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INTERVIEW with FAUST  Vol.1 Hiroaki Takashita
心を動かす、サプライズの連続

氷のコースでのドリフト練習、スノーモービル、ゴーカート、S字コース、犬ゾリ、レース…。次から次へと展開するアクティビティに、顔を上気させながらスリルと興奮を味わい、合間にはしっかりハメも外し、大声を張り上げていたファウストたち。目の前に広がるのは見渡す限りの雪の平原。空には痛いほど眩しい北の国の白い太陽。時折トナカイにひょこり出くわす他は、誰にも出会わない。聞こえるのは自分の息づかいと、エンジン音や犬の吐息だけ。途方もない景色の中で彼らは何を感じたのか。

心地良い裏切り

Mephisto(以下M)  ラップランドの第一印象はいかがでしたか?

Faust Takashita(以下F)  「ああ、絶対来ないところに来ちゃったな」というのが第一印象。生トナカイとか初めて見たので(笑)。普段海外に行くのは、仕事ではパリやニューヨークなどの都市で、プライベートでは南の島。だから雪国、しかも北極圏なんて、ほとんど興味がなかったんですよ。それなのに、今まで経験した旅の中で3本の指に入る、もしかしたらいちばん感動した旅だったかも知れない。とにかく異常に濃い3日間だったし、することすべてが初めてづくし。氷上のサーキットをドライブするなんて経験ができるのは、きっと世界でもひと握りの人だと思うしね。かなり貴重な体験でした。

M 最初はフィンランド行きも躊躇していたそうですね。

F そう。最初は「雪の上で車の運転を習う」というくらいしか聞いていなかったので、それほど期待はしていなかったんです。たまたま出張でスイスに行くから、まあついでに、という感覚だった。もちろん興味はあったけれど、僕は車よりもサーフィンが好き、寒い国より南国が好きだから「何もわざわざ車の運転の練習をしにフィンランドまで行かなくても…」という状況じゃない? だいたい「キッティラ」ってどこかもよくわからないし。ところが、いざキッティラ空港についてみると、アウディのスタッフが何人も出迎えてくれて。そこで初めて、おや、これは自分の想像していた「エクスペリエンス」とは違うぞ、と感じたわけですよ。

M どういう「エクスペリエンス」を想像していたのですか?

F いや、空港に着いたら普通にタクシーか何かで勝手にホテルに行って、次の日に湖の上で3時間ほど運転させてくれるのかなって。そのくらいにしか考えてなかった。そうしたら大勢の出迎えに、チャーターバス、乗せてもらうとすぐにウエルカムシャンパンと、立て続けの想像外の展開に呆然。

F  ホテルに着けば、部屋でも全部フリードリンクでシャンパンも何本も用意してあって、ベッドの上にはレース用のジャケットやスーツや手袋が置いてある。「これはなんだか想像と全く違うぞ」と、その時に悟りましたね。その夜のディナーは、スタッフやコーチの皆とコミュニケーションしながら食べ、翌日は朝からすぐに講義。「これはそうとう本格的に教えてくれるんだな」と、どんどん心境が変化していくわけです。

M 何も予備知識がなかっただけに、そのギャップは面白いですね。

F そうなんです。講習が終わると、アウディA4がずらりと部屋の前に並んでいて、しかもひとりに1台ずつ用意されている。乗り込むと、先生が「じゃスタート!」って先頭を走り出して、「ええ、いきなり!!? しかもマニュアル?」って、もうそこから練習が始まっているんですよ(笑)。もう、何もかもがサプライズ。はじめに知らされていたのは、氷の上での車の動かし方だけだったかも知れないよね。今回Faustは僕たち2人しか行かなかったけど、でも、もしどんな旅か分かっていたら、きっとすごい数のFaustが行ったと思う。あとから話を聞いた人はみんな「俺も行けばよかった」って後悔していたよね。

M アウディは最初からメニューの全容を明らかにしていないんですね。 

F 今回の旅の感動は、その仕掛けのすごさに関してです。内容はシークレットにしておいて、すべてがサプライズの連続。最初からこういう感動がありますよとは言わない。今回の旅は自分のビジネスにとっても、いい勉強になりました。いい意味でどんどん裏切っていかないと駄目なんですよね。自分の仕事、店を運営し接客していくにあたっても、お客さんにこういう感動を与えなければいけないんだと。

F その日の午後もランチを食べたら、「じゃー、そろそろ飽きたから次はスノーモービル!」って、一台づつ与えられて、目一杯の全速力でどこまでも行く。とてつもなく広いから、「全員で遊ぼう!」っていうそのスケールが違う。セコイ話はどこにもない。スノーモービルで走ると次にはカートコースが見えてきて、そこで降りろと言われて。そしてこのカート場自体が、僕たちのために作られたものだと、そこで初めて気が付く。すべてがそんな感じですよ。

一等賞の金メダル

M カートレースでは、高下さんが勝ったそうですね? 

