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Faustポーカーチーム奮戦中!
スペインツアー参戦で「DEAD or ALIVE」?
2010 Spanish Poker Tour Sevilla

Faustポーカーチームの最終目標は、毎年夏にラスベガスで開催される世界大会(WSOP:優勝賞金約8億円)での優勝。そのためには、世界を知らなければいけない。その武者修行の一環として、世界各地で行われているポーカーツアーに参戦! 今回のSPT・セビリア大会もその一環。果たして現地で孤軍奮闘するポーカー・サムライに、どんな顛末が待っているのだろう――?

成田からパリを経由し、飛行機で約12時間。スペイン第四の都市、セビリアに降り立つと、地中海気候の心地よい風が長旅で疲れた体を優しく包んでくれた。
此の地はその長い歴史からヨーロッパとイスラムの2つの文化の影響を受け、独自の文化を育み、幻想的な街並が広がっている。世界遺産のカテドラル(キリスト教の大聖堂のこと)である「セビリア大聖堂」などの建造物をはじめ、フラメンコ発祥の地、イベリコ豚の産地など観光するにしても魅力的な街と言えるだろう。
だが、Faustポーカーチームの目的は、そこにはない。今回、はるばるスペインを訪れたのは、2010年11月に行われたエベレストポーカー主催のスパニッシュ・ポーカー・ツアー(SPT)に参戦するためだ。





今回、スペインのポーカー界に乗り込んだFaustは2人。日本のポーカーイベント・東京ポーカーツアー(TPT)を主催する金子達氏。世界各地で開催されるポーカー大会に通算10回ほど参戦した経験を持つ日本を代表するプレイヤーだ。そして、もう一人は2008年アジア・ポーカー・ツアー・マニラ大会で3位入賞を果たし、日本賞金ランキング第7位(2011年3月現在)の石井カイジ(筆者)である
。 SPT・セビリア大会には約199名のプレイヤーがスペインなどヨーロッパ各地から参戦。15万ユーロ以上のプライズプールが保証され、優勝者には賞金4万3300ユーロと名誉が与えられる。
これまでフィリピン、マカオ、ラスベガスなど世界各地のポーカー大会に参戦してきたが、これほどインティメイトな雰囲気は初めてだ。
「ポーカーは騙し合いのスポーツである」
ポーカーにとって、騙すことは美学であり、騙されるほうが悪いのである。だからこそ、対戦相手が笑顔で話しかけてくることにすら理由がある、と深読みしなければいけない。気のいい年配者ほど、こうした狡猾な戦法を使ってくるものだ。簡単に心を許せば、隙を突かれてチップを取られてしまう。取られるほうが愚かなのである。
だが、スペイン人プレイヤーは、ポーカーを「騙し合い」「チップの奪い合い」とだけは考えていない。彼らにとってポーカーは、楽しい時間と新しい仲間と出会う社交場なのだろう。〝愉しむ〟ということを大切にしている。スペインでポーカーが人気の理由はここにあるような気がした。

