パ-ルオ-プン本大会への道
23の椅子を巡る戦い
2月8日、パ-ルハ-バ-の潮風の香が漂うパ-ルカントリ-クラブで第32回パ-ルオ-プンの予選ラウンドが開催された。
パ-ルオ-プンは、1979年、ホンダの創設者である本田宗一郎が地元密着型の大会として発案し、プロ、アマチュアが一同に会するロ-カル大会としてスタ-トした。08年には石川遼、09年には金田久美子らが参戦するなど、若手の登龍門的な大会としても認知されている。
浅野則之、井上盛夫、ヒロ鈴木という3人のファウストの挑戦は、このト-ナメントの予選を突破することである。
第32回大会となる今回、予選参加者は112名。浅野、井上、そして残念ながら今年は欠場となった西林基樹が挑んだ昨年は65名だったため、ほぼ2倍に増えたことになる。そのキッカケになったのが大会のウエブサイトだ。内容が一新され、日本語サイト創設を始めとし世界に幅広く告知されたため、参加者が一気に膨れ上がったのである。アジア、カナダ、アメリカ本土などから実力ある選手が集まり、レベルはロ-カルト-ナメントの域を越えたものになった。本戦出場枠は23名と、昨年の26名より3名減り、カットラインもイ-ブンパ-の72前後と予想された。ファウスト3人が挑む予選ラウンドは、空前の激戦となったのである。
言い訳の利かないベストコンディション
「今日は、実力勝負になるね」
彼らの師匠であり、テクニカルサポ-トをするマ-ク川島は、厳しい表情で、そう言った。昨年は、天候が大荒れし、雨、強い北風、濡れた芝との戦いになり、3人はラフなコンディションに苦しめられた。だが、今回は予選ラウンドではめずらしく快晴となり、気温がグングンと上がっていく。午前8時には、気温25度になり、無風の中、刺すような日差しがグリ-ンを照らしている。
「レベルが高いし、けっこう緊張もすると思う。この暑さの中、どれだけ集中力を維持できるかでしょう」
コンディションは、彼らが過去2回挑戦してきた中で、最もいい。自然環境に左右されない状況で、自分の本当の実力が試される予選ラウンドになりそうだ。
8時48分、最初にスタ-トする鈴木がカ-トに乗り込んだ。つづいて井上、浅野と全員アウトからのスタ-トになる。
今回は、4人ひと組でラウンドし、カ-トはペアを組んで移動する。相手のプレ-にも関わってくるので、上手くコミュニケ-ションを取りながら、どれだけ自分のペ-スでやれるかということは、好スコアを出すために重要な要素になってくる。 鈴木は、パ-トナ-のバリ-・シェンク(4アンダーの68で周り2位通過となる実力者)と挨拶を交わし、1番ホ-ルに立った。1度、2度、軽く素振りをしてフェアウェイを確認し、ボ-ルをセットアップする。刹那、乾いた金属音が響き、真っ白なボ-ルが青空を切り裂いた。予選ラウンド突破の戦いの幕が切って落とされた。
明暗を分けたパッティング
鈴木は、今回、初めて予選会に挑戦した。予選3日ほど前にハワイ入りしたが、真っ先に向かったのはノ-スショアだった。もう一つの趣味であるサーフィンで、旅の疲労と出発直前に起きたトラブルのストレスを解消すべく海に入ったのである。
それでリフレッシュできた鈴木は、予選前日の練習ラウンドでは、最後のバック9を2オーバーで仕上げ、予選突破の期待を抱かせてくれた。
ハワイ好きで、少なくとも年に一ヶ月ぐらいは滞在するという鈴木は、ファッション、音楽関係のエージェント、企画制作会社等を経営する、実業家である。ゴルフを始めたのは、ニューヨーク在住時代の25年ぐらい前。アメリカンスタイル(セルフ、カート、スルー)のプレーをこよなく愛す、アスリートゴルフファーである。
「僕の中でのゴルフは本当にスポーツで、何歳になっても距離にはこだわりたいんだよね。飛ばすためのスイング、フィジカルも追求したいし、シャフト、ボール等のエクイップメントも研究したら、夜もろくに寝れないんですよ(笑)。7番アイアンで170ヤードは飛ばないとPGAでは戦えないのかな~?とか、まるで関係ないのになぜか自分もそういうセッティングにならないといやで、トレーニングしたり、シャフト変えたり大変なんです。今回、初めての挑戦になるけど、パ-ルカントリークラブはもう10年以上プレ-しているので、コ-スはよく知っているし楽しみです」
