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INTERVIEW with FAUST Yasuhiro Hamano
僕は、釣りを通じて、
川や、山、森に深く入っていった

世界中の魚を追い求めて、釣り旅を続けてきた浜野安宏氏が、
今年の夏、向かったのは、極北の島・アイスランドだった。氷河期の遥か前から、滔々たる流れに潜んできた巨大魚・アトランティック・サーモンと会いまみえるべく、日本を代表する稀代のフライフィッシャー・杉坂研治氏と、白夜とミッドナイト・サンの国へと旅立った。
彼らが惚れ込んだ鮭釣りの魅力と、その背後にある思いとは―――?

氷河期の前から生き延びてきた巨大魚に魅せられて



Mephisto(以下M)なぜ、アイスランドで釣りをすることになったのですか? 

Faust(以下F)すでに僕は、アイスランドに鮭釣りに行っていたので、今回同行した杉坂さんが、アイスランドでアトランティック・サーモンを一緒に釣らせてほしいと。そうして今年ようやく準備が整い、念願のアイスランドに彼と行くことになった、というのがいきさつです。

そもそも浜野さんが、アイスランドに鮭を釣りに行くことになったきっかけは?

きっかけは、アウトドア・プロダクツのパイオニアで知られるパタゴニアのイヴォン・シュイナードさんです。毎夏、ワイオミングで過ごすイヴォンの別荘を僕が何度となく訪れても、いないことが多くなった。「どうして、夏は別荘にいないの?」と彼に尋ねてみると、アイスランドに行き、鮭釣りを楽しんでいたというのです。そして、私も行きたくなったのです。

アトランティック・サーモンは、日本ではあまり馴染みのない魚ですね。パシフィック・サーモンとはどこが違うのでしょう?

アトランティック・サーモンはどんな魚かというと、体全体が光って銀ぴかです。彼らは川で産卵し海に下り、また川に戻ってくる。氷河期の前から生き延びてきたといわれる鮭で、そのようなライフサイクルを繰り返してきた。片や、氷河期以降の鮭・パシフィック・サーモンは、産卵は1回だけで、産卵を終えたら、まもなく死んでしまいます。

そのファイトぶりは、相当なものがありそうですね。

同じ鮭でも、ファィトぶりは多士済々ですね。まず、重さではキングサーモンには勝てない。雌はジャンプするのに、なぜか雄はジャンプしないのです。片やレッドサーモンは、アクロバティックな動きをする。猛烈にファイトするのだけれど、その動きを計算できない。その点、アトランティック・サーモンは、力は強いのですが、それほど重くない。それぞれの鮭によって、やり取りがそれぞれ違うのが楽しいのです。

杉坂研治さんは、フィッシング・クリエィターだ

日本を代表するフライフィッシャー、杉坂研治さんとはどのように出会ったのですか?

杉坂さんが高校生の頃、僕の書いた『Tail Walk 』という本や、雑誌『フィッシング』の連載記事を読んでくれていたのです。僕の背中を見ながら、ひとり黙々とアラスカなどに通い、いろいろな経験を積み、その結果一流の釣りのプロになった。釣りながら考える人、彼はまさにそのフィッシング・クリエィターです。その後、長良川で偶然会ったり、北海道の阿寒湖で釣りをしたり、ニュージーランドなど、一緒に行くようになった。



今回、杉坂さんの釣りは、どのようなものだったのでしょうか?

杉坂さんが釣った一番のポイントは、後ろに崖が立ちはだかっている、落ち込みがある約30メートルのところでした。そこでは、サーモンが飛び跳ねている。スペイロッドで、バックキャストなしに、30メートルも飛ばすのは至難の技です。彼は、それを可能にするロッドやラインのシステムを、開発していました。

今回、一番エキサイティングだったのは、浜野さんにとってどんなシーンでしたか?

今回のハイライトは、3つありますね。まず、初日に僕の釣り方で、まず一匹かけて見せたこと。次に、滝の下で入れ食いになったこと。それから、帰国する最後の最後で締めの魚が釣れたこと。いっぽう、杉坂さんは初日には釣れなかったものの、翌日は河口に近いドロップオフで入れ食いになった。驚異的な粘りです。研究の成果が一挙に爆発したのでしょうね。

そもそもアイスランドという国は、どのような国だとお考えですか? 

アイスランドの人口や自然条件を考えると、ファンド経済に頼るのではなく、水産や観光で、堅実に生きたほうがいいでしょうね。世界中の人々が羨む、自然リゾートを設けるとか。

(Storyの原稿では)アイスランドを例に、バックキャスト経営の大切さについて提言されていましたね。

アイスランドもそうですが、世界経済の将来にとっても、経済用語におけるバックキャスト経営―遠くを見据えて、過去を振り返る―という考え方、つまり、いい過去がないと、いい未来がない。いい未来のために、過去が大切、という考え方はこれから注視されていくでしょう。

アイスランドとの比較において、これから日本はどのような道を歩めばいいと思われますか?

