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07 ROAD

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Vol.2 
目指すは60歳でアイアンマン!

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アイアンマン――それは、スイム3.8キロ、バイク180キロ、ラン42.195キロという気の遠くなるような距離を、己の肉体のみで泳ぎ、走破する、文字通り超人的なレースだ。オリンピック・ディスタンスと呼ばれる標準的なトライアスロンが、スイム1.5キロ、バイク40キロ、ラン10キロであることを考えれば、その過酷さがどれほど飛び抜けているか、少しはおわかりいただけるかもしれない。
ここで綴られるのは、アイアンマンの中でも世界最高峰、ハワイ島コナで毎年開催される「アイアンマン・ワールドチャンピオンシップ」への出場を夢見る、トライアスリートたちの熱き想いである。

最初の出会いは『福井鉄人会』から

インタビューは帰国後バルス本社にて行った。トップ写真はロタ島でのラン。疲労に顔をゆがめるも、最後はフィニッシュしてもそのまま走っていたいと思えるくらい気分がのったという。
ホノルルトライアスロン2009での1コマ。井上英明(右)、稲本健一(左から2番目)、高島(中央)はトライアスロンを通じての盟友だ。

彼こそがファウスト・トライアスロンチームの源流といえるかもしれない。

連載2回目の今回、Road to Ironmanに登場願った人物をそう紹介して、恐らく差し支えない。髙島郁夫。ファウスト・トライアスロンチームでキャプテンを務める稲本健一を、トライアスロンの世界に引き込んだ張本人である。

髙島はトライアスロンと出会い、その魅力にあふれた競技と友人である稲本を引き合わせた。髙島と稲本の遭遇がなければ、少なくとも、これほどのエネルギーを持つチームにはなっていなかっただろう。自身も現在、M.I.T.※の監督を務めている。

髙島は、いかにして“源流”となりえたのか。髙島とトライスロンのつながりとは――。

「もともとは、30歳くらいからだんだん太りだしてきたので、少し走り始めたというのがきっかけなんです。しばらくして、トライアスロンっておもしろそうだなと思ったんですが、当時(約20年前)はなかなかレースに出られなかったんです。出場の倍率が高いとか、どこかのレースに出た記録 を持っていないとダ メとかね。そんなときに、たまたま田舎の同級生が『福井鉄人会』っていうクラブで、トライアスロンを始めて。それで、そのクラブが主催する、九頭竜トライアスロンなら出られる、ということが分かった。確か34歳のときだから、もう19年くらい前になるかな。僕は泳げるし、走れるし、あとは自転車だけ買えばって感じで、そのレースに出たのがトライアスロンを始めたきっかけですね」

髙島の「あのころがトライアスロンの第一次ブームになるんじゃないかな」という話からすると、髙島のトライアスロンとの出会いは、比較的早い時期にやってきたことになる。ただし、最初の出会いから、すぐに今のような“蜜月”の関係に発展したわけではなかった。

「やり始めてから、3年くらいは続けていたのかな。でもその後、会社を興したりして忙しくなって、遠ざかっちゃったんです」

 

※M.I.T.(エムアイティー)……髙島郁夫、稲本健一を監督、副監督とし、多くの企業トップをはじめ一般トライアスリートが集い切磋琢磨するトライアスロンチーム。アドバイザーは白戸太朗氏。

 

ロンドン・マラソン。シラトタロウ、稲本、髙島の邂逅

その後10数年間、髙島はトライアスロンとは疎遠になっていた。しかし、ひょんなことから、髙島の“アイアンマンへの道”が始まる。

ホノルルトライアスロン2009のフィニッシュ後。自身が監督を務めるM.I.T.の面々と。


「2006年に、ゼットンの稲本健一さんがロンドン・マラソンに出たというので、一緒に飲みに行って、話を聞いていたんですね。すると、そこに白戸太朗さん(ファウストA.G.の現スーパーバイザー)がやってきたんです。ロンドンで稲本さんが知り合ったらしくて。プロトライアスリートの白戸太朗さんや宮塚英也さんっていえば、僕がトライアスロンを始めたころのスーパーヒーローだから、僕は『うわっ、白戸太朗だよ』とか思ったんだけど(笑)、そのとき稲本さんは、トライアスロンなんてよく分かっていなかったわけ。

それで、僕が『マラソンやるくらいなら、トライアスロンのほうが楽しいよな』なんて白戸さんと話しながら、稲本さんに勧めたんです。そうしたら、彼がやる気になって。僕も『稲本さんがやるなら、もう一回やるか』と、再挑戦することになったわけです」

今も昔も同じトライアスロン。だが、再会した後の髙島は、まったく違う付き合い方をするようになった。

30代の時より、
50代の今のほうがタイムがいい!

