アイディアとは努力なしでは得られないものです。
アンリ・セドゥパロット社創業者/CEO
この秋、日本に初上陸を果たした、パロット社(仏)のAR.Drone(エイアール・ドローン)。これは、Wi-Fi通信を使って、飛行物体をiPhoneなどの端末の画面で 操作し、さらに画面上にバーチャルな画像を映し出し、現実とバーチャルが融合する、AR(拡張現実)ゲーム。すでに、さまざまなメディアで注目され、その姿をご覧になったという諸氏も多いだろう。さっそく来日中のパロット社CEOである、アンリ・セドゥ氏にインタビュー。AR.Droneに込めた熱き思いとその開発秘話などを聞いた。
――AR.Drone(エイアール・ドローン)を手にした時の反応は、日本とフランスでは違いましたか?
AR.Droneのコンセプトには、最新テクノロジーを使い、美しいプロダクトを作ることにありました。そして、AR.Droneで遊ぶ人々の姿も美しく見えることも重要視しました。そういう意味では、初めて手にとった時の驚きは国が違えど、日本もフランスも本質的に同じでした。
――アンリ社長はよく「イノベーション(技術革新)」という言葉を使われますが、既製品に新たな価値観を与えるイノベーションとは、じつは日本のお家芸でもあります。例えば、ウオークマンにしても、最近ではハイブリットのクルマもそうです。AR.Droneには、そうした日本人の好きなイノベーションの思想が内包されている気がします。
たとえば蓄音機は、19世紀初めに発明されたものですし、空を飛ぶ楽しみも20世紀の初頭にはすでに成功しています。つまり基本的な技術は、もはや先人たちによって達成されています。そう考えれば、現代のエンジニアやクリエイターの成すべき仕事は、既存のものを新しいものに変えていくことなのです。つねに再発明すること。その過程で、次の時代に繋がっていく、新しい何かが生まれてくるのだと思います。
――AR.Droneには、これまでの疑似体験ゲームにはない斬新な発想があります。開発までにどんな紆余曲折がありましたか?
我々は、Wi-Fiという技術に新たな未来を感じています。AR.Droneは、じつは子供たちがドライバーになりきれるゲームがあれば、という発想がもとになって生れました。確か開発当初はミニカーにカメラをつけた単純なものでした。でもそれが、ミニカーより空を飛ぶほうがもっと面白いだろうという話になって……。そしてAR.Droneを技術開発する途中で確信したことは、これは必然的にこれまでに見たこともないデザインになるだろうということです。例えば、飛行機なら鳥からイメージしたのだろうと分かりますけど、AR.Droneにはそういうデザインの元となる既成概念がない。つまり見たことのない空飛ぶロボットなんです。
――社長ご自身、こうしたアイディアはどんな時に生まれるのでしょうか?
それはもう、いろいろな場面ですね。ただ私の信念としては、アイディアとは努力しないと得られないものだと思っています。
――ところで、プライベートの話題として趣味などはありますか?
私は食べることが好きなので、よく友人を自宅に招いて、料理をして、もてなします。結局、手を使って何かをするのが好きな性分なのでしょう。作るのはもちろんフランス料理に限りますが。
――趣味と仕事、ともに通じ合うものがありそうですね。最後に、ファウストには少年のような心を持ち続けてる、ドリーマーたちが多くいます。アンリ氏にとっての、将来の夢を聞かせてください。
たくさんありますが、ここ数年で、うれしいことに徐々に夢が実現しつつあるんです。何を隠そう、このAR.Droneもそのひとつですから。でも、まだ実現してない夢を話すとすれば……。そうですね十数年前に、あるサイトのプロジェクトを始めました。グーグルがまだ小さな会社だった頃に考えたのですが、既存の美術絵画をサイトで観られるデジタル美術館というものを作りたいと思ったんですね。題して「ワールド ワイド ミュージアム」、略すとWWMという語呂もいいかなと(笑)。ただ、ほかにやるべきビジネスができてしまい、いまだに実現の見通しがたっていません。まあ将来の夢のひとつです。
まるで少年のような眼差しで語るアンリ氏。彼の目の前に広がるリノベーションの世界は、大きな夢と共に遥か先まで続いているようだ。
Henri Seydoux(アンリ・セドゥ)
パロット社創業者/CEO 1994年パロット社創業。ワイヤレス・ハンズフリーのカリスマと呼ばれ、十数年で世界のハンズフリーキット市場のトップ企業へと成長。テクノロジーとビジネスを独学で習得し、豊かな発想力で、次々にイノベーション(技術革新)によるヒット商品を開発。CEOとなった現在も、自ら新製品の設計図を引き、同社研究所に在籍する数百人の研究者を直接統括している。
AR.Drone公式サイト
www.ardrone.com
Text: Faust.A.G.
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