海を感じるサウンドを創り続けて
キマグレン KUREI & ISEKI
彼らの傍にはいつも海があった。
逗子で誕生した二人組のアーティスト「キマグレン」の音楽は、海を感じさせる。
活動5年目を迎える今年、その名も「ON THE BEACH」というタイトルのベストアルバムを発売。アルバムを聴いていると、そのまま、逗子の海辺に立っているかのような、爽やかな風を感じられる。
そんな彼らの原点は、夏の海の家ライブハウス「音霊 OTODAMA SEA STUDIO」(音霊)である。ライブハウスの運営を共に手掛けたKUREI(写真左)とISEKI(同右)は、その活動を通じて「キマグレン」として楽曲を発表するようになった。
そして、メジャーデビューした彼らは現在でも、アーティストとして、また、ライブハウスの運営者として二つの活動を続けている。
2012年の今年も、6月29日から9月2日まで、逗子の海に開かれた「音霊」には、キマグレン自らが選んだ海の似合う実力派のビッグアーティストたちが集結。連日のライブに多くのファンが足を運んでいる。
音楽という挑戦を続ける彼らに、話を聞いた。
ミュージシャンとして、運営者として二つの顔を持つこと
――「キマグレン」として多くのファンに愛されるアーティストであると同時に、音霊の運営者。この2つを両立させる上で大変なことは何ですか?
KUREI 音霊を始めた頃は、音楽活動をそこまで本格的にやっていたわけではないので、のんびりと楽しんでいました。しかし、いざメジャーデビューをしてみると、ものすごく忙しかった。ライブはもちろん、テレビ、ラジオ、取材などなど、忙しすぎて、一日に1時間しか眠れないなんていう日も普通にあったくらい。運営者という仕事も120%の力でやらなければならない。アーティストという仕事も120%でやらなければいい仕事はできない。その両方をやろうとすると、一人の人間ではどうしても難しいですよね。免疫がないデビュー初年は本当に大変でした。でも今は、力の抜き方が分かってきた。以前と変わらず、どちらも全力を尽くしているんだけど、無駄な動きがなくなって、楽しめるようになってきましたね。
ISEKI 僕も初年度に比べれば今は随分と慣れてきました。僕の場合はミュージシャンとして物を考える時と、運営者として物を考える時が全然違うスイッチが入るような感じです。ミュージシャンとしては先のことを見据えて考えたい。運営者としては、去年よりも多くのお客さんに来て欲しいと、すぐ目の前のことを考えたい。デビュー5年目を迎えて、このスイッチが上手に切り替わるようになってきましたね。KUREIとの役割分担も上手くいくようになりました。音霊の運営についてはKUREIが大枠を決める。そして細かい点を僕が決める。例えば、コンセプトを決めるのはKUREIだけど、参加してくれるミュージシャンたちが演奏しやすいように整えるのは僕。ミュージシャンとしては、僕が先に決めて行き、KUREIがパフォーマンスを支えてくれる。二人で協力し合うことで、どちらも楽しめるようになりました。
ISEKI 僕の場合は、自分の中に「ミュージシャン」スイッチと「海の家の運営者」スイッチがはっきりとできたみたいです。それを切り替えられるようになって、楽になってきましたね。
――この「音霊」を続けることによって得られるものは何でしょうか。
KUREI 例えば、アルバイトやスタッフたちとの出会いも貴重ですよね。アーティストとしての活動だけだと、どうしても出会う人が限られてしまう。でも、音霊の運営者として出会う人たちは、アーティストとは違うものの見方、考え方をしていて、「そんなことに興味があるんだ」「それが面白いんだ」と、新鮮な感動の連続です。アルバイトの子たちが恋をする瞬間を見てしまったりすると『お、これはいいぞ。ラブソングを作っちゃおうかな』なんて思ったり……(笑)。もちろん、両方をやることで楽しさも大変さもあると思います。でも僕の場合は、音楽と運営の両方をすることで、自分の中に丁度いいバランスがとれているんだと思います。
ISEKI アーティスト同士が触れ合うというのも、音霊で得られる貴重な体験です。色んな視点からものを見ることができる。それは音楽においても運営においても、すごくいいことだと思います。どちらの活動でも得られるものがそれぞれ違う。全てが繋がっていて、無駄なものなんて一つもないんです。たった一人で閉じこもって曲作りをするアーティストもいて、それはそれで正解だと思います。でも、人と触れ合うことによってできる曲もある。形なんて関係なくて、人それぞれ、どうやりたいかが大切なんだと思いますよ。
