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Vol.3
鈴鹿を駆け抜けたソーラーカーチーム篠塚
チャレンジ初戦で見えたもの

ラリードライバー篠塚建次郎が今年結成した「ソーラーカーレースチーム篠塚 は、太陽光を動力とするクルマの普及を実現すべく、挑戦を続けている。今回のレポートはチーム初戦となった「ソーラーカーレース鈴鹿2012」の模様だ。

世界で最も地球に優しいカーレースと呼ばれるソーラーカーレースは、昨今より注目度を増している。8月3~4日、ソーラーカーレースの国際試合「ソーラーカーレース鈴鹿2012」が鈴鹿サーキットで開催された。チーム篠塚が出場したのは、FIA認定のオリンピアクラスだ。2008年から新設された、世界共通のソーラーカーカテゴリーで、安全性と安定した走行を目的とし、4輪のマシンでの出場が条件となる。今大会では10チームがエントリー。4日の本戦ではより高性能の3輪車両で挑むドリームクラス、パネル出力が800Wに制限されるチャレンジクラスと混走し、5時間耐久でラップ数を競った。

本戦の前日は公式車検とフリー走行が行なわれた。オリンピアクラスの車両は、公道での走行を視野に入れた規格となり、ヘッドライト、テールランプ、方向指示機、サイドミラーの装備が必要となる。チーム篠塚のマシンは、サイドミラーの角度の調整を求められたが、その後無事車検をクリア。予選を兼ねたフリー走行では、ドライバーの篠塚、堀主知ロバート、大嶋建一がそれぞれ2周走り、クラス5位。決勝レースは17番グリッドでのスタートとなった。だが、このときバッテリーに不具合があることがわかった。

予選の走りについて篠塚は「オリンピアクラスモデルのこのマシンは、パネルを張り替えて今回が初めての走りだったが、どのくらいのペースで走れば効率が良いか掴めたと思う。バッテリーの不具合については、すでに調整に入っているので、明日には間に合うだろう」。ただ予想していなかったことが判明した。昨年度優勝チームである、芦屋大学ソーラーカープロジェクトが、他の国際大会では装着面積が3㎡に制限されている化合物半導体を素材とするソーラーパネルを実装してレースに臨んでいたのだ。レギュレーションの盲点だった(*今大会では化合物半導体ソーラーパネルの装着面積制限はその他のソーラーパネルと同等の6㎡とされている)。
篠塚は静かに分析を続ける。「スピードで争うのは不可能だ。ただ我々は自分たちのクルマを信じ、明日もベストを尽くすだけ」。思わぬアクシデントや予想外の状況が起こっても篠塚は冷静だ。レースにはアクシデントや急な状況の変化はつきものであることを彼は知っている。そしてその逆境をも力に変えることができるドライバーであることに違いはない。

本戦スタート、雲行きの怪しい空の下
チーム篠塚のレースの行方は

4日の本戦当日の朝は、青空が広がっていたのだが……。
本戦がスタート!

本戦当日の朝は前日と同じくよく晴れた。太陽光を受けバッテリーを十分チャージしたチーム篠塚のマシンは、順調なレースが期待された。走行順は、篠塚、堀、大嶋。チーム篠塚の作戦は、5時間を走りきるため、序盤はなるべくマシンに負担をかけないよう我慢の走りを保ち、最後にラストスパートをかけるというものだった。
太陽が頭上に昇った12時、5時間の耐久レースがスタートした。第一走の篠塚は平均約6分30秒のラップタイムでレースを進めた。だが、スタートして約30分後、鈴鹿の空を厚い雲が覆い始めてきた。太陽光が思うようにパネルに届かない。篠塚はさらにスピードを落とすことを余儀なくされた。しかし先頭の芦屋大学は4分後半〜5分前半で走行を続け、差を大きくつけられる。しかも、赤石崇・チームマネージャーはマシンに異変を感じたという。ソーラーパワーが正しく変換されているサインが出ないのだ。レースは2時間が経過した頃、ピットに入り、奥の屋外でソーラーパワーの変換状況をチェックする。この作業によりさらに5分のロスがチームにのしかかる。このピットインで、第2走の堀がマシンに乗り込む。ただリバースモードでピットインしたこのときに何らかの理由で制御装置が働いてしまい、一周目が加速することができず、さらにロスが加わってしまった。二周目以降は制御装置は正常に戻したものの、一周7分台の我慢の走りを続けた。

