ダーウィンの意思を未来へ
“知の冒険者たち”の帆船大航海
生物学者といえば、生きとし生けるものの謎に果敢に挑む“知の冒険者”。そんなアカデミックな冒険者として歴史上、最も影響力を持った人物といえば誰を思い浮かべますか? 1859年11月24日に進化論を唱えたチャールズ・ダーウィンは、その代表格といえるのではないでしょうか。
著書「種の起源」のなかで“すべての生物は、共通の祖先から進化した”というかの有名な進化論を発表し、当時の常識を覆したダーウィンは、卓越した生物学者であり地質学者でした。そんな彼の主張を真実性の高いものとし、学者としての地位を確固たるものにしたのは、彼の論説が 1831年から 1836年までの5年間に渡って行われた海軍船ビーグル号での航海に裏づけられていたからといえます。
人類の生物に対する考え方を覆した「種の起源」の発表から150年目の年であり、ダーウィンの生誕200年を迎えた年でもある2009年9月、“ビーグル・プロジェクト”と名づけたプロジェクトが、オランダでスタートしました。その内容は、全長76メートル、3本マストの大型帆船「スタッド・アムステルダム」号で、ダーウィンが乗船したビーグル号と同じ道を辿るという、壮大なる海の冒険旅行。2010年4月25日には、およそ2万2000海里の旅を終えて無事、最後の目的地である南アフリカ・ケープタウンに到着しました。そして現在は、8月19日の帰還を目指し、アムステルダムへに向けて航海しています。
ダーウィンの意思を受け継ぐ
現代の“知の冒険者たち”
“ビーグル・プロジェクト“の発案者は、ドイツのテレビ局VPRO。目的は、「種」の進化を説くこととなった歴史的な航海を再現して、「種」の未来を明らかにすること。「スタッド・アムステルダム」号には、テレビクルーのほか、科学者や哲学者、歴史家、伝記作家ら総勢25人が乗りこみました。そして、アムステルダムからイギリス、スペイン、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ、ペルー、エクアドル、タヒチ、オーストラリア、モーリシャスを経由して、ケープタウンまでを航海する道程では、各都市の科学者たちも合流し、考古学、生物学、地質学、海洋学など、それぞれの研究を行ったとのこと。代表的な研究としては、世界5大陸での人間の臭覚能力、プランクトンの採集、海の塩分と温度の計測があげられ、タヒチやシドニーでは昆虫のなかで唯一、外洋に生息するというウミアメンボの生態調査も行われました。また、ケープタウン周辺では還流についての研究も実施されるなど、ダーウィンが残した功績をさらに進化させるべく現代の“ダーウィン”たちが奮闘したのです。
さらに、ダーウィンの玄孫にあたる生物学者のサラ・ダーウィンさんも招待を受けて乗船し、研究に参加。彼女は、祖先であるチャールズ・ダーウィンの発見と自分自身の発見を結びつけていきたい、という志を持って乗船したようです。航海自体は8月に終焉を迎えますが、7カ月にわたる航海の間に研究者たちによって採集された貴重なデータは今後、個々の学者たちによって分析され、生物学や環境問題への取り組みに生かされていきます。祖先の偉業を尊びながら過去と現在を結び、希望ある未来を守るためのひとつの契機にする――。そんな高い志に満ちた今回の航海によって導き出される成果から、今後も目が離せません。
Stad Amsterdam(スタッド・アムステルダム)
http://www.stadamsterdam.com/
Text:Chiaki Mitomi
photo:(c) VPRO_Beagle (Anthony Smith , Kris Tompkins, Cleo Ferreira, Kees Stoolwijk)
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