマウマ。イースタンケープには、臀部の縞模様の太いケープヤマシマウマも生息するという。中右:ブレスボックは、アフリカ南部に生息するアンテロープ。顔の正面が白いのが特徴。 右:バッファローに似ているがこれはアフリカ中南部にいるオグロヌー。ヌーは草を求めて何百キロも移動する。

ホワイトライオンのファミリーに出会う!

以前はアフリカ全土に生息していたライオンだが、半分近くまで減ったという。南ア固有種のケープライオンも絶滅した。

やがてランドローバーは柵の前で止まった。ここから先にはライオンがいるのだ。自然の生態系にすべてを委ねる私営サファリもあれば、インクウェンクウェイズィのように肉食動物に餌を与えて監視するところもある。南アフリカに20年住む友人が「この国では、金持ちが裏庭で動物を飼って見せているんだよ」と冗談交じりで話していたのを思い出す。ここはグラハムとキースという二人の男が、高校を卒業して働きながら夢を叶えたサファリだが、ビーチや空港から近いというロケーションを考えれば、ライオンは管理すべきなのかもしれない。
「さあ、このエリアには16頭のライオンが生息しているぞ」。アシスタントは銃を用意してから2重のゲートを開けた。少し緊張する。静かに車を進めると、やがて寝そべる3つのファミリーに出くわした。なんと、世界に300頭しかいないといわれるホワイトライオンの姿もあるではないか! 隣の黄色いライオンと比べると驚くほど真っ白だ。じっとこちらを見つめる彼らに、車は2メートル手前までゆっくりと近づき、固唾を呑みながらシャッターを切った。「すげぇ」。その迫力にケンが小声を漏らす。「移動していいかい?」とヨハンは目で合図をすると、今度は反対側に車を回してくれた。違う角度で見られるのは嬉しかったが、うんざりしたのか、「まだ居る気?」とばかりに1頭のメスライオンが立ち上がってゆっくりと向かってきた。ヨハンはすかさず黙って車をバックさせたが、ライオンは睨みながらどんどん近づいてくる。エンジンを唸らせ、バキバキっとブッシュをなぎ倒して後退する人間チーム。飛び掛らないでくれ…。心臓の鼓動が早鐘を打ちながら、ゲートまで押し出されてしまった。メスライオンは踵を返して群れに戻っていく。ホッと胸を撫で下ろすケンとは対照的にヨハンは大きな笑顔。その顔は「楽しんだかい?」とでも言っているようだった。

神の使いともいわれるホワイトライオンは、色素遺伝子の欠損による変種ではなく、両親のDNAを受け継いで誕生する。
車に向かって近づいてきたメスライオン。餌を食べた後でもあり、威嚇のために寄ってきただけ。

初日でビッグファイブ達成

安全なゲートの外に戻ると、すぐにユニークな角を持ったアンテロープに出会った。さらに食事中のキリンの親子にも接近。「今日はたくさん見られるな」とヨハン。そして「これはついているぞ!」と車を止めた先にいたのはシロサイだった。ビッグファイブのひとつではないか! ゾウだろうが車だろうが、動く大きなモノに突進してくるサイには注意が必要だ。少し遠くに車を止め、息を殺してじっと眺める。ピンクがかったボディは艶々した岩のようで、少し眠そうに目をトロンとさせている。サイに気を取られていたが、ふと見ると、離れたところにはオグロヌーの群れが来ていた。こちらもすごい迫力だ。さらに、その奥をシマウマたちが駆け抜けていく。「まったく、なんて場所だろう」と思っていると、それを見透かしたようにヨハンが言った。「見つけられる日と、ぜんぜんダメな日があるんだが、今日は最高だよ!」。
陽が少し傾いてきた。無線で連絡を取っていたヨハンは「次はゾウを見に行こう」といい、「ほら、ゾウが通った後だよ」と倒された木々を指した。ブッシュを抜けて平地に出ると、3頭のゾウが待っていた。そう、まさに私たちを待っていたのである。傍らでは飼育係のスタッフたちが微笑む。ここではエレファントバックサファリもやっている。エレファントバックサファリとは、ゾウの背に乗って出掛けるサファリだ。車を降りて触ってみると、その皮膚は想像していたよりもずっと柔らかい。5cmはあるだろう長いまつげの目に見惚れてしまう。気付くと、夕日がまぶしくゾウたちを照らしていた。
「今日だけで、チーター、ライオン、ゾウ、サイと4つも見てしまったね」。帰路に着いたランドローバーに揺られながらケンに話しかけた。「これでバッファローがいたらビッグファイブが達成だよ」とケン。夕刻のせいか、スプリングボックやスタインボックが元気に駆けていく。とそのときヨハンが急ブレーキを踏んで叫んだ。「バッファローだ!」。移動するバッファローの黒い集団が遠くのブッシュの中に消えていった。「まったく今日はすごいな。君たちは本当にラッキーだよ!」

