海洋汚染の現実を知るペットボトル大航海
ロスチャイルド家御曹司の冒険、続報!
ファウストA.G.が「ファウスト魂を感じる冒険家のひとり」として発足当初から大注目をしている人物、デイビッド メイヤー デ ロスチャイルド(David Mayer de Rothschild)氏。今回は、そんな彼がついに決行した冒険航海の経過報告です!
彼の冒険のコンセプトは、海、とりわけゴミ問題を中心とする環境問題の喚起。これは既に2009年4月16日のスモールトークのコーナーでもお伝えしたとおりですが、なんと言ってもユニークなのは、彼が駆る双胴船が1万2000本の使用済みペットボトルを再利用して作られていること。その名も「プラスティキ号」! 全長18mと外航船としては決して大きくはないこの船でアメリカ・サンフランシスコからオーストラリア・シドニーに至る太平洋横断航海を行い、廃棄物に対する問題提起とリサイクル運動の啓蒙を促すというもの。
そして、ついにそのプラスティキ号は、今年3月20日にサンフランシスコを出港し、まさに今、太平洋のど真ん中を航海の真っ最中なのです!
ロスチャイルド氏の冒険の背景には、地上に生活している我々が見過ごしがちな、重大な環境問題があります。世界の海の、海洋ゴミによる汚染は今や危機的な状況。海洋生物学者の調査によれば、太平洋上にはプラスチックゴミの汚染地域が多数あり、それらが周辺に生息しているウミガメやアザラシ、海鳥といった生物の命を奪い、サンゴ礁をも破壊しているというのです。
実際にロスチャイルド氏が駆るプラスティキ号は、サンフランシスコ出港直後、カリフォルニア沖で釣り針やおもちゃ、プラスチックの破片などの廃棄物が渦巻くエリアに遭遇したといいます。また、航海中の衛星インタビューに応じたロスチャイルド氏が、「毎日、海を漂うゴミに遭遇する。最初はクラゲかと思ったが実はポリ袋だった」と語ったことからも、海洋ゴミの被害が想像以上に深刻であることが伺えます。老舗時計メーカーIWCの協力を得て完成したプラスティキ号は、こうした問題海域を訪ねながら、ウェブサイトやブログなどを介して海洋汚染の厳しい現実をつぶさにレポートしています(その模様は公式サイトをチェック!)。
同船は今回の航海中に、 “太平洋ゴミベルト”と呼ばれる世界最大のゴミ集積地での調査も実施。これは各国で廃棄された大量のプラスチックゴミが最終的に集積する海域のことで、その面積は直径1600kmにも及び、東側部分だけでもテキサス州の2倍の面積があるといわれています。プラスティキ号はこれらの海域を巡りながら、GPSでゴミを見つけた場所を記録したり、寄港地のひとつであるライン諸島でサンゴ礁やサメの生態調査を行うなど、様々な手法によってかけがえのない海が直面している問題を浮き彫りにしています。さらに集積されたデータは、今後の海洋汚染問題への取り組みに大きく貢献することでしょう。
プラスチック再利用の
可能性も身をもって示す
また、ロスチャイルド氏の冒険は、使用済みプラスチックゴミの再利用の未来も見据えています。
「今回の航海は、物をいかにして再利用できるのか、その点に注目を集める意味も併せ持っている」
彼がそう語る通り、使用済みペットボトルやそれを用いた特殊加工素材を採用するプラスティキ号は今後、リサイクルプラスチックを商用船やサーフボード、あるいはクルマに再利用できる可能性を示す重要なケーススタディでもあります。しかも、プラスティキ号は航海を終えた後に解体され、緊急避難用シェルターや運搬用のプラスチックパレット、さらには衣類やペットボトルの原料として使われることになっている、という徹底ぶりです。
ロスチャイルド氏の冒険を「大金持ちの道楽」、と言い捨てるのは簡単です。
しかし、環境問題への対応が急務とされる昨今において、我々が憂慮すべき問題は二酸化炭素の排出量だけではありません。こうしている今も、人間が大量消費しているプラスチックゴミによってかけがえのない海が危機に晒されている……。そうした現実を私たちに気づかせてくれるロスチャイルド氏の冒険、そして今後の動向から目が離せません。
プラスティキ号
http://www.theplastiki.com/
IWC
Tel.03-3288-6359
http://www.jp.iwc.com/
Text:Takumi Endo(YUBUNSHA)
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