前日の調子が良かったせいか、スタ-ト前は笑みもこぼれていた。1番ホール パー5、ティーショットは、わずかに左ラフに入るが、距離は同組のバリー、190cmの選手たちに引けをとらない。セカンドをグリーンエッジまで運ぶが、バーディーパットをはずしパー。5番のパ-5ではバ-ディを奪って、テンションも上がった。だが、パッティングの調子が上がらない。
「アウトでは7番、8番のグリ-ンが難しい」というマ-クの言葉通り苦労し、「入らない」と、表情を曇らせた。この後のパッティングが、調子の良かったティ-ショットに大きな影響を与えていくことになる。
「俺、雨男やったんやけどね」
晴れた空を見上げた井上は、そう言って笑い、スタ-トした。
井上は、レストラン事業や商業施設の総合プロデュ-スを行なうソルト・コンソ-シアムの代表取締役。ゴルフは、高校生の頃、宝塚にあるゴルフ場に友人と勝手に入り込んで遊んだのがキッカケでスタ-トし、5年前にマ-クと出会ってから真剣に向き合うようになった。
昨年惨敗した悔しさが忘れられず、あれから年間70ラウンド近く回り、腕を磨いた。大会5日前にハワイに入って調整をつづけ、試合前日には入念なマッサ-ジをするなど体のケアにも力を入れた。
「2年連続で予選落ちして、やっぱり悔しい気持ちがあったんでね。この1年間はそこそこ練習もしたし、楽しく過ごせた。あとは、本番だけ。昨年は、自分がヘタくそなんで早く打たなあかんとか、なんか相手に必要以上に気を使って、あまり集中できんかった。今年は、あまり相手のことは気にせんと自分のことに集中してやります」
井上は、1番から集中していた。
ショット、アプロ-チとも好調で、さっそくバ-ディ-を狙える位置につけた。だが、ラインを読みすぎてしまいパ-に終わった。「詰めが甘いねんなぁ。あそこでバ-ディ-を取るのと取らないのとでは、気分的にもだいぶ違うんやけど……」
一瞬、落ち込んだが、気持ちを切り替えるのが早いのが井上の持味である。その後も我慢のゴルフがつづいたが、「鬼門」という7番でトリプルボギ-、8番でOBを出すなど大きく躓いた。「そこで1回、気持ちが切れそうになった」という井上だが、パッティングで盛り返し、アウトはなんとか昨年並みのスコアで折り返した。
「前回よりはいいね。パッティングの調子がまずまずなんで、後半いけるかなって思うけど、どうやろ」
井上は、ニヤリと笑い、インでの巻返しを誓った。
浅野は、井上とともに今回3度目の挑戦となる。今までで最も予選突破の手応えを感じて、この日を迎えた。
「昨年の秋からちょっと調子を落としていたんです。右脇が開いて、軸がブレてしまっていたんですよ。それを修正しつつ、ドライバ-を変えたりして、最近ようやく調子が上がってきた。やや上向きの状態でハワイに入ったんですけど、練習ラウンドも悪くなかったので、これはいけるかなと。過去2大会よりは、かなり自信を持って、試合に挑めました」
ファッション・プロデュ-サ-である浅野は、41年前にゴルフを始め、3人の中では一番スコアも安定している。距離にこだわりを持ち、ドライバ-には自信がある。この日のティ-ショットも安定し、ミスかと思えたのは4番ホ-ルだけで、あとはほぼ完璧に近い状態だった。5番ではバ-ディ-を取り、「さらにドライバ-が良くなった」と、調子を上げ、昨年同様、予選突破の可能性を一番感じさせてくれた。
しかし、気になることもあった。
「セカンドが安定しない。パ-ルカントリークラブでいいスコアを出すためには、芝の目がきついセカンドショットが鍵を握る。ここで乱れたら予選突破はおぼつかない」
6番以降、浅野は、鍵を握るセカンドショットを整えるのに苦しんだ。井上同様、「鬼門」という7番では、珍しくティ-ショットでミスするなど、「全然ダメ。やばい」と、表情をしかめ、珍しく弱気な発言も出た。
「あの7番さえなければね……」
呻くようにそう言った後、浅野は、悔しそうにアウトに向かった。
鬼門の7番
井上と浅野が「鬼門」と恐れる7番ホ-ルとは、どういうコ-スなのか。
マ-クは、言う。
