世界初! 南極点往復へと駆り立てる
冒険家コンビの熱きモチベーション
少年時代に思い描いた冒険の旅。
20年、30年後に、その夢を実際にやってのけることができる幸福な人間は、ごく僅かだ。
己を痛めつけるがごとく、苦境に立ち向かう冒険家はいったい、何を糧に旅に出るのだろうか。
2011年11月、前人未到の偉業を成し遂げるべく、過酷な旅へと踏み出す若きオーストラリア人冒険家がいる。“キャス”ことジェームス・キャストリッション(29歳)と、“ジョンジー”ことジャスティン・ジョーンズ(28歳)。
高校時代からの大親友という彼らは、一見すればどこにでもいる若者だが、冒険家としての経験値は十分、世界初のレコードももつスゴイ男たちなのだ。
その実績とは、’01年オーストラリア最長の川、マレー川全長2560kmをパドリングで制覇をしたのを皮切りに、’08年には、世界で初めてオーストラリア-ニュージーランド間3,318kmをカヤックでサポートなしに横断することに成功。いまや若き冒険家コンビとして、オーストラリアでは国民的な知名度を誇る存在となった。
その彼らが、今回挑むのは、南極大陸の端から南極点をサポートなしで往復するというもの。地球上最も過酷な環境といわれる南極を徒歩(スキー板装着)、しかも“往復する”というのは南極地観察が始まって100年、未だ誰も成功していないミッションだ。
サポートなしにこだわる彼らは、20kg以上の防寒具を身につけ、3か月分の食料などを積んだソリを引きながら歩くのだという。そのソリの重さは、なんと各160kg以上(!)というから驚きだ。-50℃という想像を絶するまでの極寒の環境では、瞬く間に熱が奪われるうえ、この重装備によって熱量の消費が凄まじいため、高カロリー食の効率的摂取がプロジェクトの成功、ひいては生死を分ける勝因ともなる。
氷上のクレバス、低体温症、凍傷と常に闘わなくてはならないという、この過酷な旅に2人を突き動かしたものについて、彼らはこう語る。
「オーストラリア-ニュージーランドのカヤックプロジェクトを成功させた後、次に何をしようかって考えていたんだけど、ロバート・ファルコン・スコットとロアール・アムンセン(20世紀初頭の南極探検家、後者は人類初の南極点到達者)を心からリスペクトしている僕らにとって、次の場所に南極を選んだのは自然な流れだったね。今回のプロジェクトが、彼らのアドベンチャーからちょうど100年目にあたるというのも感慨深いよ」
癌と闘うオーストラリアの若者たちを支援
しかも今回はただの踏破ではなく、社会的ミッションも背負ってのプロジェクト。
「僕らの近しい友人が癌を患い、それをきっかけに、癌と闘っている若者をサポートしたいと願うようになったんだ。それで、このチャレンジを通して、オーストラリアで癌と闘病中の若者をサポートするソニーファンデーションのチャリティプロジェクト『You Can』のファンドレイジングをすることに決めたんだよ」
見渡す限り白銀の氷の世界、そして危険とは常に隣り合わせ……、いくら過酷な旅を経験してきた2人でも恐怖はあるだろう。
「そりゃもちろん、怖いよ。でも、現在癌と闘っている人たちが耐えている痛みや恐怖を考えたら、僕らが乗り越えるべき恐怖なんてごくごく小さなものだよ。団結精神のもと、このプロジェクトのストーリーを人々とシェアすることで、若い癌患者に必要な治療資金を集め、困難に打ち勝つ勇気を人々に与えたいと思ってるんだ。」
体力づくりや環境への対応など、トレーニングは多岐に渡ったというが、160kgのソリを想定した重量タイヤを引きずるトレーニングが過酷だったとか。すでに南極入りし、入念なテストを重ねながら11月の出発に向けて士気を高めている2人。ちなみに、ジョンジーはコンタクトレンズが凍ることを懸念して、レーシック手術も受けたとか。
世紀のアドベンチャーは、もう目前に迫っている。ただの自己満足のためではなく、人々の希望を背負った彼らの成功を願わずにはいられない。
なお、この「Crossing the Ice」プロジェクトは、ソニーのモバイルHDスナップカメラ「Bloggie(ブロギー)」によって撮影され、すでに出発までの様子も“ウェビソード”形式で記録されているので、要チェック。飾らない姿で多くのファンを虜にしている2人の、南極冒険の詳細がわかるはずだ。
From Faust A.G. Channel on [YouTube]
Cas and Jonesy Crossing the Ice公式ホームページ
http://casandjonesy.com.au/
キャス&ジョンジーの挑戦を通して、このプロジェクトに賛同しスポンサーになるには、以下のページを参照!
http://donate.sonyfoundation.org.au/casandjonesy
Text: Yumi Komatsu
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