宇宙開発の一翼も担う冒険者
肉体のみ、成層圏からマッハのスカイダイブ!
偉大な冒険が、人間に本来備わる未知なるものへの探究心と身体能力の限界に挑戦する行為であることは、ファウストの皆様自身が最もよくご存知のことと存じます。
そしてその冒険が前人未到のものである場合、達成された記録や収集したデータは、文明の進化に大きな成果をもたらすという側面も持っています。例えば、英国の海軍士官であり、海洋探検家でもあったジェームス・クックは、ハワイ諸島や南極圏などへの大航海によって太平洋の正確な海図を作成し、後世の航海術の発展に貢献しましたが、長期間の航海に付き物だった壊血病の予防法の発見にも寄与したことは有名な話です。このように、ひとつの冒険が文明の発展に役立った事例をあげれば、枚挙にいとまがありません。
さる1月末、アメリカ・ニューヨークで記者会見を行い、人類で初めて肉体のみで成層圏からダイブする「レッドブル・ストラトス」なるプロジェクトの決行を発表したフェリックス・バウムガートナー氏の挑戦も、文明の進化に貴重な成果をもたらす可能性を秘めています。
この「レッドブル・ストラトス」とは、加圧されたスペーススーツに身を包んだフェリックス氏が、ヘリウム気球にくくり付けたカプセルで成層圏まで上昇し、そこから最高速度マッハ1超の猛スピードで自由落下するという驚愕のプロジェクトのこと。
宇宙空間に限りなく近い地点からのスカイダイビングは、1960年に米国空軍大佐のジョセフ・キッティンガー氏が高度約31,300kmからのダイブを成功させて以来、記録が更新されていなかったもので、今回のプロジェクトが成功した暁には、この記録を筆頭に4つの世界記録が樹立されます。さらには採取されたデータは世界中の科学者と研究者に無償で提供され、大気圏や宇宙空間における安全性の確保にさらなる進歩をもたらすと期待されています。フェリックス氏が記者会見に際して発表したコメントにも、そうした期待に対する強い決意が表れています。
「今後、宇宙開発が進むにつれて、宇宙飛行士が超高度で発生した緊急事態を回避する方法の確立が命題となるでしょう。しかし、人体が超音速の中でどのように推移するか、誰も正確に予測することはできません。私は人類未踏の今回のプロジェクトで、それを明らかにしたいと思います!」
チャレンジへと導くのは、“恐怖心”
これまで、成層圏近くからのスカイダイビングには、前述のキッティンガー元米国空軍大佐の記録達成以来、何人もの冒険者が挑んできましたが、あまりにも難易度が高いことから多くの冒険家が命を落としてきました。キッティンガー元大佐の体験談によれば、降下中に防護用の手袋が裂けた上、通常の2倍以上に手が腫れ上がってしまい、その激痛に耐えながらダイブを行ったとのことですから、その危険度は想像を絶するものがあります。
しかしながら、今回のプロジェクトでは、レッドブルの支援によって、この分野に精通したメディカルドクターや技術ディレクターを集結させた盤石なチーム体制が整えられ、経験者であるキッティンガー元大佐の全面協力も得られるとのこと。そして、プロジェクトの実行前には低高度からの試験降下が行われ、降下中には地上管制からフェリックス氏の位置や体制を監視し続けるなど、万全のサポート体制が用意されています。
フェリックス氏は、高い建造物や断崖からパラシュートで降下する“ベースジャンプ”の第一人者として知られる人物。また、2003年には世界で初めてスカイダイビング後に背中に付けた翼でドーバー海峡を横断するという快挙を成し遂げた実績があります。しかも、ニューヨークで行われた記者会見では、出席者から「今回の挑戦に恐怖感はないのか?」と質問されて、こんな頼もしい返答を返したのです。
「もちろん怖い。しかし、私はいつも恐怖を逆手にとって利用するんだ。集中するためにね」
Faust.A.G.は、そんなフェリックス氏の情熱的にして冷静な冒険者精神に心からの敬意を表し、今後も「レッドブル・ストラトス」の進捗をフォローしていく予定。
宇宙時代の未来を切り開く彼の偉大なるパイオニア精神に共感し、同時代を生きる人類のひとりとして、文字通り「命がけ」の彼のプロジェクトの成功を祈ろうではありませんか!
RED BULL STRATOS
http://www.redbullstratos.com
レッドブル公式サイト内 レッドブル・ストラトスのページ
http://www.redbull.com/cs/Satellite/en_INT/Sports/Red-Bull-Stratos/001242810637490
Text: Takumi Endo (YUBUNSHA)
Photos: (c)AP Images/Red Bull Photofiles
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