過去から現在、未来へ継承される
パテック フィリップが放つ新マスターピース
去る5月、競売大手クリスティーズのオークションで、とあるタイムピースがゴールドの腕時計としては史上最高額の約5億円で落札されたというニュースが報じられたことを覚えていますか? “腕時計のモナリザ”と評されるこの時計は、パテック フィリップの1943年製の18金永久カレンダーモデルでした。ちなみに、それまでの最高落札額は約4億8000万円で、これもパテック フィリップの1949年製ワールドタイム。さらに同社は、24の複雑機構を備えた懐中時計「グレーブス・ウォッチ」で、1100万米ドルという落札価格を記録したことも。このように数々のモデルが超高額で落札されてきたパテック フィリップが、またまた新たな金字塔を打ち立てたというわけです。まさに同社が、いかに価値ある時計を作り出してきたかの証と言えるでしょう。
パテック フィリップの歴史は、時計師のアントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとフランソワ・チャペックが1839年に創立したパテックチャペック社に始まりますが、その後、発明の天才ジャン-アンドリアン・フィリップとの出会いによって、社名をパテック フィリップと変え、時計を大きく進化させました。我々は時刻を合わせたりゼンマイを巻くときにリューズを回しますが、この機構を発明したのがジャン-アンドリアン・フィリップ。パテック フィリップは、その後の時計のスタンダードを作ったわけです。
当然ながら、その卓越した技術力と美的センスが融合した時計の評判は世界中に広がり、ヴィクトリア女王、ワーグナー、チャイコフスキー、フルトヴェングラー、トルストイ、プーシキン、キューリー夫人、アインシュタイン、ウォルト・ディズニー、クラーク・ゲーブルなど錚々たる面々が顧客に名を連ね、日本でも1867年に十五代将軍・徳川慶喜の弟・徳川昭武が購入したという記録が残されています。
名作のDNAを受け継ぐ新作で
過去と未来を繋いでいく
そんなパテック フィリップが、こうした輝かしい過去の実績に甘んじることなく、「カラトラバ」「ノーチラス」「ゴンドーロ」などの不朽の名作を次々と生み出し、ロングセラーを続けているのはご承知のとおり。その実直かつ不断の努力は、毎年のバーゼルワールドで発表される数々の新作を見れば明らかです。
今年も例年同様、数々の新作が発表されましたが、その中でも特筆すべきモデルといえば、冒頭のオークション最高額落札モデルが作られた1940~50年代のタイムピースからインスピレーションを得た「5170」です。往時の佇まいを受け継ぐ品格ある顔立ちに、最先端の革新機構を秘めたタイムピースは、すでにマスターピースとの呼び声高く、注目作がひしめくバーゼル会場においても来場者たちの話題を独占しました。ラウンド型の名作「カラトラバ」を思わせるクラシックなケースの内側には、6つの技術特許を持つ完全自社開発・製造の最新クロノグラフムーブメント“キャリバーCH 29-535 PS”を搭載。その上で、18金イエローゴールドケースの文字盤には同じく18金イエローゴールドのインデックス、文字盤の外周には“脈拍15回測定用目盛”と記されたパルスメーター目盛をあしらうなど、優雅さと実用性を兼備した仕上がりになっています。さらに、文字盤上部に記された社名との完璧な均衡を考慮して、30分計、スモールセコンドのインダイヤルの位置を調整するなど、細部のディテールからも機械式時計の頂点に君臨する同社のエレガンスと視認性に対するこだわりが伝わってきます。
パテック フィリップの時計は“親から子へ、代々受け継がれるもの”というコンセプトで作られているといいます。歴史的名作の様式美を受け継いだケースに、現代を物語る最新ムーブメントを搭載した「5170」は文字通り、過去と現在を繋ぐタイムピースといえるでしょう。そしていつの日か、この時計を未来を託す者に継承することによって、1本の時計に凝縮された価値が連綿と受け継がれていくことになります。過去・現在・未来に渡って、人と人、時代と時代を繋げていく……。「5170」は、そんな壮大な歴史物語をつづる可能性を秘めた数少ない時計のひとつなのです。
スフィア パテック フィリップ ギャラリー
住所/東京都港区南青山5-16-14 Mont. Bleu Bldg 1F
電話/03-5468-1188
営業時間/11:00~20:00(日祝~19:00)
http://www.pp-sphere.com
Text:Hideo Sakamaki(YUBUNSHA)
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