最も冒険が似合うシャンパン
G.H.マムの絶えざる挑戦と魅力
ディディエ・マリオッティ G.H.マム セラー・マスター
最も冒険が似合うシャンパン
G.H.マムの絶えざる挑戦と魅力
ディディエ・マリオッティ G.H.マム セラー・マスター
「G.H.マム」といえば、フレッシュさと絶妙なバランスを感じさせる味わいで世界中にファンを持つシャンパン。シャンパンに特に詳しくなくとも、ラベルの左上から右下へ斜めの赤いリボンがデザインされた…といえば、ああ!と思い浮かぶ人も多いはず。F1レースの表彰式でのシャンパン・ファイトで開けられる勝利の美酒としても印象的だ。
冒険の成功を祝う美酒。
何やら、いくつになっても人生に冒険と挑戦を求めていく、われわれファウストの精神とも相性がよさそう――。そこで、今回G.H.マムのセラー・マスター(最高醸造責任者)ディディエ・マリオッティ氏の来日に合わせて、マムの魅力とその冒険と挑戦の哲学についてたずねた。
1904年、フランスのシャルコー氏が南極初上陸時に建国記念を祝い、開けたシャンパンが「マム」。
——G.H.マムといえば、F1へのスポンサードや、さまざまな冒険をサポートしているというイメージが浮かびます。
はい。マムと冒険とは昔から非常に深いつながりがあって、いろいろな冒険家、探検家の方とコラボレーションしています。たとえば、1904年にフランスの海洋学者で極地探検家のシャルコー氏が南極初上陸を達成したとき、フランスの建国記念日でもある7月14日に祝杯に開けたのがG.H.マムの「コルドン ルージュ」。写真を見ると遠くから見てもマムのボトルだとわかります(笑)。他にもF1はもちろん、国際的に評価の高いヨットレースの公式シャンパンを務めたり、マムは前人未到の領域に挑戦する人々を応援してきています。
――マムが冒険・挑戦を讃える理由は何でしょうか?
やはり、そうした素晴らしい冒険の成功を祝うには、華やかなシャンパンがなくてはならないからでしょう! 黄金色の中に立ち昇る細かな泡立ちがお祝いの気分にさせてくれるのではないかと思います、魔法にかかったように。一方で、たとえばF1にしても私は一つの冒険の形だと思っていますが、つまり冒険というのは、皆さんがより高く自分の力を越えることを目指していくことだと思います。マムの歴史もつねに最高峰を目指す挑戦であって、質に対する妥協というのは一切ありません。そんな哲学も相通じるところなのかもしれません。
——具体的なG.H.マムの、そしてマリオッティさんご自身の挑戦とはどのようなことになるのでしょうか?
マムの挑戦は、私が日々積み重ねている挑戦と重なるところがあるわけですが、素晴らしいワインを造るということ、そして高い質をコンスタントに出せるようにするということ。それが挑戦です。シャンパンは先ほども触れましたがその発泡性ゆえに、確かにお祝いごとにふさわしい飲み物ですが、同時に素晴らしいワインの一つでもあるということを、皆さんに理解していただきたいと思っています。そのためにシャンパンができ上がるたびに、こうして私が世界各地に旅行するわけです(笑)。
歴史にも少々触れましょう。マムは1827年創業の非常に長い歴史を持ったメゾンです。創業者の孫にあたるジョルジュ・エルマン・マムのイニシャルが、G.H.マムですが、彼には非常にシンプルなヴィジョンがありました。「オンリー・ザ・ベスト」。そのヴィジョンは今も変わりません。そして彼が造り上げたのが、「コルドン ルージュ」です。
——コルドン ルージュには何か謂れがあるそうですね?