「7番は、打ち下ろしで短いパ-4ですけど、ドライバ-で狙った場合、左右に流れてOBになりやすいんですよ。だから、ティ-ショットがすごく重要になってくるんですが、右に流れていくとセカンドがさらに難しくなる。だから、5番アイアンで狙って、残り130ヤ-ドぐらいをショ-トアイアンでピンを狙った方がいいスコアが出るんです。でも、多くの人はドライバ-で狙う。そこで、堅実な選択ができるかどうか、冷静な判断ができるかどうか問われるホ-ルです」
井上は、パッテイングで苦しみ、その悪い流れを引きずったまま8番でOBというトラブルを喰らった。浅野は右に流れてセカンドに苦しみ、余計に打ち込んだ。
二人にとっては、まさに「鬼門」そのものだった。それが、スコアに如実に表れていた。
イ-ジ-ミスの怖さ
鈴木は、イン10番、ドライバーを大きく右に曲げダブルボギーのスタート。11番でバーディーを奪って挽回を試みるも、12番で悪夢が襲った。なんと痛恨の5パット。「パールのグリーンはヤバいね」と肩を落とす。これで動揺したのか、続く13番のショ-トホ-ルでは、4番アイアンを大きく右に曲げ、そこからはスイングのリズムを完全に崩し、「上がってくるので精一杯だったよ」とトーナメントの厳しさを語った。ギャラリーの囲む18番、残り155ヤードのセカンドを、ピンハイ2.5mに付けて有終の美を飾るのが精一杯だった。
井上は、インに入るとショットやパッティングに手応えを感じていた。
「何を今さらと思うけど、3回目の挑戦にして、ようやく芝と分かり合えた感じがする。ここのグリーンは根がパ-ルハ-バ-に向かって生えて、風で逆目になっているんだけど、そのことを今まですごく気にしていた。でも、意外と切れないし、素直に打っていけば入る。そのことに途中で気が付いたんです」
10番こそややつまずいたが、その後は楽しみながらも攻めのゴルフで、ロングパットを決めるなど我慢のゴルフを展開し、昨年の大崩れはなかった。17番ではバ-ディ-を取り損ねたがパ-でセ-ブし、ラスト18番では会心のティ-ショットを見せて、インの30台は確信した。予選突破は厳しいが、昨年にはなかった手応えを感じられた。そう思った瞬間、最後に大きなミスが出た。
「ティーショットであれだけ飛んでいけると思ったのに、セカンドでバンカ-に入れて……。まぁバンカ-に入れること自体おかしいけど、目玉(ボールが砂の中にもぐりこんで目玉状態になること)をやって、ガツ-ンと打ったらグリ-ンを通り越してしまった。そこでブチブチとキレてしまったね。こんなミスしていたら永遠に予選突破なんかできない。だから、思ったよ。来年の課題は、そういう凡ミスをなくすこと。もう、それに尽きるね」
18番を終えた後、昨年のように笑顔で「楽しかった」という言葉は出てこなかった。犯した多くのミスは、防げる範囲内のミスだった。腑甲斐ない自分に苛立ち、同時に悔しさが募ったのだろう。だが、スコアカ-ドを提出し、カ-トを降りた井上の表情には、いつもの笑顔が戻っていた。
「悔しいけど、やっぱり楽しかったよ」
そのままゴルフバッグを肩に掛け、クラブハウスに入っていった。その背中は、どことなく寂し気で、まだ18番のミスを悔やんでいるように見えた。
浅野は、インに入ると10番、11番、12番とパ-で凌いでいた。
「ドライバ-の調子が良かったんで、これをキ-プしていれば、なんとか後半、盛り返すことができるかなって思っていた」
しかし、13番のショ-トホ-ル、浅野はセカンドショットをトップしてしまった。上体が伸びてボ-ルの頭を叩き、完全なミスショット。体を仰け反るようにして、悔しがる。天を仰いだ表情からは、苛立つ声が聞こえてきそうだった。
「そこからセカンドが、また安定しなくなってしまったんです」
前半もそうだが、浅野が一番気にしていたのはセカンドショットだった。それが予選突破の生命線だと考えていた。それだけに、セカンドが崩れてしまうことは、彼のゴルフにとっては致命傷だった。
18番の最終ホ-ルを迎えても浅野の表情は、晴れなかった。