「30代のときは、東京にトライアスロンをやっている仲間もいなくて孤独だったし、“もっと速くもっと速く”で、ただただ記録を狙うだけだったから、結構辛かった。だからやめちゃった(苦笑)。今みたいに楽しいって感じじゃなかったよね。実際、タイムも今のほうがいい。やっぱり、トライアスロンは大人のスポーツ。キモは自分のマネージメント。若いころは、ただ何も考えずガムシャラにやるだけで、自分と会話をしていなかった。でも今はすごく自分と対話しながらレースができている。これが30代のときとの一番の違いかな。自分の体調を客観的に見ることも含めて、レースマネージメントができるようになると楽しいんだよね。それは練習の段階から始まっていて、例えば、レースの1か月くらい前から練習をコントロールしつつ、ピークまで追い込まなきゃいけない一方で、体力もためないといけない。それに僕は年齢的にも回復が遅いから、トレーニング後は必ず体のメンテナンスをしないと続かない。そういうマネージメントを楽しめることが、トライアスロンの大きな魅力ですよ」

そんな髙島が、「すべてのマネージメントがうまくいった」と振り返るのが、昨年11月のロタ・ブルー・トライアスロン※である。

「実は昨年は、『ロタ・ブルー・トライアスロンに出るのは、これで最後にしよう』と思っていたから、島を楽しもうとか、景色を楽しもうとか、そういうマインドがベースにあった。だから途中、自転車のギアが入らなくなっても、ちょっと悔しかったけれど、それも思い出だからいいやと、全部プラスに考えられた。最後のランの5kmって一番きつそうに思われるけど、そこで気分が一番乗ったし、最後はあまりに気持ちよくて、ゴールを過ぎてもこのまま走っていきたいと思うくらい飛ばせたから、すごく満足できるレースでしたね。それは、レースの間中ずっと自分と対話していたからだと思います」

 

※ロタ・ブルー・トライアスロン……グアムとサイパンの間に位置するロタ島で毎年11月に行われるトライアスロン大会。南国の空と有視界50mの蒼く澄んだ海から「ロタ・ブルー」の名が付くほど美しい大会として知られ、近年はファウストなトライアスリートの間で人気が急上昇している。

 

今年、日本初開催のハーフ・アイアンマンへ

ホノルルトライアスロン2009のスイムスタート直前。髙島をはじめ、M.I.T.、アラパ、トライアスロンボーイズといったトライアスロンチームの面々が見える。

髙島が、「ロタをこれで最後にしようと思っていた」のには理由がある。髙島は、今年9月に愛知県で予定されている、アイアンマンのハーフレース「アイアンマン70.3 セントレア常滑ジャパン」※への出場を目指しているからだ。

「ロタは何というかな……野球で言うと、オールスターゲームみたいなお祭りなんですよ。海もきれいだから、泳いでいても気持ちがいい。でも、もういいかな。今は、次のステージに行かなきゃっていう気持ちがあるから。

ロタ島の海は有視界50mと言われる美しさ。

僕にとっての今年のメインレースは、アイアンマンの半分の70.3(マイル=113km)になりますね。ハーフと言っても、水泳は1.9km。ホノルルやロタのオリンピック・ディスタンスより400m長いだけだから、そこはそんなに心配していない。 水泳は昨年ちょっと開眼して、一段ステップアップしたしね。自転車の90kmも、今までに練習で100何十km乗ったことがあるから、大丈夫。問題は、その後のハーフマラソン。僕はランがあんまり好きじゃないから、強化しなきゃいけない」
「今トレーニングは、週2、3回泳いで、週末に自転車やランをやっています。もともと筋肉量はあるほうだけど、基礎的な体力がどんどん上がっているような気がしますね。一応、体組成体重計では体力年齢28歳だから(笑)。でも、日常のトレーニングにしても、レースの2カ月くらい前にならないと、気分が乗ってこないよね、やっぱり。だから次は、51.5(km)のオリンピック・ディスタンスだけど、3月にハワイ島のレースに出ようと思っています。その後は、5月のホノルル・トライアスロンに出て、いよいよ9月の70.3(マイル)ですね。でも、白戸さんが言うには、51.5(km)はどうしてもタイムを気にする分、精神的なしんどさがあるけれど、70.3(マイル)やアイアンマンになると、とりあえず止まらないで完走しようっていう気持ちになるから、逆にそれほど緊張感がないんだって。だから、タイムはどうなるかわからないけど、完走はできるでしょう。ハーフだと、6時間くらいか……お腹は空くだろうな(笑)」