左:小型のアンテロープ、リードバックの一種と思われる。ガゼルやインパラなど、似たようなウシ科の動物は多い。 中:インクウェンクウェイズィ近くの沿岸部は、イーストロンドンコーストと呼ばれる自然保護区で、250km続く白浜の57%を保護する。海でミナミセミクジラを見ることができれば「ビッグシックス」だ! 右:南アフリカではサイの密猟が問題になっている。2010年に違法に殺された数は333頭で、記録をとり始めてから最悪との報告がある。
再び姿を現したオグロヌーの群れ。野生のヌーの大移動は有名で、150万頭集まって移動することもある。
ゾウに餌を与えるヨハン。鼻で餌をねだるしぐさはとても愛らしい。

ワイン片手にアフターサファリ

プラナロッジの中庭。隣にラウンジバーとレストランがあり、奥の林を抜けて海に出る。昨年オープンしたばかりで、日本人の宿泊客は稀。
家のように寛げるラウンジバー。ネット環境もある。

その日の18時、私たちはインド洋の風にあたりながらプールサイドで酒を楽しんでいた。腰掛けているのはベルギー、オーストラリア、ボツワナ、そして中国からやってきた今回の旅のメンバー。
「サファリはどうだった?」。オーストラリア人のニラーブが聞いてきたので、早速、撮った獲物の写真を披露する。「すごいじゃないか! サイもキリンも見れたのか? わお、ヌーまで?!」。既に昨日と今朝と2回サファリを楽しんでいだ彼らも、今日ほどは見ていなかったらしい。「撮れなかったけどバッファローもいたんだよ」。思わず得意げに答える。
今夜の宿は、インクウェンクウェイズィからイーストロンドンコーストという自然保護区の海岸沿いに北上した「プラナロッジ(Prana Lodge)」。5ツ星のコテージである。うっそうと茂る木々の中に、宝石の名前をつけたスイートが7つだけ点在し、部屋の前の小道は、バーラウンジやダイニング、プール、そしてプライベートビーチへと続く。今夜は貸し切りだ。「さあ、そろそろ中でお食事を」。オーナー夫妻に促され、暖炉の火がともったダイニングですばらしいディナーに舌鼓を打った。「日本からは何時間かかった?」「中国語で乾杯は何っていうの?」「今日はコーサ族の踊りを見たんだよ」。初対面でも、ケープタウンのおいしいワインのおかげで会話がはずむ。23時。現地コーディネーターのロブが「明日は6時に海から陽が昇るぞ」と告げてディナーは終わった。
翌朝、寒さに震えながら暗い林の小道を走っていくと、崖の目の前にインド洋が開けた。ロブのいった通り、まさに陽が登ろうとしている。赤く太陽に染まる海を見つめながら、この国に来てまだ24時間も経っていないと、気づく。それなのにビッグファイブを見て、こんなに美しい夜明けを堪能しているのだ。「きれいだよなぁ」。ボツワナから来たチャールズが後ろにいた。海がない国から来た彼の感動と興奮が伝わってくる。「ビーチにみんながいるよ。行こうぜ!」 私たちは一気に真っ白い砂丘を駆け下りた。旅はまだ始まったばかりだ。これからどんな冒険が待っているのだろう。そこにいる皆が、子供のようにワクワクしていた。

左:プライベートプール付きのコテージ「CITRINE SUITE(黄水晶スイート)」。室内には猫足の大きなバスタブがあり、屋外には野趣溢れるシャワーが。 中:ロッジからビーチに続く小道にはサマースカーレット・ワトソニアがたくさん咲いていた。 右:プライベートビーチに降りるにためには、急な砂丘を下るが、砂はサラサラして実に気持ちがいい。
プラナロッジはチンツァウェスト(Chintsa West )という沿岸にある。この周辺はイーストロンドンコースト自然保護区から外れる。
インド洋から昇る朝日。海を眺めながら読書を楽しんだりスパで癒されるのもいい。

Data

INKWENKWEZI PRIVATE GAME RESERVE
http://www.inkwenkwezi.com/
TEL. +27 (043) 734 3234
FAX. +27 (043) 734 3888
pgr@inkwenkwezi.co.za


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価格(一人一泊/2011年11月末まで)
ブッシュキャンプ:ZAR850
ヴァレイキャンプ:ZAE1,150

※含まれるもの:すべての食事/南アフリカのワインとビール(ワインリストは別料金)/ゲームドライブ/乗馬ツアー/4輪バイク探検/ハイキング/カヌー/ゾウとの触れ合い(餌やりなど)
※アクティビティにはすべてガイドが付きます
※3泊するゲストはエレファントバックサファリが無料
※3ツ星のゲストハウスもあります(ZAR200、宿泊のみ)
※価格は変更することがあります。12月以降を含めホームページ等でご確認ください
※ZARは南アフリカランド。1ZAR=約10円(2011年11月現在)

PRANA LODGE PRIVATE BEACH ESTATE & SPA
http://www.pranalodge.co.za/
TEL. +27 (043) 704 5100
FAX. +27 (043) 704 5119
info@pranalodge.co.za


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価格(一人一泊)
ハイシーズン(11-4月):ZAR1,800/ZAR2,050
ローシーズン(5-10月):ZAR1,550/ZAR1,800

※すべての食事が付きます
※シングルユースは別料金です
※ブライダル、ハネムーン、会議にも対応
※価格は変更することがあります。ホームページ等でご確認ください
※ZARは南アフリカランド。1ZAR=約10円(2011年11月現在)

Journey to Eastern Cape シリーズ1・2・3

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Travel

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