ファウスト・アドベンチャラーズ・ギルド ようこそ。地球を遊ぶ、冒険家ギルドへ

07 ROAD

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Vol.5
ゴルフ仲間の一言から始まった、手痛い初挑戦

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 今年で35周年という記念すべきパ-ルオ-プンの予選会にエントリ-したのは、中学生からシニアまで、総勢96名。今年のカットラインは76。全体のわずか1/3しか生き残れない厳しい予選だが、晴天に恵まれた絶好のコンディションの中でスタ-トした。ファウスト・ゴルフチームの5年目の挑戦が始まったのである。

和田哲弥の初参戦

ファウスト・ゴルフチ-ムからは、今回、過去出場経験のある井上盛夫とゴルフ仲間であり、ゴルフへの愛では他のメンバーに引けを取らない和田哲弥が、初めてパ-ルオ-プンの予選に挑戦することになった。 和田がパ-ルオ-プンに参戦するきっかけになったのは、ゴルフのラウンド中に井上が発したこんな一言だった。
「パ-ル、一回出てみぃよ。日本でやるのと雰囲気違うから挑戦してみぃ」





井上の何気ない言葉だったが和田の心を刺激した。和田は、井上の決して諦めない、チャレンジ精神が大好きだったのだ。
「盛夫さんは、5年前に初めて挑戦して、毎年あかんかった。スコア悪いのに、なんで毎年やんのっていう人もいるけど、盛夫さんはどんなに結果が悪くても、次、頑張るぞって決して諦めない。その姿を見て、僕も頑張ってみようと思ったんです」
実は、和田にはもうひとつ理由があった。5年前、パ-ルカントリ-クラブに籍を置く、チームのテクニカルサポ-タ-のマ-ク川島に「パ-ルに出たいんですけど」と直訴したのは、そもそも和田が最初だった。だが、言い出した自分が今まで出場しなかったことに、少し負い目も感じていたのだ。
「盛夫さんたちと最初から出場することはできたんですけど、自分はまだまだやと思っていたんです。ツア-を回れない男子プロの小さな大会にアマチュアとして出ていたんですけど、まったく通用しない。こんな自分が出てもマ-クさんに迷惑がかかると思っていたんですよ」
だが、井上のファイティング・スピリットを見て、気持ちが掻き立てられた。和田は、ついに出場を決めたのである。

若く、ハイレベルな
パ-ティ-での闘い

2月5日、和田ら4人のパ-ティ-はアウトの1番ホ-ルからスタ-トした。だが、この最初のホ-ルで和田は、同行するメンバ-のレベルの高さに驚くことになる。
1番手の選手は、ウエア、道具にスポンサ-が付き、キャディも付いてた。17歳とまだ若いが風格が漂う。実際のショットも見事で、きれいな弾道を描き、フェアウェイを捉えた。2番目は、この予選会でトップ通過することになる高校1年生の原京祐。名前は日本人だがハワイで育ち、体格もしっかりしている。10歳の頃からデイビッド石井に師事し、彼もまた高校生とは思えない豪快なショットを見せた。3番手だった和田は、彼ら二人の素晴らしいショットを見て、クラブを持つ手が思わず震えたという。
「前の二人がものすごい球を打つし、しかも知人とか、いろんな人が僕の後で見ている。もう、これ以上感じたことがないぐらいド緊張していました」
しかし、「負けてたまるか」と気合いを入れて打った渾身の一打は320ヤ-ド、フェアウェイのど真ん中をキ-プした。4人の中では最も距離が伸び、しかもフェアウェイをキ-プしたことで自ら「早くも、今日イチ」と言えるショットでスタ-トすることが出来た。
セカンドは、1番手はバンカ-へ。原は見事にツ-オンを決めた。和田も「余裕でツ-オンやな」と思っていたが、グリ-ン脇のバンカ-へ。4番手の一打はグリ-ンに届かず、手前に落ちた。
「ここら辺は、まだまだ余裕がありました。バンカ-に入れてもスタ-トは、パ-で終われればOKやと思っていましたから」
だが、3人の底力を見せられたのは、ここからだった。1番ホ-ルは559ヤ-ド、パ-5。風はフォロ-が吹き、傾斜はないがマ-ク曰く「パ-でOK」というホ-ル。和田は狙い通りにパ-で終えたが、他の3人は揃ってバ-ディを決めたのである。
「もう、ビックリしましたね。いきなり3人ともバ-ディですよ。正直、なんじゃこれはって思いました」
和田は、わずか1ホ-ル目で、自分がただ成らぬグル-プの中にいることを痛感させられたのである。