F そうそうそう(満面の笑み)。「はい、一等賞」って、木のメダルをかけてもらってね。「一等賞」って木のメダルに彫ってあるの(笑)。

M うわ。なんだかそれは、とても嬉しいですね。 

F 嬉しいよ。「はい、金メダル、キミが一番だよ」って(笑)。

M そういうものをもらったのはたぶんとても久しぶりなのでは? 子供時代の運動会のような。

F そう。すっごく嬉しかった。だからまだその木のメダル、部屋に飾ってあるんですよ。「これは、お金かかっていないけれど、すごいことだぞ」と思えてね。こういう、子供の時にやらせたことを(大人に)あえてさせる? ってこととかね。 

M 感動的ですよね。 では、金メダルのコメントをお願いします。

F 北島じゃないけど「超キモチいい」って感じ(笑)。超嬉しかったよ。やっぱり。

F その金メダルをかけたまま、近くの山小屋でコーヒーでも飲みましょうとなってね。小屋に入ると、そこにはもうクッキーとかケーキとかデザートがウワーッと用意されていて、「うわあ、これ全部食べていいのー?」みたいな(笑)

M そこでまた子供になっている(笑)。

F そんなふうにゴーカートも面白かったのだけど、サーキットがまたすごい。鈴鹿みたいになっていてね。写真を見ると平原みたいに見えるけど、実はちゃんと雪の壁があるとても長いコースになっているの。もちろん、この壁に突っ込んだりもする。Uターンカーブでは大体時速70kmくらいのスピードで突っ込んでいくんだけど、普通のサーキットなら時速300kmくらいの感覚じゃないかな。あれは怖い。下手すると車が潰れてしまう。ちゃんとアクセル放して、前重心でドリフトしないと曲がれない。でも、ここでrapも取って一周何秒のタイムトライアルもしてね。あれは凄い。ヤバい。

M 壁には激突しなかったんですか?

F 僕はしなかったけど、激突したらブルドーザーが来て、引っ張ってレスキューしてもらうんです。そして、そのブルドーザーのおじさんに呼ばれて、「ライセンス(ドライビングスクールの参加証)出せ」って切符切られるんだよ(笑)。

M 演出できてますねえ!

F すごい演出よ。「はあー、これは突っ込んでも駄目なのか」と思うわけだけど、何の意味があるのか、どうしてされるのかはわからなかった。ところが最終日のランチで、今からいよいよ空港に行くぞという時、いきなり「成績発表します」と。総合で誰が一番かっていう成績なの。キップの数がマイナス点で、カートで何フィンランド位だったとか、犬ゾリで転んだらマイナス何点とか、結局総合でも僕が1位。そんなふうに全部計算されているなんて全然知らなかったから、そこは最後のサプライズでしたね。

M 瞬間瞬間を楽しんで、しかも最後にそんな仕掛けがあったとは。

F そう。最後は『愛と青春の旅立ち』じゃないけど、教官と別れるときに涙、涙。 「あー、アイツいい奴だったなあ」なんて、しみじみしている自分がいるわけですよ(笑)。

M 今回のクエストを通して一番感動したのは何ですか?

F うーん…。やっぱり犬ゾリかな。雪の中を歩いてしばらく行くと、遠くから犬の鳴き声が聞こえてくる。「もしかして犬ゾリ!?」とワクワク感が高まっていく。普通できないでしょう犬ゾリも。やってみるととても難しいし。足ブレーキしないと犬はひたすら走ってしまうんだよ。

F でも、全体を通して特に何がということではなく、最も感動したのは「このアクティビティを考えた人がいる」ってこと。凄い、このプロデューサーは誰だ? ってそんなことばかり考えてしまいました。
アウディはいい会社だな、と思わずにはいられない。ここまで人を感動させることができる会社なんだということにいちばん感動した。日本の会社でこんなことやっていないだろうと思ったし、みんなに話すからいいPRにもなるよね。

M 高下さんのミッドタウンのお店も、かなりサプライズがある空間構成になっていますが。

F いや、全然。お金をかけなくても、こんなに人を喜ばせることができるんだとかね。もっともっと仕込めるなと思いましたよ。

 

 

  • ◎「フィンランド、果てしなき雪原を走り抜ける」STORY本編はコチラ

 

 

Faust Profile

高下 浩明  (セレクトショップオーナー)

エッジの効いたセレクトで知られるハイエンド・セレクトショップの代表取締役。六本木・東京ミッドタウンの店舗では、サプライズな空間を演出、世界の ファッション・カルチャーを発信する経営者であるが、プライベートではかなり激しくサーフィン熱が再燃中。大波への夢をひそかに抱いている模様。週に2 日、多い時で4日は鴨川に通い、波乗り後に会社に出勤することも多い。ファウスト・サーフ部の発足も間近??

