襲い来る5G!
上空3000mのトップガンファイト——後編
Take off
フラートン飛行場から飛び立ったFaustたちの戦闘機3機は、一路、太平洋上を目指す。「戦闘機でロックオン勝負2008」の一回戦、3人中、勝者2名が2回戦へと勝ち進むのだ。
眼下にハイウエイや住宅街など、カリフォルニア州の街を望みながら、つかのまの優雅なフライト。10分弱で、飛行空域となる太平洋上へと到着する。周りは一点の濁りもない紺碧の大空。遥か下に広がるのは白いたたみ雲と、ところどころに垣間見える、大海洋。まったく視界をさえぎる物のない無限とも思える蒼い虚空に、戦闘機はふわりと静かに浮かんでいるようだ。
「まるで空を漂っているみたいだな…」
太平洋の上空2000〜3000m、ここがロックオン勝負の舞台となる。
Go to the Battle Area !
ヘッドフォンを通じ、ヘルメット内に隣のパイロットの声が響いた。
「ガガッ…これから、基本的な操縦方法を練習する」
ここからはFaustたちが戦闘機を操縦する時間帯となる。とはいえ、緊張する暇もなく、同乗するパイロットの指示に従って操縦桿を握り、まずは敵機を斜め45度前方に見ながら、ゆっくりと追尾。敵機が左右にターンをしたら、後を追ってターンをする。
「ブリーフィングで言われていたことだが、操縦桿は想像以上にデリケートだった。柔らかく包み込むように握って、かるく前後左右に倒すだけで、戦闘機が自在に動く感じ……」とFaustは後にそう感想を話している。
「よし。次は、敵機により早く追いつくための2つの基本的マニューバー(操縦)を練習する。まずは、敵機がどちらかへターンしたら、その内側をショートカットするように急角度でターンし、追いつく方法だ。次に、一度、急降下をして加速し、そこから一気に急上昇をかけて追いつく方法だ。よし、行くぞ!」
グン!! 敵機を先回りするべく行った急激なターンが、大きなGのプレッシャーを生む。急降下と急上昇を組み合わせてのマニューバーに至っては、縦方向から大きなGが! 一瞬天地がわからなくなるような感覚に陥る。
「こ、これがGか!」
「Good! よくできた。では、ロックオンを始めるぞ」
3機がそれぞれマニューバーの練習を行ったのち、ロックオン勝負の体勢へと移行。2機ずつの対戦で、1機は上空で旋回して観戦しながら、次の対戦に控える。
同乗するパイロットが操るFaustの2機が、お互いの左側を通過するように高速で交差する。
その瞬間——「Fight on! Fight on! Fight on!」
ヘルメットにパイロットの声が響き、再度、操縦桿がFaustの2人に託された。ロックオン開始の合図だ!
上昇する敵機を追うため、操縦桿を手前に引く——と、猛然と戦闘機が急上昇し、同時に強烈なGが全身をつつみこむ! 「うおぉぉっ! なんだこれは? 体が全く動かせない!」
後ろを取られた敵機を振り切るため、縦横無尽にマニューバーをするも、「ぅうっ。。。き、気持ち悪い」、船酔いに似た不快感が胃袋からこみ上げる。
「ぐぐぐぐぐぐ〜っ」、上下がわからなくなるほど宙返りを連続し、押し寄せる5Gの波を歯をくいしばって耐え、敵機の後ろに回り込む!
想像を絶するトップガンファイトが太平洋上空で繰り広げられた。
10:00 am
第一陣、感動の帰還!
フラートン飛行場に、3機の戦闘機が戻ってきた。編隊を組み、一機ずつ順に旋回をして、着陸する。
ヘッドオフィス脇の待機場所まで戻ってきた戦闘機のコクピットから、ヘルメットを脱いで、何やわめきながら3人が降りてきた。興奮冷めやらぬ!といった様子だ。
「とにかくすごかった! あれが5Gか、全く体を動かせなくなる。シートにいきなり張りつけにされる感じだ」
「みんな、グレイアウトになった? オレは、グワァーっと何度も宙返りをしたら、突然視界が白黒になって。あれっ!?と思ったらキューッと視界が一気に狭くなって、うわ!これは危ない!って焦って。フンッッ!!って力んだら、視界が狭くなるのが止まってさ。宙返りが頂点を超えたら、視界も戻ったよ。力みすぎて腹筋が痛くなった……」
「オレはすごく、もよおしちゃって(笑)!!! 下方向へ強烈なGがかかるせいかなあ。あんなに朝メシを食べなければよかった……」
「ロックオン、超面白いですよね! まったく怖くもないし最高! でも酔って気持悪くなって、吐きそうになりましたよ(笑)」
「本当に上空ではほとんど自分で操縦していたよな。でも思ったよりも簡単だね、まったく心配することはなかった。スピードも怖くないんだよなあ。たぶん、上は空、下は雲で、周りになにもないから、スピードがわからないんだよね」
「そうそう、それに飛行機って、俺が宙返りさせても墜落しないんだな(笑)って思った」
「うわー、おれはヤバイ。早くトイレ行こう」
口々に驚愕と興奮をまくしたてるFaustたち。その生き生きとした表情が、体験の鮮烈さを物語っていた。
オフィスに戻ると、カウンター向こうのテレビ画面で、今のロックオン勝負の模様がリプレイされる。デブリーフ(debrief)だ。第一回戦の勝者は、櫻木と堀であった。しかし、勝ち負けとより、ロックオン体験の衝撃のほうが勝ってしまい、、完全に試合は二の次という雰囲気であった。
10:30〜14:30
ロックオン・トーナメントFINALへ
第2戦は、TAKAこと蒲田崇と、もう一人のFaustの対戦。Faustたちから感想を聞き、ずいぶん緊張は緩んだ状態で挑めたようである。結果は鎌田の勝利。続いての第3戦は、第一戦の敗者と、第2選の敗者のFaustでブービー賞を決したが、これはドロー。
そして最終戦の第4戦は、第一戦の勝者である櫻木、堀と、第2戦である鎌田の3人で決する決勝戦だ。
ちなみに、胃をひっくり返されたような不快感のおかげで、昼食は全員パスしている。
Topgun Fight Final !
決勝戦を戦う3者は、2回目のフライトとなる。1回目より余裕が生まれ、急降下しながらの旋回や、旋回しながらの上昇など、新しいマニューバーにもトライしながらの対戦となった。
優勝者は堀主知ロバート。ただ勝敗よりも、ともかくロックオンの操縦体験の鮮烈さが際立ったクエストであった。合わせて、Faustたちが揃って言っていたのが「この退役軍人のパイロット3人は、どれだけタフなんだ!」という驚きである。Faustたちは気分が悪くなりながら、休みを挟んで2回乗るのが限界だった戦闘機搭乗も、彼ら3人は連続で3回乗ってもケロリとしていた。おまけに、Faustたちのロックオン映像を、自分のことのように本当に楽しそうに観る姿には、元軍人なのだから当然とはいえ、ただただ脱帽である。
フラートンを後にするとき、心に焼き付いたのは、何よりも鮮やかな彼らの笑顔だった。
Faustたちの冒険の旅とは、地球上の偉大なファウスト魂の持ち主たちとの、出逢いの旅なのかもしれない。
今回宿泊したホテル
Shade hotel
1221 N Valley Drive Manhattna Beach, CA 90266
Tel.+1 310-540-4997
http://shadehotel.com/
Text:Faust A.G.
Photos:Kazoo Fukuzaki
2008/12/18