中段左:2時間を走り終えたマシンをピット奥に入れ、太陽光の変換状況をチェックする。中段右:セカンドドライバー、堀に交代。サードドライバー兼エンジニアの大嶋とエンジニアの塩川祐樹と言葉を交わす。

残り2時間を残して、ここからチーム篠塚がラストスパートを開始。第3走は南アフリカのレースにも参戦するドライバー兼エンジニアの大嶋が担当。これまでパワーを温存したマシンで猛追。この時点で8位だったチーム篠塚は、バッテリーが減り徐々に遅れ始めた他のチームをしのぎ、一気に順位をあげていった。チームは42周を走り抜き、オリンピアクラス3位でゴールした。1位の芦屋大学ソーラーカープロジェクトは55周、2位の金沢工業大学 夢考房は44周という結果だった。

優勝は逃したものの見事に入賞。最後は笑顔で表彰台に。

入賞は死守したものの、レース直後のチームメンバーの表情には残念ながら笑顔は見られなかった。チームメンバーは「悔しい。もっと上を目指せたはずなのに」と静かに悔しさをにじませた。Faust Racing Teamを率い、スーパー耐久シリーズでも戦う堀にとって初のソーラーカーレース参戦となったが、「普段の走りとはまるで逆で新鮮でした。遅い車特有の、ロスを絶対しないラインで走らなければならず、ブレーキングやアクセルワークなどは普段より繊細に、そして集中が必要でした。またゆっくりした速度で走るのでコース上の普段気付かない微妙な勾配やアンジュレーション、アスファルトの違いなどに目が行く余裕があり、普段のレースで生かせる走りのヒントも得られました。データロガーとラップタイムをつき合わせながら分析をしたらエネルギー効率と走行ライン、走行タイムの相関性についてさらに理解が深まり、よりよい結果が出すための経験になったと思っています」。 篠塚は今大会をこう振り返る。「勝負は何が起こるかわからない。だからこそ挑戦する意味がある。目標の優勝には届かなかったが、今日のレースからチームが学んだことはたくさんある。自分たちのマシンでできる最大限の努力はしたと思う。

トップでゴールするためには何が必要だったか。それはチームメンバー一人ひとり、痛いほど感じていたはずだ。この経験は、9月18日から南アフリカのプレトリアでスタートする「Sasol Solar Challenge South Africa 2012」に必ず活かされることだろう。レースが終わった後、彼らの清々しい笑顔が見られることを楽しみにしたい。

 

 

Data

ソーラーカーチーム篠塚 公式サイト
http://www.solar-shinozuka.jp/

ソーラーカーレース鈴鹿公式サイト
http://www.suzukacircuit.jp/solarcar_s/

スケジュール

ソーラーカーレース鈴鹿2012
開催日:8月3日(金)車検・フリー走行、4日(土)決勝レース(5時間耐久)
開催地:鈴鹿サーキット/フルコース

サソル・ソーラーチャレンジ・サウスアフリカ
(南アフリカ・ソーラー・チャレンジが大会名称を変更)
開催日:9月18日(日)~28日(金)
開催地:南アフリカ/プレトリア~ヨハネスブルグ~ケープタウン~ダーバン~プレトリア
http://www.solarchallenge.org.za/

ギネススピード記録チャレンジ
開催日:10月1日(日)か2日(月)(南アフリカ・ソーラー・チャレンジに続け て)
開催地:南アフリカ

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