KUREI 音霊は8年目を迎えていますが、未だに“ルーティン”にはなりません。66日間、300組近いアーティストが参加してくれるこの大イベントは、常に挑戦の連続です。こんな風にキマグレンと音霊を両立して挑戦し続けられるのは本当に贅沢なことですよ。
被災地の子どもたちからパワーをもらったチャリティ
――昨2011年の3月11日におこった、東日本大震災。この震災の直後から、お二人は被災地の支援活動をしています。直後には公式モバイルサイト「キマグレン」でチャリティー待ち受けFLASHを配信。5月には地元の逗子でチャリティーコンサートを開催しました。また気仙沼の子供たちと共に歌った『笑顔の花』は、ACのCMとしても放送され、8月にはその気仙沼で「復興・復活ライブ」を開催してこられました。実際にいらしていかがだったでしょうか。
ISEKI 気仙沼にはとても複雑な気持ちで向かいました。実際に被災地の悲惨な現状を目の当たりにして、何と言っていいか分からなかった。でも、子どもたちがともかく元気で。僕らの方が癒されて、元気をもらっちゃいました。大人ってどうしても「明日の暮らしをどうしよう」とか考えてしまったりするので、前向きになりきれないところがある。子どもたちだって、もちろんすごく傷ついて、大変だと思うけれど、潜在的に前を向いて行くパワーを持っているんだと思いました。そんな彼らと触れ合う中で、「僕らができることってなんだろう」って考えたら、やっぱり、アーティストとしては歌を歌うこと。そして運営者としてはみんなが楽しいと思える空間やイベントを作っていくこと。今、自分ができることをしていこうという覚悟ができましたね。
KUREI 僕も、気仙沼では最初は何を言っていいか、何をしたらいいのかすごく悩みました。でも実際に行って子供たちに触れ合うとむしろパワーをもらえて、ありがとう!という気持ちになりましたね。
――幅広く活躍される「キマグレン」の2人。これまでにもたくさんの挑戦をしてきたと思いますが、この先に挑戦していきたいことを教えて下さい。
KUREI 今年はデビュー5年目という節目の年でもあります。7月にはベストアルバム「ON THE BEACH」も発売されて、秋には武道館ライブを開催します。ここでも僕らでなければできないことを表現していきたいですね。僕らのスタートはただの「海の家の兄ちゃん」だった。それがここまで来られたその軌跡を、感じてもらえたら嬉しいです。
ISEKI 僕らの曲は、夏や海をイメージさせると言ってくれる人もいます。僕ら自身も逗子の海で育ってきて、常に海を感じて暮らしてきました。今も逗子に住んで活動していますから、武道館にもその逗子の海を持ってくるような演出ができればいいですね。
KUREI そう。武道館でも、音霊と同じように、キマグレンじゃなきゃできないものに挑戦したい。例えば、武道館を「海」に見立てて、水着、ビーチサンダルOKのイベントにするとか。いろんなアイディアを出し合って、ファンの方たちと楽しめるライブにしていきたいですね。
ISEKI ぜひ、武道館で会いましょう!!
キマグレン
逗子育ちのISEKI(Vo.&G.)とKUREI(Vo.)の幼馴染2人組。2005年、逗子海岸で海の家ライブハウス(現「音霊 OTODAMA SEA STUDIO」)を立ち上げる中で結成。LOVE+LIFE+LOCALという3つの「L」をテーマに、多彩な音楽性をミックスしながらJ-POPを目指す。2008年、ユニバーサルシグマよりメジャー・デビュー。2ndシングル「LIFE」がCMに起用され、大ヒットに。今年、7月にベストアルバム「ON THE BEACH ~きまぐれBEST~」を発売。秋10月14日にはキマグレン LIVE at BUDOKAN 2012 ON THE BEACH~武道館を海にしよう!~を開催。
音霊 OTODAMA SEA STUDIO公式サイト
http://www.otodama-beach.com/2012/
キマグレン公式サイト
http://www.kimaguren.com/index.html
Text:Sayako Nagai
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