「とにかくセカンドがおかしかった。13番、残り90ヤ-ドっていうところでトップしたり、なんかイ-ジ-ミスばっかりだったからね。ドライバ-やパッティングは調子が良かったし、快晴でコンディションも良かっただけに、すごく悔しい。70台で回れる自信があったんで、この90台っていうのは本当にショックです。ただ、今回、苦しんだおかげでパ-ルハ-バ-をどうやって攻めればいいのか、わかってきた。これを生かすために、来年、また戻ってきて、必ず予選をクリア-しますよ」
浅野は、日焼けした顔に来年への決意を秘め、そう宣言した。
勝敗を分けた紙一重の差
クラブハウスのスコアボ-ド前は、自分のスコアと当落を確認する選手やその家族、関係者でごった返していた。最高スコアは68、カットラインは74だった。「思った以上にレベルが高く、かなり厳しかったね」と、マ-クは言った。
初めての挑戦となった鈴木も言う。
「今回は、すごくいい経験になりました。同組で周り予選2位になったバリ-を見ていると70%ぐらいでプレイしてる気がして・・・。ミスの範囲も想定できるんだよね。ラウンド通してミスのない、もっと言うと、プロは4日間通してできることをやるんだろうなって、あらためて感心します。日本で練習して、また、ここに戻ってきます」
3人は、これから1年間、予選突破を果たすために地道な練習を続け、いろいろなものを積み重ねて、ここに戻ってくるだろう。
だが、予選突破の壁は年々、高くなり、来年はさらに厳しい戦いが予想される。実力伯仲の激戦の中、予選突破の決め手となるのは、勝つためにどれだけ多くのことにこだわれるか。勝利の女神は、不屈の心で、確実にチャンスを掴む者にのみ微笑む。
「紙一重の差を来年は、突き破りたいね」
鈴木の言葉に井上も静かに首肯いた。
ハワイのゴルフはやはりアメリカン・カジュアルで!
プレイをサポートした「RLX」と「ポロ ゴルフ」
パールオープン予選ラウンドに挑んだファウストの面々がウェアにチョイスしたのが、クラシックなアメリカン・ラグジュアリーを代表するブランド「ラルフ ローレン」だ。
そのゴルフライン「ポロ ゴルフ」と、ハイエンドなスポーツライン「RLX(アールエルエックス)」から、3人は好みのポロシャツをそれぞれ着用。パールオープンというハワイのトーナメントに対し、アメリカン・カジュアルを身にまとって、予選ラウンドに挑戦した。
ご存知「ラルフ ローレン」は、1939年、ニューヨークに生まれたラルフ・ローレン氏が創業し、2007年に創立40周年を迎えた、アメリカン・トラディショナルの代表ブランド。シグネチャーラインの「ラルフ ローレン」と同様、英国調を取り入れた“アメリカン・ブリティッシュ”の精神を共有する「ポロ ゴルフ」「RLX」は、英国発祥の紳士のスポーツとされるゴルフに、プロに混じって真っ向勝負するファウストにとって、ふさわしいアイテムだ。
ストレッチの利いた通気性ある生地は肌触りもなめらかで、ゴルフに最適。ファウストの快適なプレイをサポートしてくれた。特に「RLX」は、ラルフローレン(RL)の「X=エクストリーム」ラインを意味しており、現代の男の冒険にうってつけのラインなのだ。
ファウストの冒険の傍らには必ず、そのマインドを共有する相棒が寄り添っている。
問 ポロ ラルフ ローレン ジャパン Tel.03-5412-8700
パールカントリークラブ
ホノルル空港から車で約20分。目前にパールハーバーが広がり、西側にはワイアナエ山脈が広がる美しいコース。毎年2月に開催される、このパールオープンゴルフトーナメントは、多くのプロ・アマが54ホールに挑戦するハワイで最も権威あるトーナメント。
http://www.pearlcc.com/japanese/index.html
予約・お問い合わせ(日本)
本田開発興行(株)
Tel.03-3271-1166
Fax.03-3271-4343
予約・お問い合わせ(ハワイ)
Tel. 808-487-3802
Fax. 808-488-2041
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Text:Shun Sato
Photos:Akira Kumagai
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