アイスランドには美しく素晴らしい川がたくさんあり、その美しい川には美しい魚がいます。日本の国は、八ッ場(やんば)ダムに象徴されるように、何でもかんでも国中をコンクリート漬けにしてしまった。政局に関係なく、川をきれいに、元通りに戻してほしいですね。

一匹の白い魚が「Jump&Tail Walk」するのを目の当たりにした



そもそもどのようなきっかけで、釣りに魅せられるようになったのでしょう?

生活審議会やファッションタウン協議会など国の委員会を歴任して、執筆講演活動が多く、会社に寝泊まりするなど、山のような仕事に追われていた頃、1970年代の35歳前後ですが、餌釣りやルアーをしていた子供時代を思い出し、コピーライターとして著名な梶 祐輔さんに弟子入りしたい、と懇願したわけ(笑)。ルアーやフライの手ほどきをしていただいたりしました。その後、1975年5月、カナダ・カムループスのポールレイクに行ったとき、ある紳士がカヌーで湖に現れ、釣りを始めた。すると、一匹の白い魚がいきなりジャンプし、ラインが引っ張られ、「Jump&Tail Walk」するのを目の当たりにしたわけ。それ以来、フライフィッシングにまっしぐらです(笑)。

今後、アトランティック・サーモンの釣り場として考えているのがロシア。魚の数も多いし、しかも型がいい。カムチャッカやシベリアは近いので、イトウを狙いたいですね。

釣りの世界で、憧れの、もしくは尊敬している人物はいらっしゃいますか?

まず、ジミー・カーター元アメリカ合衆国大統領ですね。そして、今年、亡くなった釣りガイドのジム・リパイン。それに、ダグ・トンプキンスも尊敬しています。ダグは自分のアパレル会社エスプリを売り払って、チリの自然保護にいまも携わっています。もちろん、パタゴニアの社長イヴォン・シュイナードも。日本では、さきほど話に登場した梶 祐輔さんです。

釣りをすることで、常に心がけていることや、モットーをお教えていただけますか?

僕は釣りを通じて、川というものにかかわるようになり、森や山に、だんだん深く入っていけるようになっていきました。川の側から、森の側から、山の側から、現実を見られるようになったのです。それに加えて、22年前に、アメリカ・ワイオミング州のジャクソンホールに家を建てて、毎夏過ごしてきたことが、今ある自分を形成してくれたような気がします。

ジャクソンホール…イエローストーン国立公園やグランドティトン国立公園の玄関口

 

 

  • ◎「『国破れて山河あり』。アイスランドに、野生の巨大魚を追う」STORY本編はコチラ

 

 

Faust Profile

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浜野安宏(はまの やすひろ)
ライフスタイル・プロデューサー。株式会社浜野総合研究所・代表取締役社長。
多摩美術大学客員教授。青山学院大学非常勤講師。
1941年、京都生まれ。FROM-1st、東急ハンズ、AXIS、QFRONT、青山AOなどを
総合プロデュース。神戸ファッションタウン、
横浜みなとみらい都市デザイン委員など、多くの公的活動も歴任する。
現在も渋谷、青山を拠点にアジア(タイ、インドなど)への活動を拡げている。
主要著書に「ファッション化社会」「質素革命」「浜野商品研究所コンセプト&ワーク」
「人があつまる ストリート派宣言」「生活地へ-幸せのまちづくり-」「はたらき方の革命」
「さかなかみ巡礼記」「TRAVELING WISDOM(DVD)」ほか、多数。
http://www.teamhamano.com

  • ◎「自分もアイスランドで、巨大魚・アトランティックサーモンを釣ってみたい」という冒険者へ画像

Who is Mephisto ---メフィストとは

人生のすべてを知ろうとした、賢老人にして愚かな永遠の青年「ファウスト」(作:ゲーテ)。この物語でメフィストとはファウストを誘惑し、すべての望みを叶えようとする悪魔。当クラブ「Faust Adventurers' Guild」においては、Faustの夢と冒険の物語をサポートする案内人であり、彼らの変化や心の動きに寄り添う人物。時に頼れる執事、時に気の置けない友人のような存在は、『バットマン』におけるアルフレッド(マイケル・ケイン)、『ルパン三世』における不二子&次元&五右衛門トリオのようなものか? 今後、Mephistoは各クエストの終わりにFaustの皆さまの心を探りに参ります。どうぞよろしく。

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