INTERVIEW with FAUST  Vol.2 Kazutomo Robert Hori
時間と距離感を拡げる旅

無茶な夢を抱く者。その夢を後押ししようとする者。---ファウストとアウディのそんな幸福な出会いによって実現した、北欧での夢のようなドライビングレッスン。最高のサービス、最高のコーチ、美しい森と氷の大自然の中での滞在に、ファウストの心はどう動いたのか。

レースに向けて

フィンランドMephisto(以下M) 素晴らしい旅と貴重なドライブ経験に興奮冷めやらぬ様子ですね。そもそもこのクエストに参加したのは、どういう心境からですか?

Faust Hori(以下F) 僕がこのクエストを受けた本当の理由は、間近に控えたS耐レース初出場(3月27日)に向けて、あと1秒でも刻みたい、という思いがあったから。レースのトップクラスで走るためには、あと数秒は縮めなければならない。でも、どんなに練習を重ねても、なかなかその1秒、0.5秒が縮められない。どうしても自分の運転テクニックを劇的に変化させなければ、と本当に悶々としていた。何より最も課題としている「(※)アンダーステア」を克服しなければ、という気持ちがあったんです。そんな時に、このクエストが実現した。“プロのレーサーがコーチをしてくれる、氷上でのドライビングレッスン”と聞き「これは!」と思い、すぐにフィンランドに飛びました。

    * (※)アンダーステア コーナーで思ったほど曲がらない状態。
    *     大回りしてしまうので、コーナー脱出時の加速が遅くなってしまう

M  フィンランドで対処する方法を見つけられましたか? 氷の上とレースのコースでは状況が違うでしょう?

F  絶対スピードが氷の方が遅いだけで、理論はまったく一緒なんです。しかも氷の上ではよりはっきり練習することができる。少しでもオーバースピードだと曲がらなくなるし、ちょっとでもブレーキを強く踏みすぎていたらハンドルがきかない。ピクリとも曲がらない。通常のレースが100の力でブレーキを踏んでいるとしたら、氷の上では1くらいの感覚です。繊細なブレーキングが必要になるんですよ。

M  確かに練習になりそうですね。 全体を通じてプログラムの内容はどうでしたか?

F   現地では様々なプログラムが綿密に、段階的に、そして感動的に組まれていて、それは素晴らしい体験でした。参加者全員が「こんなに素晴らしい旅があることや、アウディがここまで上質なホスピタリティを持つ会社だということを、皆が知らないのはもったいなさすぎ!」と口々に熱弁をふるっていたくらい。冗談抜きで、僕が今までに行った旅行の中でも3本の指に入るくらい、最高の旅でした。 一緒に行った高下さんも、感動のあまり「フィンランドに住みたい! 俺は次もアウディを買わなければ!」と、興奮してサウナから裸で飛び出し、雪にダイブしながら叫んでいましたよ(笑)。ホントにスッポンポンで。霜焼けしてないか皆心配しましたよ。

犬使いとの出会い

M  堀さんにとっては、意外にも犬ゾリが最もハードだったということですが(笑)

F  最初は「犬ゾリかあ」と甘く見ていたのだけれど、「このすべてのアクティビティの中でも、実は犬ゾリが一番ハード!?」 と皆が言うくらいすごかったですよ。

M でもハードな一方、夢の中のような光景を走っていますよね。乗っているときには、どんなことを考えたのですか?

F   「なんて広いんだろう…。なんて何にもないんだろう…」 。

M  思考も停止して瞑想状態のようですね。でもその間にも、風はびゅうびゅうと吹きつけてくるわけですよね。

F   ちょうど吹雪で、すぐ先が見えなくて。顔がこわばって「カキクケコ」も言えなくなるんです。犬のハアハアゼイゼイ言う、その音しか聞こえない。何も見えない、ひたすらの雪野原。犬ゾリって思ったより速いんですよ、時速20㎞くらいは出ていたんじゃないかな。時々犬のために休んであげるんだけど、とたんに犬たちは雪を食べたり、ゴロンと寝転がって雪に身体をなすりつけたりする。冷やしているんでしょうね。その懸命さを見ると、だんだん犬に愛情が湧いて来るんです。それにこの犬たちは、走るのが好きだからなんでしょうけど、犬ゾリに繋がれた瞬間に凄く興奮して「ウオオオオオオオ!」って怖いくらいに叫ぶ。でも、犬使いのおじさんが「ウワウウ、ウウワウウウ!」って言った瞬間に、ピタッと静かになる。「シャラップ!」とかじゃなく、「ウウ〜ウウウウ〜」って話している、そういう感じなんです。

M 狼語!?