ゴルフ愛の始まりは、日本一のトッププロへの弟子入りから

和田がゴルフに興味を持ち始めたのは、高校の時だった。だが、当時のゴルフは今よりもハ-ドルが高く、数々の条件をクリアできる恵まれた環境にいる子どもにしか出来ないスポ-ツだった。目的を失った和田は高校を退学し、土木関係の仕事に就き、夜は定時制の高校に通った。ある時、会社のゴルフコンペに参加すると、「やはりゴルフは楽しい」と、改めてゴルフの面白さに気が付いた。
そこでプロゴルファ-になろうと決心し、当時、日本一有名なプロゴルファ-に「弟子になりたい」と手紙を書いた。すると数日後、全国から数名の研修生を採用するので参加されたし、という旨の連絡が来た。



若干20歳だった和田は、プロゴルファ-の千葉県の自宅に行き、全国から集まった精鋭15人とともに面接を受けることになった。この時、和田はゴルフ経験はわずかに数回、スコアは130以上だったという。他は高校や大学のゴルフ部出身やアスリ-トのエリ-トばかりだった。
だが、そんな状況にもめげず、できるだけ目立つように頑張った。集団面接の際は、プロゴルファ-の真正面の椅子に座り、その人の目を見続けた。
「きみ、出身はどこだ?」
プロゴルファ-は、一人一人に視線を投げて、聞いた。
「僕は、ゴルフ留学でフィラデルフィアに行っていました」
「自分は甲子園でベスト4に入りました」
受験生たちが答えていくと、「おおぉ-」と部屋が騒めく。
「とこで、きみは?」
プロは、和田を指した。
「定時制高校に行っています」
和田の答えに、全員が爆笑した。
プロは、質問を変え、別の一人に問いかけた。
「きみのベストスコアは?」
「70です」
「-2か」という感嘆の声が上がった。
「ところで、きみのスコアは?」
プロは、また和田を指した。
「130ぐらいです」
先程よりも大きな笑いが起きた。
そのまま練習場に行き、それぞれ素振りをして見せた。全国から集まったエリ-トたちのスウィングは、まるで教科書のお手本のような美しさだった。だが、和田が素振りをすると、三度、大爆笑が起きた。和田は、ここでは完全に異端児だったのである。
最後に個人面接が行なわれた。和田の順番は、3番目だった。面接室に入り、プロゴルファ-の前に座ると、いきなり言われた。
「丁稚奉公のつもりで来るか」
「はい。よろしくお願いします」
和田は、深々と頭を下げた。
合格者は控え室に残り、落選者はそのまま部屋を出て行く。和田は、受験生の羨望の視線を背中に受けつつ、椅子に戻った。合格者3名の中に生き残ったのである。
「正直、すごく嬉しかったですね。高校もロクに卒業せず、大きなことばっかり考えて何の保証もない若者にもチャンスはあるんだよということを教えてくれた。もし、ここで僕を受け入れてくれなかったら、どうせ何やってもあかんねんなって思っていたと思う。そういう意味では、あの時、合格出来たということは、その後の自分の大きな自信になりましたね」
合格はしたが、初めて間近で見るプロの練習は、あまりにも苛酷だった。朝から練習が始まり、夜中まで球を打っている。本当にゴルフ漬けの毎日だった。ハ-ドな練習に身体が音を上げ、1週間ほどで椎間板ヘルニアが出て、階段も昇れないようになった。師匠に相談すると、「その腰じゃプロは無理だ」と言われ、泣く泣く、プロを断念した。

その後、24歳でクリ-ニングの仕事を始めたが、ゴルフはずっと好きだった。仕事も順調になり、40歳前辺りになってゴルフに行く回数も増え、今では年間70ラウンドをこなすほどになった。
「今、ゴルフ、最高に楽しいですね。僕、ゴルフ場行くのも好きですが、練習が大好きなんです。お酒も飲まないんで、時間があれば毎日、クラブを振りたいと思っていますし、練習場に行きます。それは、若かりし日に、こんだけ練習しないと日本の頂点に立てないんだというのを見たからやと思います」
和田の練習好きは、日本一だったトッププロの薫陶を受けたものだった。