“コルドン ルージュ”(赤いリボン)は、フランスの栄光を世界に広めた方々に与えられるフランス最高の勲章、レジオン・ドヌールをモチーフにしたものです。この勲章を受けた人がその印として身につけることが許されるのが赤いリボンをモチーフとしたピン。1875年にレジオン・ドヌールを受けたジョルジュ・エルマン・マムが、あるパーティで招待客に敬意を表するため、ボトルの1本1本に赤いリボンをまとわせたのがはじまりです。コルドン ルージュはフランスではとても大きなシンボルとなっています。
——今年はブドウの収穫時期が少し早くて大変だったと聞きました。毎年条件も違う中で、つねに最高を目指していくというのも大変かと思いますが。
収穫の準備期間が早まって、ちょうどバカンスシーズンにあたってしまったんです。なので、まずたくさんの人にバカンスをあきらめてもらわなければなりませんでした。シャンパーニュ地方ではブドウの収穫はすべて手摘みで行われますが、私たちには210haの自社畑があって、収穫のために約1000人の手が必要なのです。醸造については毎年それほど変わりませんが、収穫の違いが一番現れるのがブレンドをするとき。その年のブドウの性質や熟し方によって違ってきます。ブレンドの決まったレシピというのはありません。唯一のレシピはテイスティングすること。その年の収穫の性格をよく見極め、300以上のワインアイテムをテイスティングしますが、それぞれをどう使ったら最大限にマムを表現してくれるかを見極めます。
——そうやって目指されるマムのスタイルの特徴はどんなところですか?
マムの特徴としては、ブドウ品種のピノ・ノワールをたくさん使うことであり、考え方としては非常にフルーティな味わいを作ることです。そして、キュヴェの違いによって、フルーティさがどのような側面で見えてくるかが異なってきます。
たとえばコルドン ルージュは非常にフレッシュなフルーツ。ロゼなら赤いフルーツ、スペシャル・キュヴェの「ルネ・ラルー」なら熟した複雑なドライフルーツの印象です。後ほど4つのアイテムでテイスティングしてみましょう。ピノ・ノワールはワインに骨格を与え、複雑さを造り上げますが、難しいのは、フレッシュな部分とピノ・ノワールの重厚な部分、そのバランスをどうとるかということ。それと忘れてはならないのは、シャンパンはつねに熟成して変化していくということ。将来どんなふうに変化するかを想像しながらブレンドしていかなければなりません。
——うーん、お聞きしただけで大変そうですね?
シャンパンの仕事をはじめて15年になりますし、毎日テイスティングをしているので、私にとってはそれほど複雑な作業じゃありませんよ(笑)。どんな冒険でもそうかもしれませんが、毎日の積み重ねが大切で、いつもしていると当たり前のことのように思えてきますね。大変というより、より完璧なものを目指してそれを引き継いでいきたい。むしろそれが私を揺り動かす動機付けになってくれていますね。
——この仕事が好きでたまらないという感じですね(笑)
そうなんです。ワインを造るということがそもそも楽しみですし、この仕事が大好きなんです。それにワインは人と人をつなげる飲み物だと思っています。ワインを飲むということは分かち合うということでもある。友人やたくさんの人といると、なるべくよいボトルを開けて喜んでもらおうという気持ちになりますね。価格というよりも喜びにこそ価値がある。現代の社会の中で、そういう喜びをもたらす仕事ってなかなかないでしょう?
——フラッグシップのコルドン ルージュ、爽やかでピュアな「クラマン グラン クリュ」、ロゼ、そしてスペシャル・キュヴェの「ルネ・ラルー」。比べて飲んでみるとそれぞれの個性もわかり、違うのがまたとても楽しいですね。
そうなんです。同じアイテムを1~2杯飲むだけではなかなかわからないと思います。ですから、ときには違ったアイテムを同時に味わってみるのも興味深いものです。皆さんもぜひ、こうした違うタイプのシャンパンとともに、ガストロノミックな冒険に出発していただきたいと思います。誰でもできる個人的な冒険ですが、それが素晴らしい冒険であることはお約束します。
Didier Mariotti
ディディエ・マリオッティ
2006年からG.H.マムのセラー・マスター(最高醸造責任者)を務める。醸造から、ブレンド、カーブでの熟成期間まで、ワインのクオリティに関する最高責任者であり、いわばG.H.マムのコンダクター。
問い合わせ
ペルノ・リカール・ジャパン株式会社
http://www.pernod-ricard-japan.com/
Text:Ikeda Ichiro
Photos:Kiyoshi Tsuzuki
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