余談を許さない戦いがはじまる

トーナメントディレクターの「Good Luck!」のかけ声とともに、ディーラーがカードを配り、各プレイヤーが手に持つチップの音が会場中に鳴り響く。ついに大会の幕開けだ。スタート時間は午後8時。これから午前4時までプレイを行い、それを3日間という長期戦を闘い抜かなければ、栄冠と賞金を手にすることはできない。
開始から1時間。スペインならではのポーカー文化に驚かされる。通常、ポーカーテーブル上では英語以外話してはいけない。チームプレイを避けるためだ。だが、ここではむしろ英語が通じない。ディーラーもスペイン語を話し、英語で質問しても理解されない。英語の話せるスペイン人プレイヤーが通訳するため、いちいちプレイが中断される。これがラスベスであれば、有り得ない話だ。アメリカ人はポーカーと関係のない日本語を話しただけで激怒し、プレイが中断されるとディーラーに怒鳴り出す。この〝スペイン時間〟に慣れ、平常心でいられなければ、スペインでポーカーをすることはできないだろう。
その〝スペイン時間〟に他の日本人プレイヤーが動揺しているなか、寡黙にプレイを続ける日本人が着実にチップを増やしていた。タイトプレイヤーの金子達氏は、強いハンドのときだけ勝負を挑み、「カジノのない国からきた日本人にポーカーがわかるのか?」とバカにする外国人たちからチップを奪っていく。もう彼の周りに、日本人とバカにする者はいなくなっていた。
だが、ポーカーはタイトにプレイしているだけは勝つことができない。時間とともに、ブラインド(強制ベット)が上がり、アグレッシブにならざるを得ないルールがある。すると、狡猾さではやはり毎晩のようにポーカーをプレイしているスペイン人たちのほうに、一日の長がある。金子は見る見るとチップを減らし、6時間が経った頃、すべてのチップを失い、デイ1(1日目)で敗退してしまった。
「いいハンドでチップを増やすことはできたけど、ワンプレイだけ判断を見誤った。そこにつけ込まれた。ポーカーでは一瞬の油断が命取りになることを痛感した」
金子はサングラスを外し、目頭を抑えながら、自身のプレイを何度も後悔を口にしていた。だが、長い時間プレイをしていて、気の緩まない人間はない。その一瞬のミスをいかに最小限に抑えられるかどうかがポーカーでは大切になる。金子は、このスペインポーカー修行で、またひとつ成長したにちがいない。
一方、筆者は最後のFaustとなってしまった。金子とは真逆のアグレッシブプレイヤーを自認する私は序盤、積極的に仕掛けるもブラフに失敗。何度もチップを減らすも攻め続けた結果、最後は持ちチップを倍に増やすことに成功。日本人で唯一デイ1(1日目)を突破し、デイ2(2日目)進出を果たした。
デイ2進出者は78名。ここからが真のポーカーだ。「騙し合い」を制した者がゲームを制することができる。ただ待つだけでは、勝つことはできない。
SPTのデイ2突破者の中には、その「騙し合い」に長けた男たちが数多く存在し、彼らとプレイをすればするほどに、自らの力量不足を痛感した。

「何をしても勝てない」。そんな雰囲気を感じてしまい、何もアクションを起こせなくなった。気持ちで負けていた。 普段のアグレッシブさは失われ、気がつけば、チップ量が少ないためにオールイン(全チップを賭ける)をせざるを得ない状況に追い込まれてしまう。
「DEAD or ALIVE」――。ポーカープレイヤーにとって究極の選択を迫られ、私はついに全てのチップを奪われてしまったのである。

スペインのポーカー界で日本人の姿を見ることはほとんどない。そのためか、スペイン人らははるか遠くから来た〝サムライ〟たちとの出会いを喜び、彼らと固い握手を交わして、こう言った。
「次は、ラスベガスで会おう!」
金子は一瞬の判断ミスが命取りになることを学び、私は精神力を鍛える必要性を感じた。この教訓を得ただけでも、今回のスペイン行きは無駄ではなかったはずである。
次はラスベガス、WSOP――。スペインで出会った気のいいポーカープレイヤーたちとの再会。そして、彼らに成長する姿を見せるため、Faustポーカーチームの世界を巡る武者修行は続く。

 

 

 

Profile

金子達(かねこ・いたる)

1973年東京生まれ。2007年、テキサスホールデムポーカーを始める。その後、毎年、年5回~6回程度の割合で、海外ポーカートーナメントに出場。2010年には、世界最高峰のイベント:WSOPのメインイベント(参加費US$10,000)にもチャレンジ。惜しくもDAY3敗退。2011年も出場を目指して、日々練習中。またジャッジ金子として、レフェリー、タレント、イベントプロデューサーとしても活躍している。

Data

エベレストポーカー主催
「スパニッシュ・ポーカー・ツアー(SPT)・セビリア」
日時:2010年11月4日~11月7日

東京ポーカーツアー実行委員会
http://tokyopokertour.net/

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