パニックに陥った2番ホ-ル

アウトの2番ホ-ルは、410ヤ-ド、パ-4のコ-ス。1番ホ-ル、ひとりパ-で終わった和田の打順は4番目になった。それぞれがしっかりフェアウェイをキ-プしていく。4番目の和田は、2番ホ-ルも飛距離は一番だった。セカンドは先行する3人は、みなグリ-ンを捉えた。和田もツ-オンを狙うもグリ-ンを外してしまう。最初にアプロ-チを打とうとボ-ルに近付き、グリ-ンを見た瞬間、衝撃的な景色が目に飛び込んできた。
「僕以外の3人はツ-オンしていたんですけど、全員、グリ-ンの同じところにボ-ルがあるんですよ。ここにしか落としてはいけないところにしっかり落としているんです。これは、自分もしっかり寄せないと完全に置いていかれる。そう思ったら、ものすごいプレッシャ-が掛かったんです」
そのプレッシャ-が焦りを生み、冷静さを失わせてしまった。するとアプロ-チをミス。再度、気を取り直して打ったが、またもミスしてしまった。その瞬間、パニックになり、頭が真っ白になった。気が付けば、トリプルボギ-を叩いていた。そのショックから立直れず、4番、7番と難しいホ-ルで苦戦し、スコアは7オ-バ-になっていた。
「もう焦りまくりでしたね。彼らを見てると前日に僕らが練習で打っていた場所や狙うところと全然違うんですよ。そうか、このホ-ルはあっちを向いて打つのかっていうのがたくさんあって、正直、コ-スをあまりにも知らなさ過ぎましたね。しかも、テ-ショットはまずまずやったけど、セカンドでミスって……。やばい。このままだと最下位になるんじゃないか。マ-クさんに恥をかかせてしまう。そういうことばっかり考え始めると、今度は手が動かなくなってしまった。もう、完全に自滅でした」

ハ-フ終えて上がってくるとマ-クと目が合った。「マ-クさん、すいません、自分、ドベですわ」と頭を下げた。
と同時に、インで挽回してやろうと思った。 だが、イン最初の10番ホ-ルはマ-ク曰く「非常に難しい」というホ-ル。和田はセカンドが不安定のまま、いきなりダブルボギ-を叩いてしまった。
「このままやと100行くんちゃうかっていうぐらい最悪でしたし、ほんまに最下位やなって思ったけど、それだけは自分のプライドが許さなかった。いつもは楽しいゴルフが、この時だけはちょっと苦しくて、辛かった。でも、だんだん、もうスコアはいいわって思えるようになって、そこからは落ち着いてきたんですけど……」
しかし、スコアは上がらなかった。結局、和田はインを44で終え、18ホ-ル、一度も満足することはなく、ホ-ルアウトした。

惨敗の屈辱を晴らすために

和田は、ジュ-スを買って18番のグリ-ン脇に戻ってきた。ぼんやり眺めていると、悔しさを噛み締めつつもラウンドする苦しさから解放され、初めてパ-ルの景色を見れたような気がしたという。
「正直、前日までの(パールカントリーでの)練習では、もっといけるやろって思っていました。たぶん、78ぐらいでは回れるというイメ-ジは出来ていたんです。でも、2番の3オ-バ-で全てがふっ飛びましたね。それに、一緒に回った人たちのレベルが高過ぎて緊張し、メンタル的な弱さも出てしまった。大会を勝ちにいく人と予選突破が目標では、やっぱり全てが違うんですよ。いけると思った自分が甘かった。今回の敗因は何ですかと聞かれたらひとつじゃないですね。準備不足、経験不足、技術不足、全部足りていない結果、91というのがこの時の僕の実力です。でも、すごくいい勉強になりました。商売と一緒でゴルフもナメたらあかんということです」
この日はその後、和田はあまりの悔しさにゴルフでク-ルダウンをしようと思い、友人らと近くのゴルフ場でハ-フを回ってホテルに戻ったという。帰国後は、連日、練習場に行き、パ-ルオ-プンで苦しんだショ-トゲ-ムに磨きを掛けている。
「パ-ルオ-プンはパッと行って予選突破できるほど甘くない。直前の練習で75ぐらい出していないと突破できないレベルだと思います。そのためにはグリ-ンの形状や芝の目、ピンポジションがここなら絶対にここに落としてはいけないなど、コ-スを知り尽くしておく必要がある。そういうのを準備して、努力して、プレ-する。ほんま商売と同じなんですが、そこをしっかりしていかないと予選突破は到底ムリでしょう」
語る言葉に熱が帯びてきた。
どうやらパ-ルオ-プンの惨敗は、負けず嫌いの和田の気持ちに新たな火を付けてくれたようだ。
「来年は、予選を通ります。今に見とけよって感じです」

 

Profile

和田哲弥

わだてつや。1969年生まれ。中学まで野球少年だったが高校の時、ゴルフに目覚める。20歳の時、当時、日本のトッププロに弟子入り。しかし、厳しいトレ-ニングのため、ヘルニアを発症し、1週間でリタイヤする。その後、平成5年にクリ-ニング業を開業し、平成11年にウイズアップと社名変更。関東、関西でハウスクリ-ニング業を展開し、現在に至る。
ゴルフは、40歳手前から頻繁にラウンドするようになり、現在は年間約70ラウンドをこなすほど。朝はゴルフダイジェストニュ-スから始まり、寝る前にもゴルフダイジェストニュ-スを見る。練習大好き、できることなら毎日練習場に通いたいというほど無類のゴルフ好き。

 

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