F   まさに。狼語みたいなのをしゃべると犬がピタっと鳴き止む。この犬使いのおじさんは、不気味というくらいの強烈な存在感。彼は犬ゾリの専門家で、2週間で3000kmとかいう距離を走る犬ゾリのレースにも出ている人らしいんです。トナカイの毛皮を着た、2mくらいの巨体のこの人は、100㎞四方に誰も住んでいないような場所に、100匹くらいの犬とたった一人で住んでいる。

M 物語を感じずにはいられませんね。北欧神話に出て来る巨人のような存在感なのでしょうか。想像するに『ハリー・ポッター』のハグリットみたいな人?

F でっかい人で、無骨で、でも、にっこりはできるというような人。

M まさに。そんな広い中にひとりで過ごしていたら、やはり「精霊と共に生きる」という感じになるんでしょうねぇ。

F この人の人生の価値観は何だろうと想像を試みても想像がつかない。そんな人生があるのかと、ただ驚くばかり。いろんな生き方がある、ということを肌で感じました。人恋しくなるときもあるはず。ひと気がない場所だからこそ、孤独を知っているからこそかもしれないけれど、人と人との出会いの大切さや気遣いを、優しく、さりげなく示す人々。そこには本当の意味での「上質なホスピタリティ」があったんです。

M  とても家族的な、温かいおもてなしだったようですね。

F アウディのドライビングスクールのスタッフ達にも感動しました。皆、僕たちと変わらないくらい年代の人たちでしたが、このスクールの後は、イギリスで別のプログラム、その後はドイツ、というように一年中転々とする生活で、彼らはそれを毎日やっている。ドライバーとしての自分の練習にもならない、しかも寒い中で野外に立って指示したりするわけで、毎日吹雪の中で大変だと思うんですよ。でも、俺たちが上達した時は心から喜んでくれて、本当にありがたく感じた。

F  そして、広大なスケールの大地で日々暮らしている人々の人生と、東京で暮らす僕らの生活を思いました。人間らしい時間軸、距離感とは何かということを。

M  最後に今回のクエストを振り返っての感想はいかがですか?

F 最初は自分の知っていることや、レースに直接関係ないことはいらない、とにかくレースへの課題を克服するための手がかりとなるようなレッスンを一日中受けていたいと思っていたんです。「もっと速い車で競いたい」、「無謀と思える挑戦でも諦めるべきじゃない」と、長年の夢を醸成させた末の、巡り合わせもあってのS耐挑戦だったから、すごく意気込んでいた。でもね、帰って来た今はそれ以上に、すべての光景が僕の中にぎっしりと積もっているのを感じています。また行きたいなあ。フィンランドを第二の故郷にしたいくらいです。

Faust Profile

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堀主知ロバート(IT企業グループ会長兼CEO)

20代でカートレースを始め、泣く泣く引退したレース経験を持つ。会社経営者となったその後は、事業に邁進するかたわらウエークボードの選手としても活 躍、数々の大会経験を持つ。30代でクラシックカーレースに参戦。自動車レースの世界に復帰。今春よりファウスト・レーシングチームに参加し、2008年 3月よりS耐に参戦。

  • ◎具体的な旅程を知り、同じ体験をしてみたい方はコチラ 画像

Who is Mephisto ---メフィストとは

人生のすべてを知ろうとした、賢老人にして愚かな永遠の青年「ファウスト」(作:ゲーテ)。この物語でメフィストとはファウストを誘惑し、すべての望みを叶えようとする悪魔。当クラブ「Faust Adventurers' Guild」においては、Faustの夢と冒険の物語をサポートする案内人であり、彼らの変化や心の動きに寄り添う人物。時に頼れる執事、時に気の置けない友人のような存在は、『バットマン』におけるアルフレッド(マイケル・ケイン)、『ルパン三世』における不二子&次元&五右衛門トリオのようなものか? 今後、Mephistoは各クエストの終わりにFaustの皆さまの心を探りに参ります。どうぞよろしく。

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