当面の目標をハーフレースに定めた髙島。しかし、その先にあるのは、言うまでもなくアイアンマンレースである。

 

※アイアンマン70.3 セントレア常滑ジャパン……中部国際空港を舞台に開催される日本初のハーフ・アイアンマン大会。アイアンマンの半分の距離であるスイム1.9km、バイク90km、ラン21kmの計113km(70.3マイル)を競う。
詳細はコチラ
http://www.cjiac.co.jp/kouhou/contents/2009/20100120.pdf

 

アイアンマンに60歳で出場する!

ロタ・ブルーでのスイムからバイクへのトランジッション。
同じくランのエイドステーションで。地元の島民からドリンクを受け取る。

「(一昨年の)10月、白戸さんがアイアンマンに出るのをハワイに見に行ってね、そのときに感動したわけよ。華やかだし、町中が盛り上がっているし、やっぱりトライアスロンのF1ですよ、あれは。それで、スター選手が一気にゴールしちゃう一方で、ヘロヘロになってゴールしてくるおばあちゃんもいる。それは感動モノです。そこで『ユー・アー・アン・アイアンマン!』ってアナウンスがあって、アイアンマンの称号が与えられるんだから。コレは出なきゃダメだな!と(笑)。長いスパンで計画していけば、できるだろうなと思っています。だから、僕は60歳で出場っていうのを、ひとつの目標にしています。それにアイアンマンレースって、人生がある程度分かりきった年齢でやるのが一番いいじゃないかと思う。そういう年齢だと、つらさにも耐えられるんじゃないかな」

一度はつらくて止めてしまった競技のことを、髙島は実に楽しそうに語る。
なかでも興味深いのは、「トライアスロンを始めたばかりの30代でアイアンマンを見たとしても、同じことを感じなかっただろう」という言葉だ。実はこの言葉にこそ、トライアスロンという競技の魅力が凝縮されているのではないだろうか。

「実際、僕が30代でトライアスロンを一度止めたのは、仕事が忙しくなったのもあるけど、アイアンマンに出ようと思ったときに、これは無理だと思って挫折したからなんです。トライアスロンをやっている若い子が挫折するのは、一生懸命やりすぎて、結局燃え尽きて終わっちゃうからだと思うんですよね。『あんなに練習したのに記録伸びなかった。情けない』って。でも、僕らには50何年生きてきた自分の時間がありますからね。そんなの長い人生のなかのたった一コマじゃん。たまにそういうこともあるよ。また次にむかえばいいって思える。僕は50歳過ぎての再スタート(笑)。年齢に応じてスポーツの捉え方が変わってくるんだなって思います。僕にとってのトライアスロンって、レースだけじゃなくて、そこに出るためのトレーニングをすることで体力維持ができている部分も大きいんです。そういう意味では、ガチガチにやるよりも、これを長く続けることで、ライフスタイルに定着していけばいいかなって思っています」

髙島(左)、稲本(右)、そして白戸太朗(中央)。ロンドン・マラソンが3人をトライアスロンで結びつけた。 ホノルルトライアスロン2009のフィニッシュ後の1コマ。3人の愛車はアスロニアのオリジナルTTバイク「MOSA」だ。

Data

ロタ・ブルー・トライアスロン
http://www.kfctriathlon.jp/html/event_triathlon.html#2009_rota

アスロニア
http://www.athlonia.com

 

Profile

たかしま・ふみお

株式会社バルス代表取締役社長。1956年福井生まれ。関西大学経済学部卒。79年に福井の家具メーカー、マルイチセーリング株式会社に入社し、90年に新規事業の子会社としてバルスを立ち上げ。92年「Francfranc」1号店を天王洲アイルにオープン。96年マルイチセーリングからバルス株を買い取り独立。2000年7月ジャスダックに上場し、05年に東証二部、06年1月には一部上場を果たす。現在、「Francfranc」、「BALS TOKYO」、「J-PERIOD」、「About Girl」など、デザイン性豊かなインテリアショップ、ライフスタイルショップを国内外で147店舗を展開(2010年2月末現在)。今春、銀座、青山に「Francfranc」の大型店をオープン予定。また、上海への出店や秋には新ブランドの立ち上げも予定されている。

株式会社バルス
http://www.bals.co.jp/

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